第14話 レベル測定
ハルピインの街に帰ってギルドに行く前に、高級喫茶店に寄った。
「カ、カリナ、いつかは入りたいって話してた「ル・ジュテーム」に座ってるよ。私達」
「メロン、何もかもサーシャのお陰です」
「はは、私も初めてだ。2人とも、今日のお勧めケーキセットでいい?」
「もちろん」
高級な紅茶とケーキは抜群にうまかった。
◆
「私の「沼」スキルについてどう思う」
「すごく強力ですね。一度スキルでとらえたら、1トンくらいあるシルバーベアでも自由に動かせるんですよね」
「それに、幾つも出せるから、相手は避けられないし」
「そこで、お願いがあるんだ」
「はい」
「スキルの一部だけ、積極的に公開しようと思うから、それ以外は秘密にして欲しいんだ」
「全部を秘密にしないんですね」
「前の街で女1人で稼いでたら、絡まれて面倒なことになったんだ。だから、レベルとスキルの一部を公開して、抑止力にしよう思うん」
「どんな感じにでしょうか」
「まず、大きさは直径60センチ固定。出せる数は1個。射程距離は5メートル程度。誰かが踏んだら、その場に固定される」
「隠すのは、出せる数、上に乗った相手を自在に動かせること、射程距離ですね」
「それでも、すごく強力だよ。足止めしてもらって長槍で刺せば、私達でもビッグボアを討伐できたんだよ」
「あっ、でもなんで、そんな大事な奥の手を私達に見せてくれたんですか」
「そうだよね。こんなE級コンビなんかに」
「私、戦闘で人に助けられたの、昨日が初めてだったんだよ。格好良かったよ2人とも。それに、2人の装備を見てちょっと前の自分と重なったんだよね」
「ガクブルしてただけですよ・・」
「ちょっと前って、どのくらい?それにサーシャのレベルっていくつなの」
「ほんの3ヶ月前までは、パンも食べられない日もあったよ」
「え、最近だよね。本当なの?」
「そんときのレベルも4で、持ち物は薬草採取のスコップとナイフだけだった」
「私達と変わらなかったんですね・・」
「今のレベルは分からないけど、ダツタンを出るときは、45だったかな」
「何ですか、その急成長は」
「成長期かな、はは」
「とんでもない人にパーティー組んでもらったのかも・・」
「次は2人の強化についてだけど、2人はスキルとか魔法適正はあるの?」
「私は剣技レベル1と風魔法の適正」
「私は水魔法と治療魔法が両方レベル1ですね」
「2人とも素質あるんじゃない?」
「けど本人のレベルが5じゃ何にも使えないし・・」
「そうです。レベル30くらいにならないと、ウオータースラッシュを多用できる魔力量が確保出来ません」
「じゃあ、素材売却とレベル計りにギルド行こうよ」
◆
ギルドに到着すると、注目の的だった。
前の日に騒ぎ起こしたばっかりだしね。
「こんにちはサーシャ様。本日はどのようなご用でしょうか」
「3人でダンジョンに行ったから、獲物の売却とレベル鑑定をお願い」
ざわざわざわ。
「か、数はいかほどでしょうか」
「メロンとカリナが単独でビッグボアを3体ずつ倒してて、全部で50匹くらいあるよ」
「え、メロン様とカリナ様が単独でBランク推奨のビッグボア?」
「うん、私のスキルは敵の足を完全に止めるんだ。今日はサポートしたけど、2人もそのうち普通にビッグボアくらい倒せるようになると思うよ」
ざわざわ。ほんとかよ。メロンってレベル5くらいだよな。先週、そんなこと聞いた。
ざわざわざわ。
「ほほほ、では先にレベル測定をして、その後解体所で素材をお出しください。では鑑定水晶に手を置いて下さい」
「なら私からお願いします」
「カリナ様は4日前にも測定しましたよね。そのときはレベル5だった・・・・えええ?」
「いくつですか?」
「・・レベル23です」
「なんだそんなもんか。もっとやるべきだった」
「いえいえいえ、サーシャ。1年間でレベル5、そっから4日で23ですよ。私が一番驚いてます!」
「次、メロンね」
「メロン様も23です」
「うっそ」
「私もお願いね」
「サーシャ様はレベル49、でございます・・」
ざわざわざわ。
「50いかなかったか。じゃ解体所に行こうよ」
「はあ、このひとって」
「23、23って」
◆
ギルド併設の食堂で祝杯をした。
「おばちゃん、新生パーティーの初ダンジョン記念だから、ここにいる人たちにエールをふるまって。はいお金」
「金貨が30枚もあるよ。いいのかい」
「よろしく」
「みんな~。サーシャちゃん、メロンちゃん、カリナちゃんからの奢りだよ。30万ゴールド分のエールをふるまってくれるってさ!」
サンキュー。
昨日はごめんね~。
今度は俺たちがおごるよ。
ごちになりま~す。
「カンパーイ」
「さいっこう、カンパーイ」
「レベル23にかんぱ~い」
前の街で仲間が多い人は、人の輪を大切にしていた。
私は「沼」と「沼様」にトラブルを起こすように作り替えられているので、いつ旅に出るか分からない。
そのときにメロンとカリナが暮らしやすい環境を作る手助けがしたい。
「ふゆ~。サーシャのお陰で素敵な夜になりました」
「いい気分よね~。もうギルド食堂が閉まるのが残念よ」
「私もこんな経験ないから楽しい。あ、そうだ。2人が使えそうな武器が収納指輪にあったんだ。ブライトで拾ったから使って」
「わあ、ありがと~」
「サーシャ最高で~す」
「さ、今日から同じ宿だよ。一緒に帰ろう」
「ふあ~い」
「あしたもかんばそ~」
◆
次の朝、メロンとカリナは呆然としていた。
「ねえカリナ、サーシャに借りたその杖って・・」
「水属性のS級武器、ウィンディーネワンドではないでしょうか」
「私が持ってるのショートソードも、やっぱり・・」
「風属性のS級武器シルフィーソードに見えます」
「なんかサーシャ、拾ったって言ってたよね」
「私達がサーシャに借りてる装備、2人合わせて金貨1万枚、すなわち1億ゴールドくらいの価値があるかも・・」
「彼女、何者かしら」
「私達にとっては間違いなく神様ですね」
「だよね・・」
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