第11話サーシャの怒り

装備はボロボロでも、気高き2人を拾った。


「私の名前はサーシャ。冒険者になって3ヶ月でランクはC」


「助けてもらってありがとうごさいます。メロンです。私達のランクはEですが、3ヶ月でCってすごいですね」

「カリナです。お世話になりました。シルバーベアの単独討伐はAランク推奨です。サーシャさんの実力はCランクどころでない気がします」


「まあまあ、早めにギルド行こうよ。よかったら、ご飯付き合って」

「はい、何でも好きなものを食べて下さい」


2人ともガリガリでお金がないのは一目瞭然。それでも私に借りを返そうとしてる。


ダツタンでも他人に関心がなかった私だけど、なんか放っておけない。


2人は一年前に西の農村からハルピインに出てきた17歳。背丈は私と同じくらいだけど、以前の私と同じくらい痩せてる。


ただ、栄養が足りてないはずなのに、胸が2人ともでかい。それに美形なのがわかる。


「沼」に獲物を誘い込むためのエサとして美貌、胸部が強化された私以上に見えるのが、ちっと悔しい。


「あれがハルピインのギルドです」

「よし行こう」


入って中を見ると、ダツタンのギルドに戻ったかと思うくらい、造りが同じだ。


受付カウンターの前に並んで、順番が来た。


「このギルドは初めてなんだけど、買い取りを頼みたい」

「はい、この篭にお出しください」

「メロンとカリナの獲物を私が預かって、収納指輪に入れてる。大きいから、ここでは無理だよ」


「メロンさんとカリナさんの獲物?」

「うん、私がちっと手助けしたけどね」

「では、そちらの運搬機の方へ」

「ごめん受付嬢さん、あれでも無理」


「え?あの運搬機はフォレストボアが乗りますよ。それ以上の大物ですか。一体何を」

「いや、だからここで言わない方がいい」

「女性3人で仕留めた程度の獲物でしょう。何ですか?」


「3メートルのシルバーベア」



「うわっはっは」

「メロンたちと、お姉ちゃんの3人でシルバーベアかよ。いきなり現れてふかすなぁ」

「シルバーベアに殺されたならともかく、殺したとか。あっはっは」

「ギャハハハハ」

「いきなり滑ってるぜ」

「ひゃはははは」



ダツタンにも「龍の牙」のような奴らはいたけど、ここにもいた。


8人のグループだ。


何より勇者メロンと勇者カリナが悲しい顔をして縮こまっている。


ふ、ざ、け、る、な。


私の勇者を笑った奴の誰かを生け贄にしてやる。なんなら殺してやる。


「ねえ、そこの歯抜けのでくの坊」

「あん?俺のことか、ちっちゃい姉ちゃん」

「あんた以外に誰がいるの?」

「てめぇ、許さねえぞ」

「シルバーベアだよ。受け取って」

「え?うわあああ!」


「ヤン!」

「下敷きになったぞ、どかせ」

「この女、なんてことするんだ!」

「うわっ、熊がでかすぎて動かねえ!」


熊の下に70センチ小沼を設置して、3メートルの巨体を固定している。絶対に動かせない。


「情けないわね。メロンとカリナの2人でどかして」

「無理ですよ」

「男7人でびくともしないのに」

「大丈夫、熊の両手を持って、やってみて」


「は、はい」


2人は自分の胴より太い熊の腕をつかんで、仕方なく引っ張った。

私は2人が引き摺ってるように見えるよう、小沼でシルバーベアを移動させた。


「お?おおおお」

「あの巨体をメロンとカリナが動かしたぞ」

「男7人で無理だったのに・・」

「なんだ、あいつら強かったのか?」


「え?サーシャさん、簡単に動きましたよ」

「何が起こったんですか?」

「・・す、き、る、よ。あとで教えるから、今は話を合わせて」


熊の下から出てきたけど息絶え絶えのヤン君に、中級ポーションをかけてあげた。


再びカウンターに行くと、受付嬢さんに言った。

「あなたが私の話を信じず正当な対応をしないから、余計なトラブルが起きたわ」

「わたくしの対応も少しは問題があったとは思いますが、事を起こしたのはあなた自身では?」


ダメだ。


「はい、ギルドカード」

「サーシャさんですね。ダツタンギルドから来た・・。え!あ、あの・・あ、あ・・」

「報告は受けてるのね」



「おい女、決闘だ」

「ヤンさん、お止めになった方が」

「やられて黙ってられるか!」


「ねぇ、受付嬢さん。ギルドカードで私の履歴、分かるよね。主なやつをヤン君に分かるように読んであげて。それでも決闘したいなら、あの世に送ってあげるから」

「なに言ってやがる!」


「サ、サーシャさんの許可をいただいたので、かいつまんで申し上げます。討伐は冒険者登録をして3ヶ月でビッグボア46体、フォレストウルフ33体、ホフゴブリン2体、ハイオーク1体・・」

「え、ほんとかそれ?」


「さ、さらにシルバーベア2体、うち1体は単独討伐・・」

「え?」

「Cランク冒険者3名と武器等無制限の決闘の末、に、2名をギルド訓練場にて殺害・・」


「あ、残りの1人は行方不明だから」

「そ、そうなんですね、は、はい」


「じゃあヤン君の挑戦を受けようかな」

「あ、あんたなにもんだ・・」

「ダツタンで隠してなかったから、いずれ分かると思うけど、ブライト王国から逃げてきた殺人兵器」


「あ、あのそこまではギルドカードには記載されて、お、お、おりません」


「しまった、余計なこと言った」



受付嬢と囃し立てた奴らが私達に謝ったから、許した。


シルバーベアの査定を受付嬢に任せて、メロンとカリナと一緒にギルド併設の食堂に向かった。



だけど、ダツタンと同じく怒りに任せて目立ってしまった。さらに、観衆の前で人を殺めたこともメロンとカリナにばれた。




どうやら、この街でも、ソロという名のぼっちは確定のようである。



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