第32話そして、またタイマンした話 後編
スキル【身体強化】を使用する。
一気に感覚が研ぎ澄まされる。
俺は、駆けた!
一気にディードとの間合いをつめる。
そして、ディードの首を落とそうと相棒を一閃させた。
しかし、避けられる。
一瞬遅れて、背後にまわられた。
そして、脳天に拳を叩きつけられる。
そのまま屋根にめり込んだ。
頭を掴まれ腹にも一発かまされる。
さらに、ぶん投げられた。
その先は、広場!!
露店が並ぶそこは、この時間には立ち飲み屋も多い。
そして休息日には、家族連れがピクニックに来ている場所でもあった。
普段ならそんな家族連れが敷物でも敷いて、お弁当を広げているだろう地面に、叩きつけられる。
立ち飲み屋の店員や、集まり始めてた客たちがザワザワしだす。
しかし、そんなことに構っていられなかった。
対策してきてるな。
俺はすぐに立ち上がる。
前を見る、すぐそこにディードの姿があった。
こんな街中で魔族の姿を見た。
それだけで大騒ぎになる。
「魔族!?」
「な、なんで、こんなところに!?!?」
「え、衛兵と冒険者呼んでこい!!」
ワーワー、キャーキャーと悲鳴を上げて、人々が大混乱で逃げ出していく。
その中にあって、俺たちだけは互いの動きを見ていた。
仕掛けるべきか、否か。
お互いにタイミングを読んでいたのだ。
仕掛けるタイミングは、同時だった。
同時に間合いを詰め、ディードは拳を放ってくる。
それをヒラリと避けて、胴体を横からぶった斬ろうとする。
服を一枚、少しだけ切っただけだった。
「お前は本気とやらをださないのかい?
ディードぉ??」
俺の言葉にディードはニヤリと笑う。
「いいだろう。
少しは保ってくれよ、
言って、なにやら呪文のようなものをディードは口の中でモゴモゴ唱えた。
すると、彼の両手と両足に青白い炎のようなものが宿る。
さらに、彼の目の前には握りこぶしほどの大きさの光の玉が現れる!
それも五つほどあった。
その光の玉をディードは殴りつけてきた。
あきらかにヤバそうなので、避けた。
すると、それは地面に触れると同時に弾けた。
そして、触れた地面を抉り、さらにその先にあった民家を吹き飛ばしてしまった。
「俺の体が目的じゃねーのかよ!!」
「身体強化を使っているなら、平気だろ!!」
平気なわけあるか!!
跡形もなく吹っ飛ぶわ、あんなん!!
「早めにケリつけるか。
そうじゃないと街が吹き飛ぶ」
俺は高く高く、なるべく高くジャンプする。
「血迷ったか!?」
そこに向かって、ディードが残り四発の光の玉を殴って撃ち込んでくる!
おそらく、ディードは空中では避けられないと判断したのだと思う。
仮に最初の一発を避けられたとしても、二発目以降で確実に当たると思ったに違いない。
まぁ、普通ならそうだろう。
だが生憎、俺もだが、相棒も普通じゃないのだ。
「頼むぜ、相棒!」
俺は、相棒を襲ってくる光の玉四つ全てに向かって閃かせた。
その四つ全てが俺とすれ違い様に、斬れる。
一瞬遅れて、それらは空で大爆発を起こした。
その爆風に押し出されて、俺はディードとの距離を一気につめる。
ディードの反応が、驚きで遅れたようだ。
まさか避けることをせずに、あの光の玉を真正面から斬るなんて芸当をする人間がいるとは考え無かったのだろう。
その遅れを、隙を、俺は見逃さなかった。
俺は、ヴァルデアの時と同様、ディードの首を切り落とした。
そして、このタイマンは終わったのだった。
「あー、疲れた」
俺は、そのままそこに腰を下ろした。
相棒を鞘に納める。
そういや、先代たちはどこいった??
気配を探ってみるが、わからない。
近くにはいないようだ。
と、そこに通報を受けた衛兵やら冒険者達がわらわらと集まってきた。
そんで、大騒ぎになった。
建物壊したからなぁ。
いや、壊したの殆どディードだし、俺のせいじゃないよな。
ぐったりしてる所に衛兵が来て、さらに顔見知りの冒険者までやってくる。
「またお前かよ!!」
なんて言われてしまった。
そこからは、すぐ近くにあった衛兵の詰所に連れていかれた。
街のあちこちに詰所が設置されているのだ。
回復術士を呼んでもらい、回復魔法をかけてもらう。
それから事情聴取がはじまった。
ディードの首級は、衛兵達が回収したらしい。
鑑定に回されるとかなんとか。
事情聴取されつつ、そんな説明も受けた。
ちなみに、どこまで本当のことを話していいのかわからなかったので、
『先日ヴァルデアを倒した件の仇討ちだった』
と説明しておいた。
ヴァルデアの件に関しては、衛兵たちもよく知っていたからか納得してもらえた。
そして、事情聴取が終わる頃、よく利用している冒険者ギルドのギルドマスターが血相を変えてやってきた。
衛兵と冒険者、それぞれから連絡が行ったらしい。
どうやら、今度はギルドマスターにも事情を説明しなくてはいけないようだ。
馬車に乗せられ、冒険者ギルドに向かう。
馬車の中で、
「疲れたから帰って寝たい」
とか言ったら、頭を引っぱたかれた。
「まさか、二体目を倒すとはな」
「喧嘩を売られたから買っただけッスよ」
それから冒険者ギルドで、今度は本当は何があったのかを話した。
それを聞いて、ギルドマスターは胃が痛そうな顔をした。
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