第17話 盗賊団のアジト

メロン、カリナとのパーティー生活が楽しすぎて、2日前に数人の盗賊を捕らえたことを忘れていた。


「ごめん2人とも。ちょっと森の中で3日くらい、本気のスキル訓練してくるから」

「はい。私達もこの3日間が目まぐるしかったので、1日くらい休んでから借りた武器を使いこなす訓練をします」

「ギルマスのペルタ様にもよ~く頼んでおくから、変な人についていっちゃダメよ」


「はい、過保護ですね。ギルドカードの残高も300万ゴールドとか大変なことになってますし、楽しませてもらいます」


◆◆

ギルドで聞いた、盗賊団のアジトがあると予測される方角に走った。移動スキルなしでも、レベル52の身体能力は並みじゃない。


「沼」スキルの新しい発見は、足元に「沼」を出したまんま、「沼の底」が出せること。どういうことかといえば・・


「沼の底と沼70センチ同時発動。んで、出てこい盗賊ナムイ」


ぽちょん。しゅるっ。どん!


「うあ・・、で、出られた、水くれ、頼む」

「ほら、やるよ」

「ありが、うん、う、動けねえ」


沼の底の真下に79センチ以下の小沼を出せば、簡単に沼の底から出した生き物を拘束できるのだ。


「ほれ水。まだ死ぬな」

「うあ・・」

「はああ~」


不思議空間で、まだ生きてた盗賊4人を出した。


「4人に聞くけど、ゴグツ盗賊団のアジトはどこ?」


「うひひ、ひゃひゃひゃ」

「わお、ワルナ君、ぶっ壊れたね」


ボグッ。ぽちょん。


用意してた鉄棒で腹を殴って沼にさよなら。


「ひええぇぇ。しゃべるから助けてくれ。もうあそこは嫌だあ。化け物がどっからか見てて、俺を食おうとしてるんだあ!」


で、一時間くらい歩き、森の中に巧妙に隠されたゴクツ盗賊団の砦に来た。


「高い塀で囲まれて、出入り口は狭いのが2ヵ所。塀の上に上がれるように櫓が組まれ、私の「沼」に向いてない戦闘フィールドだな」


出直そうかな・・


ぽちょん。

『帰るな』

「あ、沼様こんちわ」


『お、おう、こんちわ。沈まない沼に石乗せろ。持ってるだろ。工夫しろ。今日はもう無理。じゃな・・』


「要するに沼様が大好物の悪人がいるから、「沼」の栄養にしろと。やりますよ」


ブライト王国から持ち出したミスリル製インナーにプラスして、白銀の鎧とフルフェイス兜。ノリで魔法耐性が付いたマントを羽織って、遠距離攻撃対策バッチリの白銀騎士の出来上がりだ。


「今度、勇者メロンに着せたい。けど胸のブライト王国紋章が邪魔すぎ」


ぽちょん。ぽちょん。


79センチ小沼を2つ出し、前に沼に沈めておいた1メートルの石を沼の底から出した。


「おお、石でできたスモールボアだ。沼を移動させても、同じように動くね」


私の操作力も上がり、半径10メートルの中を本物のスモーボアみたいなスピードで動く。


オモロイから、正面突破だ。


「おい、白銀の騎士が近付いて来るぞ。一人だ」

「左右に何か丸い動物を連れてる。警戒だ」


「いっけぇ!石猪ちゃん」


ずざざざ!バキッ、バキッ。バキッ。ぎゃあっ。敵襲だ!


不思議な「沼」の吸引力が及ぶ範囲は、上に乗せたものが微動だにしない。

空間的に固定されるから、石猪君の下半分は鉄よりも強いのだ。


「破壊しまくれ石猪君達」


バキッ、バキッ、バキッ、バキキキキッ!


ゴッ、ゴッ、ゴッ!


「ぎゃあっ!」

「ぐべっ、ぐえっ」


矢が何本も飛んで来るけど、フルフェイス、防御付与の白銀騎士には、ノーダメージだ。


ぽっちょ~ん。プラスで2メートル「沼」で出して、どんどん盗賊も廃材も沈めていく。


「盗賊の剥ぎ取りはあとにして、とりあえず全員を確保しよう」


30分くらいで盗賊の住居まで破壊し、人でも物でも入るものはみんな沼に沈めた。外に歩いてる奴はいなくなった。


「沼は応用きくし、とんでもなく有能だね。残るは小屋が1つ。お宝部屋ならいいな」


む、人の気配。

「子供か・・。面倒だな。スルーしたいけど、気高き勇者メロンと勇者カリナの従者サーシャとしては、ナシかな・・。演技しよ」


ドアを開けると、糞生意気そうな13歳くらいの金髪縦巻きロールと、小さい子供が男女合わせて5人いた。


「あの・・」

「ワレはたまたまここに来た、ブライト王国の白銀騎士。お前は何者だ」


「いきなりですみません。私はハルピィンの領主の娘でございます。助けて下さい」

「ぬ?ワレにそんな義務はないであるぞ」

「ならば、せめてこの子達だけでも、何とかなりませんか」


ダメだ。見た目に反して、いい子だ。


「盗賊はみんな片付けた。勝手に帰れ」

「私達6人で魔獣の住む森を抜けるのは・・」


「とりあえず、ハルピィンの近くまで送るから、何も言わないでいいし、何も聞くでない」


小屋の奥にあった、お金が入った小袋をみんなと、置いてあった金目のものを根こそぎ頂いた。


子供の足に合わせるのは面倒なんで、メロンとカリナに何かあったときのために考えていた方法を実行。

収納指輪から縦長3メートルの一枚板を出し、上にクッションを置いて衝撃緩和。


ぴちょん。ぴちょん。ぴちょん。


板の下に60センチ小沼を3つ置いて滑るように発進した。

板の先にひもを付けてるから、引っ張ってるように見える。


「この上に乗れ。パンと水とウサギ肉はサービスである。2時間もあればハルピィンに着く」

「ありがとうございます。子供達も空腹だったもので助かります」

「出発する」


「今朝、こっそり家を抜け出したところを盗賊に捕まり、生きた心地がしませんでした」

「何も聞かぬのじゃ」


「名前はマリアンヌと申します」

「言わんでよろしい」

「キャラ作りに苦労してますね、サーシャ様」


「難しいんだよ・・・・はっ」

「ふふっ。申し訳ありません。絶対に黙っておきますから」


「言っちゃダメよ」

「助けられたお礼にもなりませんが、一言だけ。あなたは前の街から、貴族間でも噂になりはじめてます。お気をつけ下さい」


「承知してるよ。街が見えてきた。それに、どうやらあんたの探索隊みたいのもこっちに来てるから、撤退するよ。子供達は任せた」


「お礼がしたいのですが」

「貴族として会いに来るなら「殺す」の一択。ブライト王国産の殺人兵器に例外はないから、覚えといて」


「・・分かりました」


獲物の剥ぎ取りと、整理をするため、再び森に入った。




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