第54話 美咲、全力疾走

【これまでのあらすじ】

 鉄壁の男vahohoとともに、海底トンネルを通ってCrystal Tower地下ドックに到着した和田美咲。

 直通エレベーターで到達した部屋では、8つのポータルを巡り武装ドローンがイングレスをプレイしていた。

 次のフロアへの直通エレベーターに通じる扉を開くためには、1つのポータルのみキャプチャ※1、他7つのポータルを中立化※2した状態にする必要がある。



 美咲は、vahohoが守る”北西の扉”から最も遠方にある青の”南東の扉”に向かう。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648677856809


 ”南東の扉”に向かう緑のドローンもいたが、美咲が先に到着することに気付いたのか青の”北東の扉”に方向転換した。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648677939535


 ”南東の扉”を破壊しキャプチャした美咲は、隣の青の”東の扉”向かい、破壊・キャプチャした。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648677977059


 ”東の扉”に掛かっている間に、青のドローンに”南東の扉”を再奪取されていることに気付き、再度、”南東の扉”に向かい攻撃。

 が、先刻ここをとったドローンがこちらに向かっている。


「これじゃ、イタチごっこだな。

 あ、そうか、緑のドローンはおっさんが守る”北西の扉”に集まってるんだった。

 てことは、動いている緑はわたし一人ってことだ。


 それに対して、青ドローンは3台だから、普通にやってたらいつまでたっても、全部白くなんて出来ないんだ。

 じゃ。どうする」


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648678012572


 美咲は、走りプレイしながら、脳細胞をフル回転させた。

「ポータル間の距離がこの程度なら、中間地点で廃人重ね撃ちすれば2ポータル同時焼きができるはず。


 それと、おっさんが言ってた、あいつらの行動の優先順位は、

 1.敵色ポータルを攻撃

 2.敵色ポータルなく、白ポータルあれば、キャプチャ

 3.自色ポータルあれば、アップグレード、シールドいれ、ハック、リンク


 てことは、キャプチャしちゃうとあいつらをそれを攻撃しに来るから、結果として青になるポータルが分散しちゃって全部白にするのが難しくなるんだ。

 てことは、焼いた後キャプチャしなければ。。」


 自分の中の考えを実行すべく、”南東の扉”を中立化(青を攻撃して白くした)後、キャプチャ(白を緑に)せず青の”南の扉”と”南西の扉”の中間地点に走りながら廃人重ね撃ちを発射。

 目論見通り、”南の扉”のポータルが焼き切れたのち10m走る間に、”南西の扉”も中立化された。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648678042060


 残る緑ポータルである”東の扉”と”北東の扉”に青ドローンが向かう。

「いいぞ。

 あいつらが、あの二つを青にした後に、同時に焼き切ればおっさんの守る所以外全部白に出来る!」

 青ドローンの2台が”北東の扉”に向かい、1台が”東の扉”に到着し攻撃開始。

 美咲は、”東の扉”と”北東の扉”の中間地点に全力疾走。

 ”東の扉”を青でキャプチャした1台が、”北東の扉”に合流しようと移動。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648678070872


 青の3台が、”北東の扉”に到着し、瞬時に中立化・キャプチャ・アップグレードし、それぞれが白ポータルに散って行く。

「一番近い”北の扉”がキャプチャされる前に、”北東の扉”と”東の扉”を焼かないと!」

 走る足を緩めず、”北東の扉”と”東の扉”の中間地点で廃人重ね撃ち!


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648678096241


 ”北東の扉”と”東の扉”が同時に中立化された直後1秒に満たない後に、”北の扉”が青でキャプチャされた。

 だが、1秒に満たないとはいえ、条件を満たしたと判定され”北西の扉”が開いた。


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817330648678119833


「開いたぞ。

 閉まる前に乗り込むんだ!」

 vahohoの叫び声に、最後の全力疾走でエレベーターに向かう美咲。


 美咲が乗り込み、暫くした後、扉が閉まりエレベーターが動き出した。


 全力疾走で走り回った美咲は、息が切れてしゃがみ込んで蹲っている。

 切れ切れの呼吸で、

「これ、はーはー。。」

「キツイんですけど。。」


「あれだけ、走ればな。

 だが、見事だった。


 それと、今のでバースターも※3減っただろうから、これを渡しておく」

 vahohoは、しゃがみ込む美咲にスキャナー※4を2台手渡す。


「これは?

 スキャナーなんてもらってどうすんだよ」

 怪訝な表情で、受けとったうち1台を操作する。


「え、ログインできた!

 どうなってんの。

 私のDNA認証でログインできるスキャナーが2台ある?

 あ、もしかして」


 もう1台でもログインを試すと、

「こっちも出来た。

 3台のスキャナーを使える。。

 なんで?」


 混乱する美咲に、vahohoがつっけんどんに応える。

「教授の店で、注射を打ったろう。

 実はあの注射には、2人分のDNAを詰め込んだADAM細胞※5が入っていたのさ。

 これで、お前も3人分のアカウントを持てるようになった」


 唖然とする美咲

「じゃ、じゃあ、私もこれで、はれて複あか使い。。

 冗談じゃねえよ。。」


 思いがけない優しい声で、vahohoが労う。

「大義のためだ」



 ※1.キャプチャ:中立化された白色のポータルをデプロイすることでポータルを所有すること。


 ※2.中立化:ポータルの状態には、エンライテンドキャプチャ(緑色)、レジスタンスキャプチャ(青色)、中立化(白色)の3種類ある。

 ポータルをキャプチャするには、攻撃して中立化する必要がある。


 ※3.バースター:イングレスにおける攻撃用アイテム。イングレスにおいて、一人のエージェントが保持できる総アイテム数上限は2,000であるため、バースターも無尽蔵に使用することはできない。


 ※4.スキャナー:イングレスを起動する端末。使用するには、DNA認証のログインを経る必要があるため、一人の人間が使えるスキャナーは一台とされている。


 ※5.ADAM細胞:正式名 Anti Deoxyribonucleic Acid Method (反DNA制約)細胞。一つの生物に複数のDNA情報を紐付けるHUB細胞。

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