見えてない縁

 同級生の8割に彼女がいるという事実を目の当たりにして凹んでいる。残りの男子二割はクラスでも風采の上がらない数名だけだ。ものすごく太っていたり、小学生みたいな顔をしていたり、着てる物が子供じみていて異様だったりする人たち、その中に俺がいる。


 何が悪いのかわからない。同級生のイケてるやつらはやすやすと相方を見つけているのにそれができない。見えるものが違うのだろうか。話し方が違うのだろうか。


「あのう、今日もいい天気ですね」

「なにさ、急に」

「いや別に、なんでもないです」


という風に女生徒への声掛けはあっという間に相手の不機嫌さを買ってしまって、投棄されたごみのように消えてしまった。同級生はというと、来週の休日のデートの約束を取り付けていた。


「あーあ、彼女ができないかなぁ」

「そんなこと考えているうちは無理だね。男を磨いて注目されるようになれよ」

ふん、延岡だって彼女がいないくせに偉そうに。同じ穴の狢の癖によく言うよ。

「あ、言っておくけどお前と同類だなんて思うなよ。俺は昔付き合っていた子がいるんだからな」

こいつの自慢話は聞き飽きた。小学生時代に起きた、たった一度の奇跡にすがりついて今でもそれを拠り所にしてるような奴なんだから。


 モテている同級生に教えを乞おうとは何度も考えた。考えたどころかズバリ聞いてみた。その返事はいつも「自然にしてればいいんだよ」という答えにならない解答ばかりだった。


 モテている同級生たちは、どんどん大人の道を進んでいく。俺は小学生時代からそっち方面は取り残されてばっかりだ。このまま彼女いない歴=年齢のうだつの上がらない大人になってしまうんだろうか。


 ちなみに女生徒で彼氏がいなさそうな人は一人だけいるが、俗にいう腐女子でBLの薄い本を学校にもってきてはうすら笑いを浮かべてそれを熟読している、相方に迎えるのは問題がありそうな女生徒だった。


「有村さんならお前にお似合いかもな」

延岡は本当に人の神経を逆なでするのが上手い。有村というのは件の薄い本の彼女だ。当然ご免こうむりたい。相手は普通の人がいい。

「ちょっと、笠原君いいかな」

「おっと笠原、彼女からご指名だぞ」

なんと噂をすれば有村さんが俺に声をかけてきた。まさかデートのお誘いじゃないよな。冗談じゃない。

「今度の日曜日暇かな」

「えええ、そうですけど何ですか」

「おっこれはいい流れになってきました」

やばい。なんてこったい。とんでもないことが起こりつつある。調子に乗る延岡は手拍子まで始めた。なんとかしてくれ神様。

「今度のコミシティー行けなくてさ。お礼は弾むからE-あ28に並んでくれない」

そんなことか。やっぱりそんな事だろうと思った。俺に春は来ない。危機は回避したが少し残念だった。

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変ではない話 楽人べりー @amakobunshow328

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