N

@suginumax

第1話

とある夏の昼下がり。突然、ある雑誌記事に一つの衝撃が起きた。



『激写!!人気アイドルN、ラブホ街で男と腕組みデートか!?』



 雑誌記者になって2年目の私は、世間を騒がせたこの特集について、街中の人の意見を記事にするため、インタビューしに駅周辺を歩いていた。


 街中の人は、「まぁ、恋愛は個人の自由だし…」と擁護した声もあれば、「こんな奴、即引退だろ、早く消えてほしいっす」とNのファンだったであろう人が吐き捨てるように言う声と様々だった。


 Nは、子役の頃から活躍しており、アイドルになってから好感度ランキングは常に上位。毎日CMやレギュラー番組、音楽番組に出演していたNだったが、記事に抜かれた日からパタリとあらゆる媒体から姿を消した。それほど、彼女の存在はアイドル界だけでなく芸能界でとても大きかったのだ。


 インタビューし終わり、会社に戻る途中、私はスマホを開く。

「あれ、なんでスマホ開いたんだっけ…」

 恐らく少し前までNのガチ恋勢のファンであろう男の人からNに対する罵詈雑言を浴びて、聞いてるこっちが参ってしまい急に疲れがやってきたからだろう。多分何か調べたくて開いたのだろうと考え、いろんなアプリを開いてみた。

 写真フォルダを開くと、最新の写真が大きく映り、思わず目を背けてしまった。

今現在、雑誌やテレビで使いまわされているNのデート写真を鮮明に映し出していたからだ。


 私は、Nが記事になる3日前、仕事帰りに偶然Nが男の人と歩いているところを目撃し、自分のスマホでNを撮った。


この写真1枚で、Nの人生だけでなく、芸能界、そして日本を狂わせたのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る