第2話


 Nがテレビから消えて1年が経った。


 最近ではNのことを口にする人が少なくなった。一部のファンは「Nが復帰することを信じてる」「あの記事はデタラメだ」と希望を持ちながらSNSを投稿し続けているが、アンチがすぐに噛み付いてもはや修羅場のようになっている。

 この1年で新たなアイドルグループが続々と誕生し、Nがイメージモデルしてた企業も何事もなかったかのように新生アイドルを起用していた。


 とある休日。私は買い物をし行った帰り、商店街の通り歩いていた。田舎から上京してから3年近く経ったが、都会の商店街通りや人の多さは未だに慣れない、むしろ苦手だ。ぼんやりしながら歩いていた時、

 「すいません、スマホ落としましたよ!」

 後ろから声をかけられた。振り向いたら2人組の女性がいて、そのうちの1人が近づいて私のスマホを渡してきた。私はスマホを落としたことに全く気づかなかった。

「あっ、ありがとうございます。」

 と言いながら何度も頭下げた。スマホを渡してきた女性だけでなく、少し離れているところにいるもう1人の女性にもお礼をしようと目を向けた瞬間、一瞬息が止まった。


 Nだった。 

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