第15話 パーティー名

まだパーティーを組んで2日目なのに、ギルドでは有名になった。


「おはよう、昨日はごちそうさん。殺戮天使さん」

「殺戮天使の3人は、今日もダンジョン?」

「メロンちゃん、昨日はごちそうさま。美女3人の殺戮天使は絵になるわねぇ」


「さつりくてんし?」

「おはようございます、殺戮天使の皆さん。本日はどのような依頼を受けますか?」


「おはよう。ビッグボアの肉の依頼と、昨日の査定結果を」

「あのう、さっきから私達をみんな「殺戮天使」と呼ぶんですが・・」

「何が起こったのかな」


「え?夕べ併設の食堂で皆様にお酒を振る舞われましたよね。わたくしもご相伴に預かりました。ごちそうさまでした」

「あ、どういたしまして」

「そのとき、メロン様がパーティー名のお話をされておりました。すると、冒険者の方々が魔物の討伐数と見た目のギャップから「殺戮天使」と言い出しまして、お三方が賛同なさいましたね」

「あ」

「ノリで何か言ったかな」

「思い出した・・」


「はい、ご希望通りに昨日のうちに「殺戮天使」で登録させていただきました」


「そうだった、私達はパーティーを組む前とはいえ、3人でシルバーベア倒してるんだった」

「昨日はビッグボアなんかの50匹」

「みんなサーシャのお陰なんだけどね」


「「殺戮天使」は格好いいけど、「美女」ってイメージが恥ずかしい。メロンとカリナは本物の美女だからいいけど」

「サーシャの方が美人ですよ。もう定着してるし、変更は無理ですよね」

「早く、ダンジョンに逃げ込もうよ」


◆◆

今回は最大2泊3日で20階を目指す。最低でも10階までは行くつもりだ。


不思議空間ダンジョンには、転移装置がある。この洞窟型ダンジョンは10階ごとに1つ。一度行って魔力登録をすれば、その後はいつでも到達した階層まで行ける。


「ギルド情報によると6階と7階はビッグボア中心、8階からベアが出るそうです」

「なら10階のボス、グレーグリズリーまで行って、2人の体力と相談しよう」

「ありがとうねサーシャ」


「じゃあ5階までは小沼で私が掃除するから、一気に行くよ。疲れたら、必ず言ってね」

「おっけー」

「了解です」


急ぎ足ペースで5階まで行き、未知の6階に降りた。


「何人かサーシャのスキル見たくて付いて来たけど、3階から付いてこれなくなったよね」

「やっぱり大幅なレベルアップの効果はすごいです」

「だよね。2人ともまだ痩せてるのに、確実にスピードが上がってるよ」


「よし、十分に休ませてもらいました」

「じゃあ、6階から各個撃破で進もうか」

「サーシャに借りた装備のお陰で、ビッグボアでも勝てそうね」


「言ってたら2匹出ましたね、ビッグボア」

「メロンとカリナで1体ずつお願い」


「はい、ウオーターランス!」

「飛べ、ウインドスラッシュ」


ブシュッ!

ザン!


「げ、どっちも一撃だよ。2人ともやるね」


「違いますよサーシャ。なんですかこの杖の効果。魔力少々で圧縮された水の槍が飛んで行きましたよ」

「こっちも同じ感じ。私達がサーシャに借りたS級武器って、威力も消費魔力のコスパも普通じゃないよ」


「それならスキルレベルも上げられるね。拾ったこと思い出して良かったよ。あとこの指輪も付けて」


「こ、今度はなんですか」

「消費魔力半減の指輪」

「そ、それも拾ったのね」

「もちろん」

「借りた装備に、さらに400万ゴールドの価値が追加されました・・」


「ほら、スキルレベル上げるために、どんどん進むよ。素材はこの際、気にしないで行こう」


私は8階で他の冒険者と会ったとき以外は小沼を出しっぱなし。


「ごめん、小沼で熊止めて槍で刺す、の2段階だから私だけ少し遅いよ」

「なに言ってるんですか、私ごときがブラウンベアを瞬殺できるのはサーシャの装備のお陰ですよ」

「そうよ。むしろ、役に立てそうなのが嬉しいよ」


「あ、階段だ」

「10階は通路、ボス部屋、転移装置くらいだよね」

「まず転移装置に魔力だけ登録してボス部屋に行きましょう」


幸い10階に先着冒険者はおらず、ボス挑戦となった。


「ボスは誰が倒す?」

「それはもちろんサーシャだよ」

「当たり前ですよ。記念すべき初ボスはサーシャが殺ってください」


「サンキュー。じゃあ行こう」



ゴゴゴゴゴ。


熊が3体いて、真ん中がボスで左右に援護が1体ずつ。


「ギルドの注意書きでは、グレーグリズリーとブラウンベアとありました」

「けど真ん中が赤くて、左右が白っぽいよ」


「きっとボス部屋仕様だね」

「そっか、ボス部屋だと普通より高レベルの魔物がでることがあるらしいよ」

「暢気に話してる場合じゃないです。私が左、メロンは右で。散開!」


ぽちょん。

「小沼はいる?」


「ブラウンベアだから単独でやらせて下さい」

「私も。ウインドスラッシュ!」


ガアアア!


「2人とも装備のお陰でけがはないね。ああっ、もうメロン・・。大丈夫かな。危なくなったら助太刀するよ」


「ぐる、ぐあああ・・」

「はい、グレーグリズリーは大人しくして。ゴン、ゴンと」


この高レベルグレーグリズリーは火を吐いた。だから、79センチ小沼で転倒させて頭を殴り、新たに出した79センチ小沼で顔の左側を地面に接着させた。


あとは新たに買った4メートル魔鉄棒で頭を殴って弱らせている。


大事なのはメロンとカリナだ。


「止めです。ウオーターランス!」


ビシュ!ブシュッ!

「ナイスカリナ」


「残りは私だけだ。ウインドスラッシュ! 風耐性があるのね、効きが悪い。スラッシュ、スラッシュ、スラッシュ!」


ごああああ!


「隙あり!ウインディトルネードソード!」


ごあああああああ!


「やったメロン」

「メロン、格好いい」


「はあっ、はあっ、ありがとう。装備のお陰だけと、すごい達成感」


「けど、10階のボス部屋でいきなり相手のレベルが上がりましたね」

「技量不足も痛感したわ」


「う~ん。無理してもいいことないし、転移装置も使えるしさ、一旦帰ろうか」

「そうですね」

「武器ももっと使いこなせるように、一週間くらいメロンとカリナの訓練とかしようか」

「了解です」

「わかった」




「言われてみれば、訓練もせず、中級高位ダンジョンに来たんですよね、私達」

「だから、殺戮天使なんて、名前がつくのね・・」





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