第104話 石にかじりついてでも
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
最上階で、八騎士のNo2であるグリの画策により、コントロールポータルにオニキスシールドがセットされ、遂に世界は八騎士に沈められた。
グリの奸計に窮地に陥る魔星勢の前にたまごろうが現れる。
そして、たまごろうと共闘する和田美咲がコントロールポータルを中立化すべく廃人重ね撃ちを乱射する中、グリが謎の言葉をバイオに投げかけるのであった。
グリの言葉に、バイオの身体が硬直。
「バイオ!ミーの後ろに来て、コントロールポータルをディフェンスしろ!」
硬直した身体が機械仕掛けのように瞬時に、風のような動きでグリの真後ろに移動し、スキャナを取り出す。
「なんだと!
バイオに対するマインドコントロールは今も有効なのか!」
上半身で這いながらスキャナを注視するkurokirbyの叫びに、たまごろうがグリから視線を外すことなく質問する。
「何が起きているの?」
「グリの後ろに移動した男バイオ。奴は過去に、八騎士にオモチャのように精神を弄られている。
その影響は今も残っていて、奴は今コントロールポータルに対するリチャ※1をやっているんだ。
コントロールポータルのレゾへダメージを与える速度が、先刻までの半分になっている!」
グリの後方で、高速でスキャナを操るバイオに視線を送り、たまごろうが呟く。
「そう、彼が、あの時の”日”の者のクローンか」
たまごろうと対峙し、視線で牽制しながらグリがバイオに指示を出す。
「あのガールが二台のスキャナを使うなら、ユーも二台だ!
こいつを使え。ユーとは別の閣下のクローンのものだ。DNAが同じユーには使える」
スーツの内ポケットから取り出したスキャナを受け取ったバイオは、神速とも言える両腕の動きで2台のスキャナを操った。
「レゾへのダメージが止まった!
バイオのリチャで、攻撃が相殺されている!」
kurokirbyが叫ぶ。
しろと床の上で縺れ合うふじは、一瞬の判断ミスも許されない相手の力量に、断片的に耳から入る情報を確認することが出来ないでいた。
43m先のコントロールポータルでは、攻撃者たる和田美咲もリチャに気付いていた。
首を右に捻り、霧の中に薄く霞む六人のエージェントを視認する。
「スキャナを操作しているのは1人。 ん。。
あいつ、二台のスキャナを操作してる。あいつも複あか使いか。
どおりで、強力なリチャだと思ったよ。
今のところ、私の攻撃はあいつのリチャに相殺されている。
このままじゃ焼けない。
だけど。。」
美咲は、深呼吸し両眼を見開き、両手の指の操作速度を上げる。
「絶対に諦めない。
石にかじりついてでも破壊する」
極限の集中力に達した美咲の身体から立ち昇る水蒸気は、氷点下の空間を捻じ曲げる。
這いながらスキャナを凝視するkurokirbyがたまごろうに聞こえるように声を絞りだした。
「均衡が破れた。少しだが、攻撃がリチャを上回っている。
だが、このペースだと。。」
コントロールポータルの美咲に眼をやり言葉を続ける。
「破壊する前に、バースターが切れる※2。。」
後方に移動しようとするたまごろうの行動を阻止するが如く、グリの左手が動き、進行方向に閃光が走り、急停止を余儀なくされた。
「Kukuku.行かさんよ、こちらも。
ガールにバースター入りのカプセル※3を渡すようなまねはさせん!」
グリの左手に構えられた3枚の500円硬貨と隙の無い佇まいに脂汗を流すたまごろう。
『動けない。
このままでは。。
美咲。。。』
ゾーンに到達した美咲は念じ続ける。
「バースターが切れたなら、ハック※4してでも破壊する。
石にかじりついてでも破壊する。
どんなことがあっても破壊する」
その想いとは裏腹に、レゾへのダメージは1ずつしか与えることが出来なかった。
※1.リチャ:レゾネーターのダメージを回復することでポータルの破壊を防ぐ防御方法であるリチャージの略称。
尚、レゾネーターとは、ポータルをキャプチャする際に、セットするアイテムで略称はレゾ。8本セットすることが可能。レゾネーターがすべて破壊されるとポータルは中立化される。
※2.バースターが切れる:イングレスにおいて、一人のエージェントが保持できるアイテム数には上限がある。
上限数2,000を超えるアイテムを持つことが出来ないため、エージェントは必要なアイテムを上限数の範囲内で計算して持つ必要がある。
※3.カプセル:複数のアイテムを格納する事が出来るアイテム。一つのカプセルに100個のアイテムを格納可能。
エージェント間でアイテムを授受する際は、カプセルを使用する。
※4.ハック:ポータルからアイテムを取得することが出来るアクション。
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