第89話 Fire!オニキスストライク
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
行方不明となった百八の魔星の頭領ドージェの捜索中、グリはCrystal Tower に隠されたレアアイテム”オニキスシールド”取得を提案、そこにふじが合流。
”オニキスシールド”を取得するためには、コントロールポータルを青化する必要があり、そのためには”オニキスストライク”が必要。
最上階で、バイオ、グリ、魔星のふじ、kurokirbyがオニキスストライク取得を目指す。
高度2,000mに渡される不安定な細い通路に鎮座するコントロールポータルから、バイオはどうにか”オニキスストライク”を取得するのであった。
「撃つぜ」
取得したオニキスストライクのFire(発射)ボタンに指を伸ばしたバイオが、宣言した瞬間、グリの制止の叫びが響き渡る。
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330652464393052
「ウエイト!
オニキスストライクも100%オニキスシールドを破壊できるわけではない。
コンディションを整える必要がある。」
バイオはFire|(発射)ボタンから指を離し、グリに問いかける。
「コンディションだと?
何をすれば?」
「ノーマルのストライクと同じように、ポータルの直上※1を取ってFire|(発射)するんだ。
AND
溜め※2は+20%をサクセスする必要がある。」
「なるほど。
通常のシールドはがしと同じというわけか。」
グリの説明に、スキャナをポケットに仕舞ったバイオが、通路をコントロールポータルに向かって慎重に歩みを進める。
既に、通路を20m進み、一歩ごとに生じる細い通路の撓みは、戻りで体を弾き飛ばす程大きく、膝のクッションでどうにか均衡を保っていた。
文字通り、薄氷を踏む思いで、一歩一歩進むバイオが、コントロールポータルの手前10mの地点で立ち止まり、後方を振り返り、叫んだ。
「安全帯の命綱がこれ以上延びねえから、進めねえ。
どうすればいいんだ。」
※挿絵
https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330652464411399
左後方から、kurokirbyの声が響く。
「何者も。そう、俺たち百八の魔星もコントロールポータルに近づくことは許されねえ。
だから、安全帯のロープの長さもコントロールポータルには届かない長さにしてあるんだ。
どうしても近づく必要があるときは、、」
「あるときは?」
鸚鵡返しのバイオの問いかけに、kurokirbyは冷徹に答えた。
「安全帯を外すしかねえ。」
「ば、馬鹿な。。
ここを、命綱無しで進むだと。。」
体感気温は氷点下の中、脂汗を流すバイオが消え入りそうな声で呟く。
呆然と立ち尽くすバイオは、不意に右肩に置かれた手に気付き振り返ると、いつの間に近づいたのか真後ろまで接近したふじの顔が見えた。
「なんくるないさー。
おいらが、やーを支えるさー。」
ふじのいつもと変わらぬ声に、折れそうになっていたバイオの心に火が灯った気がした。
そして、あるかなしかの笑みを浮かべるふじの顔を見ていると、不思議と恐怖心が薄らいでくるのを感じる。
バイオは、頷き、安全帯に接続されているフックを外す。
自らの安全帯のフックを外したふじは、バイオの安全帯を掴み、ゆっくりと囁く。
「おいらの握力は120キロあるさー。
やーは、落ちることを心配せず、前に進むことだけを考えるさー。」
肩の力が抜けたバイオは、ふじと歩調を合わせて、慎重に、だが安定した足取りで歩みを進めた。
そして、コントロールポータルに辿り着く。
コントロールポータルを左手で抱え、スキャナーを取り出したバイオは、オニキスストライクを溜め撃ちで発射した。
だが、顔を曇られたバイオが、全員に聞こえる声量で叫ぶ。
「ダメだ!
すまねえ。ミスった。溜め撃ちが+19%になっちまった。」
左後方から、kurokirbyの叫びが、
「俺のオニキスストライクをドロップする。
そいつを使え。」
kurokirbyのオニキスストライクを拾ったバイオ。
先刻の失敗の光景がフラッシュバックし、Fire(発射)ボタンに指を置く寸前に戻すという往復を繰り返す。
「Hey.バイオ!
ホワットイフ、失敗してももう一度ハックしてゲットすればいいだけだ。
So硬くなるな!」
グリの言葉に背中を押されたバイオは、Fire(発射)ボタンを長押し、溜め+20%を確認、オニキスストライク炸裂。
次の瞬間、コントロールポータルから漆黒の盾オニキスシールドが消失した。
※1.ポータルの直上:イングレスの武器であるバースター、ストライクは、対象に近づくほど威力が高くなる。
特にストライクはポータルの直上(距離0の位置)で発射することで、シールドの破壊率が最大となる。
※2.溜め:イングレスの武器であるバースター、ストライクは、Fire(発射)ボタンを長押しすることで、威力を高めることができる。
最大+20%威力を高めることが出来るが、タイミングを外すと+0%となる。
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