第16話 大きな勘違い

キンヌダンジョンは10階フロアボス部屋で敵がいきなり強くなった。


なのでメロンとカリナの安全を考えて、一旦帰ってきた。


「こんちは、マリアさん」

「あれ?サーシャ様、確か2泊でキンヌダンジョンの予定ではなかったでしょうか」


「うん、10階のボス部屋で相手が一気に強くなったから、準備し直して挑むことにしたんだよ」

「ダンジョンで安全マージンを考えて動くのは大事でございます。しかし、あのダンジョンは9階と10階の魔物に大きな差はないはずですが」


「ありましたよ。ボスのグレーグリズリーが赤くて3・5メートルくらいでした」

「赤い?」

「ガードのブラウンベアも灰色で3メートル。シルバーベアそっくりだったわ」

「灰色?」


ざわざわざわざわ。


「おいおい、またも変なざわめきが俺の部屋まで聞こえてきたぞ」

「ギルマス~。またサーシャ様が・・」

「あ、ペルタ様」


「お、またサーシャ達だな。今度は何があった?」

「キンヌの10階に赤いグレーグリズリーと灰色のブラウンベアが出たんだよ」

「なんだそりゃ。倒したんだよな」


「ペルタ様、私が赤いやつ、メロンとカリナが灰色のを単独でやっつけた。メロンとカリナは今回はサポートなしで、完全な1対1」


ざわざわ。メロンとカリナが単独でブラウンベア?

まじかよ。


「む~。良くわかんねえな。悪いが、その3体、ここで出せるか」

「OK。メロンとカリナもいい?」

「うん」

「はい」


どんどん、どんどん、、どどどどんっ。

ざわざわざわざわ。


「ま、まずメロン。こいつはおめえの完全単独討伐なんだな・・」

「はい、このサーシャに借りた武器で大きめのブラウンベアを何とか倒しました」


「次にカリナにも、同じ質問た」

「私もサーシャに借りた武器で水魔法が効いたので何とかなりました」


「・・メロン、カリナ」

「はい」

「なんでしょうか」

「おめえら、今から規定上限のツーランクアップ。EランクからCランクに昇格」

「「え?」」

「そんで、来月になったらBランク試験の許可を出す。気が向いたら受けろ」


「な、な、なに?」

「ギルマス?どうしたんですか」


「だってよう、この2体、どうみてもシルバーベアだろ。単独だと討伐推奨Aランクだぞ。推奨Dのブラウンベアと間違って倒せるもんじゃねえだろ」


ざわざわ。メロントカリナがシルバーベア単独?実質Aランクかよ。


「・・なんかみたことあると思いました」

「私達、何かやっちゃったんだ」


「うっふっふ」

「サーシャ、笑ってる場合じゃねえぞ。お前の「グレーグリズリー」も単独討伐だよな」

「うん、この熊は火を吹くのが面倒だったけど、スキルで簡単に倒せたよ」

「じゃあ、おめえはBランクな」

「試験は?」


「おめえが一人で倒したのは、Sランク昇格試験に使われるバーニングベアだ」

「へ~、強いの?」

「おっと、おめえもズレてんな。討伐推奨はパーティーならAランク、単独ならSだ」


ざわざわざわざわ。

ざわざわざわざわ。


「それに倒しかたは分かんねえけど、右顔面損傷と左足の骨折しかねえ。素材まるごと無傷のバーニングベアは貴重だ。オークションに掛ければ、5000万ゴールドは下らねえぞ」

「普通に売るのと、どっちがペルタ様にメリットがあるの?」


「ギルド間の評価とかあるから、こんだけのもんならオークションかな」

「ならオークションで」

「いいんか?」

「ペルタ様には恩があるし」


「けっ、気い使いやがって。まあ部屋に来い」



「質問がある。嫌なもんは拒否してくれ」

「了解。ペルタ様」

「ルークに頼まれたのは、まずレベル測定のことだ。分かるか?」

「ああ、スキルには出てないけど、ブライトから逃げてきて、レベルの上がり方かおかしいの」


「昨日はレベル49だったらしいな。ブライト王国から逃げたときは、40くらいか?」

「レベル4だったよ。ペルタ様」

「なっ。おめえがダツタンに現れたのが3ヶ月ちっと前だろ」


「うん、逃亡の10日間に何でもかんでも殺して一気に4から32」

「何だよ、その成長率・・。待てよ、鑑定水晶で今のレベル測らしてもらっていいか?メロンカリナもな」


「レベル52か・・バーニングベアとはいえ、おめえの成長率すげえな」

「もう50台に乗ったよね」

「ダツタン到着から今日までの3か月ちょいで32から52まできたんかよ。そりゃルークが心配するぜ」


「問題といえばなにかなあ」

「貴族をはじめとする権力者だな。おめえの美貌と強さなら、見えっ張りの貴族が護衛に連れて歩くにはもってこいだ」

「うん、取り込まれないようにするよ」


「ああ。次はスキルの話だな。広めたいそうだな」

「うん、抑止力としてね。ルークの手紙にあったでしょ」


「ねえよ。忠告だ。もし、どこかの街を訪れたとき、ギルドの人間がおめえが開示してる以外のことを言ったら敵と思え。スキルは冒険者の生命線だ。それは俺とルークの間でも勝手に洩らしちゃいけねえ」

「肝に銘じておくよ。私が公開したいのは、この「沼」。影縫いみたいな効果があるの」


ぴちょん。するする。


「ほう。相手を捕まえるまで動くのか?」

「飛ばない敵なら何とかなってるよ。バーニングベアでも止まったし」


「強力だな。そいで最後の話は注意喚起だな。新しい情報では、この辺でゴグツ盗賊団ってのが出没しててな。ダンジョンにも出てるから気をつけてくれ」

「見かけたら報告するね」


「そんで、急な話ではないが、ブライト王国の神器持ち召喚者の1人が、この国に潜入したらしい。若い男だ」


「うん、心に留めておくね」



「それにしても・・。レベル測定したあとから、メロンとカリナが固まってるな」



「メ、メロン。私達レベル26ですよ」

「「間違って」一人でシルバーベアを倒したからね・・」


「良く考えたら、この3日くらい常識から外れたことばかりしてますね」

「近いうちに人外の領域に足を踏み入れそうで怖い」




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