第107話 タワーゲーム決着
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
だが、すべては、八騎士のNo2であるグリの奸計であることが判明した。
バイオと魔星のふじ、kurokirbyにたまごろう、和田美咲が合流。さらに死んだと思われていたvahohoの加勢により、グリを追い詰めたかと思われた。
しかし、一瞬の隙をつき、グリがコントロールポータルに向かうのであった。
通路の手前の床を右足で蹴り、空中歩行の末、通路の5mの位置に左足を着地させたグリは、下方に大きくたわむ通路にあわせるように左膝を曲げエネルギーをため込む。
通路が上に跳ね上がるタイミングに合わせて、左足を大きく蹴りこむと、2つの力が相まって最初のジャンプよりより高く、より遠くにグリの身体を運んだ。
右足をさらに深く通路に沈みこませた3度目の飛翔では、床とコントロールポータルとの中間地点に到達しようとしていた。
4度目の着地は、通路が下に限界までたわみ、沈みきろうとする瞬間であった。
たわみ沈もうとする通路に、グリは左足で全力で上方から蹴りこみ、さらなる大きなたわみを与えた。
”バキッ!!”
柔構造のたわみ限界を超えた通路が、蹴りこんだ位置で折れた。
折れた瞬間の、通路からの反発を利用し、前方にステップを切ったグリは、大きく揺れる通路を、今度はたわみを生じさせないように、小刻みにステップを切りながらコントロールポータルまで進む。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16818023214194022583
コントロールポータルを右方向に回り込み、交差するもう一つの通路に移動、折れた通路の手摺を掴んで引き込み、時計方向に回転させることで、折れた通路からコントロールポータルに辿り着けないようにした。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16818023214194064530
そして、通路をさらに奥に移動しスキャナを操作。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16818023214194101153
グリを睨みながら、スキャナを確認した美咲が叫ぶ。
「あいつ、コントロールポータルをまた青でキャプチャして、辺りを沈めてるぞ!」
「しかも、ご丁寧にイージス※1とアンチウィルス※2をセットしてやがる!
反転※3はできねえ!」
しろの肩を借りて続けるkurokirbyの言葉に、美咲が吠える。
「上等だよ!
何度でも、私が焼いてやるよ!」
もう一つの通路に駆け出そうとする美咲の右手を掴んで制止し、vahohoが叫んだ。
「駄目だ!
イージスの入ったコントロールポータルを焼くには、安全帯のロープを外して近づく必要がある。
廃人重ね撃ちが使えるお前でもだ。
ロープ無しで焼いている間に、やつに2,000m下に落とされるぞ!」
vahohoとたまごろうに交互に視線を送り、美咲が、
「それなら、前衛にたまごろう、後衛が私のツーマンセルで行ったらどうだ。
たまごろうが鞭であいつが、近づけないようにしている間に、私が焼いたらいいじゃねえか!」
「それは無理。
元々、通路は2本で均衡を取るような設計になっていた。
1本が折れ、残り1本で支えている今の状態では、恐らく3人以上が乗ると折れる。
月の者は、それも計算にいれて、あの位置で待機している」
たまごろうが、コントロールポータルの遠方で構えるグリを見ながら応えた。
「じゃあ、このままチェックポイントまで、何も出来ねえのかよ!
八騎士に全部持ってかれるのかよ!」
美咲の怒鳴り声に被せる叫びが、ふじから発せられた。
「やー(お前)、何をしているさー!
やーが行って、どうするつもりさー!
バイオ!」
全員の目が、安全帯のロープを外しながら通路に走るバイオに集中した。
通路に到達したバイオは、グリのやり方を真似て、たわみを生じさせない小刻みなステップでコントロールポータルに向かった。
「バイオ!戻れ!」
確かに、グリはやーを殺せんかもしれん!
だが、レジスタンスのやーが行っても、なんも出来ないさー!」
コントロールポータルに到達したバイオは、一瞬ふじ達を振り返った後、グリの待つ奥へ歩みを進めた。
突風吹き荒れる細い通路で対峙した2人は、ゆっくりと距離を詰める。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16818023214194156420
間合いが2mとなったとき、バイオが一気に距離を詰めグリの懐に飛び込み右手でグリの安全帯の上手を、左手で下手を掴む。
対するグリも、バイオの上手を右手で、下手を左手で掴み、両者左合四つの体勢となった。
激しく揉み合う2人の圧力に手摺がひしゃげる。
バイオは、ひしゃげた手摺にグリの体を押し付け、自分の体重を浴びせ掛ける。
「バイオのやつ、自分の体もろともグリを通路から落とすつもりだ!
