第73話 小部屋にて
【これまでのあらすじ】
濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。
目的であるチームBIOのサブリーダー ハートオブクイーンとの再会を果たすが、バイオの知るハートオブクイーンとは別人であった。
混乱するバイオに対し、クイーンは自分に勝てば、チームBIOのリーダーとバイオと同じ名を持つスペードオブエースと会わせると言い放つ。
バイオはグリと共に、クイーンと不二|(ふじ)との2対2のクラスター戦に臨み、勝利こそ得られなかったものの引き分けに持ち込み、エージェントとしての実力を認めさせることに成功する。
頭領との面会をセッティングしようとするクイーンは、頭領が行方不明であることに気付く。
バイオとグリは、頭領探索の協力を申し出る。
左右にオレンジ色の灯りが埋め込まれた、緩くカーブする通路を歩く2人の男。
淀みなく歩みを進めるグリの後を歩くバイオが周囲を見回しながら話しかける。
「不思議だ。
初めて来たところなのに、なぜか見覚えがある。デジャヴューってやつか。
ところで、グリさん。あんたの歩き方には迷いが無いが、頭領の居所のあてがあるのか」
素早く周囲に視線を走らせたグリは、通路の左手の小部屋に足を踏み入れ、バイオに顎をしゃくった。
小部屋でバイオと向かい合ったグリが、静かに話し出す。
「リッスン マイシンキング。シンプルに言おう。
ハートオブクイーンがユーの知る人間と異なるリーズンははっきりとは分からない。
バット、どちらにしろゼイがライを言っているのは明白だとミーは思う」
バイオは首を左右にふり、
「それをはっきりさせるためにも、チームBIOのリーダー クラブオブキングとかつての俺と同じ名を持つスペードオブエースに会う必要があるんだ」
グリは、バイオの瞳を覗き込み、
「2人にミートして、別人だった場合、それでジエンド。何もはっきりはしないんじゃあないのか?
それに仮に、本人だった場合、理由を付けてユーとのミートを避けるんじゃあないのか」
グリの言葉に、バイオは俯きながら応えた。
「そうかもしれねえ。だが、可能性がある限りはそれに懸けてみたいんだ」
「ユーの気持ちは分かる。
バットこれ以上、ゼイのペースで動くのはデインジャラスだ。
ゼイはトラスト出来ん。
ここで、トラスト出来るのはユーだけだ。
頭領が居なくなったリーズンもゼイの内紛の可能性がある。
そんなことにミーたちが巻き込まれるリーズンは無い。
それより、ここの頂上のポータルでレアアイテムが手に入るという。
ミーたちの手でゲットしようじゃあないか」
「レアアイテムだと。
kurokirbyやクイーンも言っていたが、そんなものが本当に存在するのか?」
「Ah.ここの頂上のポータルのMOD※1を見たか?」
グリの言葉に、バイオは首を振りながら、スキャナーを確認する。
「なんだ。
オニキスシールドにアンチウィルス?
見たことのないMODばかりだ」
グリは頷き、
「それこそが、ヒアにエージェントを惹きつける原因であり、ヒアが永遠のP8と呼ばれる所以だ。
オニキスシールドは、既存のあらゆるウエポンからの攻撃を無効化し、アンチウィルスは、ウイルスによる反転を無効化する。
つまり、ザッツをゲット出来れば永遠のCFが作れる。
本物のチームBIOへの意趣返しもポッシブルだ。
いやあ、ゲットした後、高値で売ってもいい。バイヤーはそれこそ世界中にいる。
値段は、ブルースカイだ」
想像を絶する話に、バイオは混乱しつつも、疑問を呈する。
「しかし、どうやって手に入れる。
デプロイされているMODを引き剥がす訳でもあるまい」
グリは、大きく頷き、
「YES。それこそが、最もインポータントだ。
かつて、ここに引き寄せられた無数のエージェント達もゲット出来なかった。
それは、ゼイがタイムとメソッドを知らなかったからだ。
バイオ、覚えているか。2階でリュウクエをクリアした後1階にリンクを張ったのを。
あれこそが、オニキスシールドをゲットするためのメソッドの一つだ」
その時であった。
小部屋の入口に唐突に現れた長身の影が、囁くように2人に話しかけた。
「へ、面白そうな話をしているさー。
おいらにも、聞かせてほしいさー」
驚きに表情を硬直させたバイオが、平たい声で尋ねる。
「ふじ、いつから聞いていた。。」
※1.MOD:ポータルを強化するアイテム。防御力をあげる「シールド」、リンク距離を延ばす「リンクアンプ」等がある。
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