第71話 クラスター戦決着、そして、

【これまでのあらすじ】

 濡れ衣を着せられチームBIOを追放されたレジスタンスエージェント バイオは、真実を探すため、グリと共に、Crystal Tower を登る。

 目的であるチームBIOのサブリーダー ハートオブクイーンとの再会を果たすが、バイオの知るハートオブクイーンとは別人であった。

 混乱するバイオに対し、クイーンは自分に勝てば、チームBIOのリーダーとバイオと同じ名を持つスペードオブエースと会わせると言い放つ。

 バイオはグリと共に、クイーンと不二(ふじ)との2対2のクラスター戦に臨み、序盤の不利を覆し互角の展開に持ち込むのであった。



【クラスター戦のルール】

 ・部屋にある9つのブロンズ像ポータルの1つが戦闘開始10分前に”オーナメントポータル”として点灯する

 ・戦闘時間は10分間

 ・10分間のどこかの瞬間に計測時刻が設定される。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648979759038


 ・計測時刻に次の行為が成されていたらポイントが入る。

 1.計測時刻に”オーナメントポータル”をキャプチャしていた陣営に1点が入る

 2.計測時刻に”オーナメントポータル”を使ったリンクを引いた陣営に1点が入る

  ただし、リンク本数に関わらず得点は1点のみ

 3.計測時刻に”オーナメントポータル”を沈めるCFを作った陣営に2点が入る

 ・戦闘終了後、獲得ポイントが多い陣営が勝利


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648979797192


 グリが守る”女神テミス像”、バイオが守る”ポセイドン像”、そして無人の”接吻像”の3点が形作るCFは、オーナメントポータル”ヴィーナス像”を完璧な形で沈めている。

 このまま、戦闘時間10分をキープされれば、バイオ、グリ陣営に2点が記録されることとなる。


「ふじ!無人の”接吻像”を焼いて※1、このCFを壊すんだ」


「だめさー。あったー(彼ら)はそれを待ち構えているさー。

 2人の内、1人がこの持ち場を離れたら、あったーはビーナスとロダンを取りに来るさー。

 接吻を破壊して戻ってくるまでの間、1人では持ちこたえられないさー」


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330649826905226


「くっ、確かにね。

 他の手は。。」


 表面上激しているが、内面では氷のように冷静に戦局を見極めるクイーンに対して、ふじが呟く。


「いっそのこと、2人で最短距離にあるバイオのポセイドンを焼きに行くか。。

 いや、それでも、あったーがビーナスとロダンを奪取するまでに戻ることは出来ないさー」


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330649826955184


「くそっ!

 すべて計算ずくってやつかい」

 クイーンは、忌々し気に首を振りながらバイオとグリを睨みつけ、吐き捨てた。


 ふじも、悔し気にバイオを見つめ、

「やられたさー」

 言いながらも、目を細め心の中で呟く。

『見事さ―』


 双方動きが無いまま、戦闘終了時刻を迎え、4人のスキャナーにクラスター戦の結果が発表される。


【クラスター戦結果】

 ドロー


 ・エンライテンド陣営:2点

  オーナメントキャプチャ 1点

  オーナメントリンク   1点

  合計          2点


 ・レジスタンス陣営:2点

  オーナメントCF     2点

  合計          2点



 結果を確認しながら、4人はオーナメントポータル”ビーナス像”の元に集まった。


 合図があったわけでない。だが、自然の流れのようにバイオとふじ、グリとクイーンが同時に握手を交わす。


「結果としてあんたらを打ち負かすことは出来なかったが、試験は合格かい?」


「お釣りが来るくらいさー」


「全くだ。驚いたよ。

 あの状態から追いつかれたのは初めてさ」


「オナーだよ。

 ユーたちもストロングだった」


 そして、グリとふじが握手を交わす隣で、クイーンはバイオと握手を交わし、


「あんたを嘘つき呼ばわりしたことは謝るよ。

 あんたは、本物のエージェントだった。

 つまらない嘘をつく男でないことは分かった。


 だが、私も嘘を言っていたわけじゃない。それは信じてくれるかい」


「ああ。

 この戦いを通し、あんたの誉(ほまれ)を理解した。

 あんたは、嘘をついちゃあいない。


 ということは」


 バイオは、ふじを横目に見つめ、

「ふじが言っていたように、何かしらのボタンの掛け違いがあったということだろう。

 掛け違いを正すために、チームBIOのチームリーダー クラブオブキング、そして、かつての俺と同じ名前を持つ スペードオブエース。

 この2人に合わせてもらえるかい、クイーン」


 クイーンは承諾の笑みを浮かべ、頷く。

「約束は守るよ。

 ただし、さっきも言ったが、頭領と会った後だ。

 今から、あんたたちは、頭領と面談してもらう。

 いいね」


 頷くバイオとグリを見ながら、クイーンはスキャナーを操作する。

 だが、首をひねりながら、ふじを見つめ、

「おかしい、頭領の天魁星からの返信がない」


「まさかやー。

 頭領は、メッセージを受けると即返信してくるタイプさー」

 言いながら、ふじもスキャナーを操作する。


「確かに、反応が無いさー。

 魔星全員に頭領の居所を確認するさー」


 スキャナーを見つめる、ふじとクイーンは同時に叫ぶ。

「なんだって、この1時間、頭領と誰も連絡が取れていないだって!」

 クイーンと顔を見合わせたふじは、

「こんなことは今まで一度も無かったさー。

 緊急事態さー。

 全員で頭領を、探すさー」


「ああ、全員に指示メッセージを出しておいた。

 私も、部隊と合流して探索に入るよ。」


 ふじは頷きながら、バイオとグリに

「そういうわけさー。

 すまないが、頭領との面談は彼を見つけてからになったさー。

 少し待ってほしいさー」


「ウエイト!

 エマージェンシーなんだろう。

 ミーたちも手伝う。」


「そうだ、ただ待っているだけなんてのは性に合わねえ。

 頭領の特徴を教えてくれ。

 俺たちも頭領を探す」


 バイオとグリの異口同音の申し出に、ふじは頷き、


「頭領である天魁星のドージェは会えば、見間違えようが無いさー。

 常に鉄の仮面を被っているのが彼さー」




 ※1.焼く:ポータルを破壊し中立化すること。

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