第5話 鉄壁の男

「このポータルだ。あいつのガーディアン※1 は」

「ひひひ、焼いてやりますか」

下卑た笑いで、スキャナ※2 を取り出した。


「ひゃっはー!」

「もーえろよー、もえろーよー」

簡単にコモンシールドが消し飛んだ。

そのとき、


「おい!ワンコ※3 だ!誰かいるぞ!」

「関係ねえ!見たところ一人だ。二人がかりに守れっこねえ!一気にいったれー」


二人に脂汗が流れ出したのは三分後だ。

「全然だめだ、どうなってやがる。イージス※4 もレゾも減らねえ。

こいつ、一人でイージスワンコ、レゾワンコ、リチャをやってやがるのか!ありえねえ!」


「待て、このエージェント名!こいつ、あの鉄壁と呼ばれる男だぜ!」

「なんだって!じゃ、二人がかりじゃ勝てっこねえ!にげるぞ!」

「ひー」

二人は車に乗り込み脱兎の如く走り去った。


入れ違いで一台の車がこれまた、猛烈なスピードですべりこんだ。

ききー!


急停止した一台の車から、一人の男がスキャナを手に飛び降りた。

「生きてる!よかった。。」


男は我にかえって、たたずんでいる作業着の男に

「ありがとうございます。あなたが、守ってくれたんですね。

これは、僕のガーディアンなんです。後一日で、プラチナの」


「別にあんたのためにやったわけじゃねえ。

あいつらが、気に入らなかったかだけだ。じゃあな」


「待ってください!あなたのことは、知っています。

こんなところで会えるとは、ましてや、僕のガーディアンを、守ってもらえるとは、思っていませんでした。

お礼をさせてください。近々、僕達のチームで作戦をします。そこで、CF※5 を作ってください。MMU※6 入りますよ」


「断る。俺は一人でやるのが、好きなんだ」

「待ってください!鉄壁のvahoho さん!」


作業着の男vahoho と呼ばれた男は振り返らない。

ただ前だけをみている。過去の苦い思いから、目を背けるが如く


 ※挿絵

https://kakuyomu.jp/users/dobby_boy/news/16817139559115642525


※1.ガーディアン:「Ingress」における実績メダルのひとつ、ポータルを長く保持した日数に応じて付与される。

3日保持:ブロンズ、10日保持:シルバー、20日保持:ゴールド、90日保持:プラチナ、150日保持:オニキス

エージェント間のヘイトを増長させるとの理由で2018年に一度廃止されるが、エージェントの強い要望により20XX年復活。


※2.スキャナ:INGRESSをインストールした端末のこと。スマホをスキャナとして使用することが多い。


※3.わんこ:攻撃を受けているポータルで、レゾネーターが破壊されたら、即レゾネーターをデプロイし、シールドが破壊されたら、即シールドをデプロイすることで、ポータルを防御すること。

食べて食べてもソバが追加される「わんこソバ」が語源とされる。

なお、レゾネーターのわんこを「レゾわんこ」、シールドのわんこを「シールドわんこ」と呼ぶ。


※4.イージス:最強の強度(レゾネーターのダメージ軽減度)とはがれにくさ(シールド自体の破壊確率の低さ)を併せ持つシールド。

このシールドが入っている限り、8バスでも1発あたりレゾネーターに1のダメージしか与えられない。

なお、シールドには、強度、はがれにくさの弱い順に、コモン、レア、ベリーレア、イージスの4種類存在する。

イージスシールドのわんこを「イージスわんこ」と呼ぶ。


※5.CF:3つのポータルをリンクで結んだ三角形。CFのMU(後述)は個人実績となるだけでなく、各陣営の勝敗に影響を与える。


※6.MMU:Mega Mind Unitの略。100万(Mega)以上のMU(Mind Unit:CFの面積と、人口の密集度合いによるポイント)。

なお、実績メダルのひとつ、イルミネーターのプラチナメダルの付与条件は1MMU以上、オニキスメダル付与条件は4MMU以上であるため、MMUが入ると、少なくともプラチナメダル付与が確定される。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る