第3話
いや、Nに見えたのかもしれない。
2人組の女性は微笑みながら私に一礼し、歩いていった。スマホを受け取ってからずっと強く握りしめ、早足でその場を去った。
N本人だったのだろうか?似てる顔だったのか?少し疲れていたからNに見えたのか?どれにしてもスマホの中にあるNのデート写真を見られたのではないかと恐怖で手汗が止まらなくなった。
家に帰ってすぐ荷物をその場で下ろしスマホを開こうとした。手汗でパスワード入力やスクロールがうまくいかない。なんとかスマホのロックを解除し、写真フォルダを開いた。2年前のあの写真を探そうとしたが、思った以上に早く見つけた。
Nの写真を撮って日以来、仕事が忙しかったということもあったが、遊びや旅行は行かず会社と家の行き来しかしてなかった。何も思い出の写真がなく、かろうじて近所にいた猫や綺麗な花の写真を5〜6枚撮って、最新の写真からNが見えないようにしていた。
Nが消えた間、私も空白の1年を過ごしていた。
SNSを開き、Nの名前を検索した。街中でNを目撃したのは私だけではないはずだ。
『俺のバ先の居酒屋にN来てたらしい。Nファンじゃないけど、生きているって知って何故かホッとした…』
『○○駅でNが私の目の前歩いていたぁ❗️最近テレビに出てないけど、今も超スタイル抜群だしマジで可愛かった💕』
『いとこがNに声かけたら、笑顔で手を振ってくれた上にサインもらったらしい❗️悪いことをしたんじゃないし早くテレビに復帰してほしい‼️』
Nの目撃証言は1年経っても呟かれており、今でもNは世間から支持されていたという事実にホッとした。スクロールしながら少し油断していた私はあるツイートを見て、指が止まった。
『あのNの写真を撮った記者マジで一生許さない。人生壊して何が楽しいんだ。』
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