グリがいなくった後、コントロールポータルを焼くようにこっちを見たんだ!」
kurokirbyが痛々しいものを見る目で呟く。
「あいつ、最初からそのつもりで。。
くそっ!」
通路の手前まで、走り出すふじ。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16818023214194187488
背中に手摺を食い込ませ、大きく反り返るグリは、左足を軸に身体を反転させ、2人分の回転の勢いをつけた右上手投げで、バイオをコントロールポータルに叩きつけた。
チェックポイントまで20秒。
スキャナを取り出し、勝利を確認するグリの顔色が変わった。
「イージスが壊されている。
それに、レゾも残り3個で、CFが消えそうだ。
誰が、やったんだ?」
スキャナを手に、美咲が叫んだ。
リチャージしながら、周りを見渡すグリが、コントロールポータル手前で蹲るバイオの動きに気付いた。
砕かれ痛む顎で、切れ切れの声を発した。
「バ、イ、、オ、、な、、に、、を、、」
「さっきあんたに操られ、別のクローンのスキャナを渡された時だ。
あの時、思ったんだ。
あんたは、こいつも持って来ているんじゃないかとな」
振り返ったバイオが操作するスキャナを見たグリは、内ポケットを探り、あるべきものが無くなっていることに気付く。
あるべきもの、、上手投げで投げられながら、バイオが内ポケットからすり取ったスキャナが。
「そう、北野坂の教会であんたにすり替えられた、俺自身のエンライテンドとしてのこのスキャナをな」
チェックポイントを迎えたのは、バイオの廃人撃ちにより、コントロールポータルが白化した瞬間であった。
空気が揺れるような振動が走った時、誰かの叫びがバイオの耳に飛び込む。
「バイオ!走れ!」
反射的に、床に向かって地を蹴るバイオ。
次の瞬間、Crystal Towerが一気に沈み込み、床に連結された通路がその動きについていけず、大きくたわみ折れた。
その勢いで、バイオの身体は上空に投げ出される。
バイオの身体が、回転しながら上昇する。
上昇から下降に転じるタイミングで、回転が止まった。
安全帯が後方から掴まれ、回転が止まったのだ。
振り返り、安全帯を掴む男にバイオが言った。
「さっきの声もあんたか。
声と同時に、あんたもこっちに走っていたのか。ふじ」
「ギリギリのところだが、何とか、届いたようさー。
おいらのロープで、2人分支えられるか分からんがな」
右上方から、接近してくるグリを視界に捉えたふじが叫んだ。
「あいつ、こっちに向ってきやがるさー」
頭を下げ鳥のように両手を広げ、滑空しバイオとふじに接近するグリ。
身体を捻り、グリの接近を妨げようとするふじ。
1mの距離に接近したグリに対して、バイオが手を伸ばした。
怪訝な表情のふじ、そしてグリ。
バイオの手とグリの手が触れそうになった瞬間、3人は積乱雲に飲み込まれる。
不規則な方向に吹き荒れる突風に吹き飛ばされ、グリは彼方に消えていった。
そして、バイオとふじも突風に、凧のように翻弄される。
「この風圧、ロープがいつ切れるか分からんさー。
切れたら、グリと同じ運命さー。
おいらのロープを引き寄せるさー。
その先に、Crystal Towerがある。
そこまで、ロープを伝うさー!」
突風に翻弄されながら、バイオはふじの安全帯のロープを引き寄せる。
破れた手の皮から流れる血と積乱雲に吹き荒れる雨で滑るロープを、交互に一掴みずつ手繰り寄せる。
※1.イージス:オニキスシールドを除くと、最強の強度(レゾネーターのダメージ軽減度)とはがれにくさ(シールド自体の破壊確率の低さ)を併せ持つシールドであるイージスシールドの略称。
※2.アンチウィルス:後述するウィルスを無効化するMOD。
※3.反転:レゾネーターを破壊することなくポータルの色を反転するウイルスという武器が存在する。
ウイルスには2種類ある。レジスタンスのポータルをエンライテンドのポータルに反転するジャービスウイルスとエンライテンドのポータルをレジスタンスのポータルに反転するエイダリファクターである。
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【後書き】
次回完結です
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