第33話 酔った、ぎぼぢ悪ぃ(´;ω;`)
この日は、冒険者ギルドに泊まるよう言われてしまった。
あ、そーだ。
「あのさ、ちょっと確認なんすけど」
憂鬱そうに、ギルドマスターは俺を見てきた。
「今、ギルド内って他に誰がいます?」
「なんだ、藪から棒に」
「俺と、ギルマス、あと酒場の店員と客。
それ以外に誰がいます??」
俺の質問に、ギルドマスターが疑問符を浮かべつつも答えてくれた。
「あとは、宿直の職員だな」
「受付の人?」
「いいや、他のやつだが」
「そっかー。
んー、まぁ、ちょうどいいか。
ギルマス、あのさちょっとお願いがあるんだけど、聞いてもらってもいいっすか?」
「内容による」
俺はお願いを口にした。
すると、ギルドマスターが目を瞬かせて、さらに首を傾げた。
「そんなものどうするんだ?」
「んー、ちょっと調べたいことがあるというか。
帰っていいなら、このお願いについては忘れてもらっても構わないんすけど」
わざわざ冒険者ギルドに連れてきて、急なことなのに寝泊まり用の部屋まで用意したのは、俺を帰さないためだろう。
また明日改めて事情を聞くとかするんだろうな。
俺の言葉に、ギルドマスターは渋い顔をした。
やっぱり、帰さないつもりだな。
まぁ、重要参考人になるもんな、俺。
「わかった、持ってくるから大人しくしてろ」
うっしゃ!
しばらく用意された部屋で待っていると、程なくしてギルドマスターが戻ってきた。
その手には、書類やらが入った大きな箱があった。
よし、少しは回復魔法で体力戻ってるから、なんとかなるな。
「何を調べるつもりなんだ?」
「二年前、本当は何が起きてたのか調べる。
それだけっすよ」
ギルドマスターが持ってきたものは、二年前、依頼先で凶暴化した魔物に遭遇した他のクランの記録だった。
「調べるって、これ全部か?!」
「まぁ、小一時間あれば余裕っすよ」
「余裕って」
「あ、もう大丈夫なんで。
ギルマスは出てってください」
俺は、ギルドマスターを部屋から追い出し、内側から鍵を掛けた。
集中したいからだ。
持ってきてもらった記録。
それを調べやすいようセッティングする
そして俺は、深呼吸して【身体強化】スキルを発動させた。
結果だけを言うなら、小一時間もいらなかった。
数分で済んだ。
***
ウィンによって、半ば強引に部屋から追い出されたギルドマスターは、酒場へと降りた。
そこでは、広場でのことが耳に入ったのか酔っ払いたちが好き勝手なことを言って騒いでいた。
そこに、息せき切って駆け込んできた者がいた。
エールだった。
エールは客席を見渡して、顔見知りを見つけるとウィンを見なかったか、と聞き回っていた。
客たちが、聞いた噂をそのままエールに教えている。
どうやらエールも広場での一戦は知っているようだった。
しかし、情報が錯綜していてウィンがどこに行ったかまるで分からないらしかった。
エールの顔が不安そうに揺らいでいた。
そこで、ギルドマスターと視線があった。
ギルドマスターがエールを手招きする。
「あ、あの、ウィンさんをみませんでしたか?
ビクターさんと、ラインハルトさんがうちに来て、広場でのこと教えてくれて、でも、ウィンさん帰ってこなくて。
いつもなら、ちゃんと帰ってくるんです。
ご飯までには、ちゃんと帰ってくるんです。
でも、今日、まだ帰ってきてなくて!!
ビクターさんと、ラインハルトさん達も探してるんですけど、見つからなくて」
「あー、なるほど。
ちょっとここだと騒がしいから、こっちで話そう」
ギルドマスターはぽりぽりと頬をかいて、ウィンの部屋へと続く廊下へとエールを促す。
その時だった、遅れてビクターとラインハルトもやってきた。
先程のエールと同じように、客席を確認する。
しかし、ウィンがいないとわかるやすぐに出ていこうとしたので、エールに二人を連れてくるよう頼んだ。
エールが慌てて二人を呼びに行った。
そして、連れてきた。
三人に、ウィンのことを説明した。
「よかった、生きてた」
「あ、やっぱり生きてましたか」
「つーか、二体目も倒したのかよ、本当に化け物だなアイツ」
反応はそんな感じで三者三葉だった。
順に、エール、ラインハルト、ビクターである。
「とにかく、無事なんですね。
怪我も何も無いんですね??」
エールがギルドマスターに念入りに確認する。
ギルドマスターが、それを宥めた。
彼女にとって、普通に出かけた者が帰らない人となったのは記憶に新しいのだ。
だから、必要以上に確認してしまうのは仕方の無いことだった。
「ピンピンしてる、だから安心しろ」
ギルドマスターがそう言った時、ウィンのいる部屋の扉、その鍵が開いた。
かと思うと、口元を押さえたウィンが出てきて、トイレに駆け込もうとして、間に合わず、盛大に吐いてしまった。
「ひんぎゃぁぁあ!!??」
その被害をモロに受けたのはビクターだった。
「酔った」
ウィンはそう呟いたかと思うと、また盛大にぶちまけてしまった。
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