第14話 ようやく復興の兆しが
震災復興の象徴的な話題として、今月2日にJR大船渡線で待望のバス高速輸送システム(BRT)が運行を始めた。
小友駅(岩手県陸前高田市)は津波で流されたが、その駅前広場にBRTの小友駅が仮設されたので、財当仮設も気仙地域と再びつながったのだ。
陸前高田へ支援に入って、二度目の3月11日を迎えた。
昨年は岩手県立高田病院の建物に向かって黙とうできなかったが、今年は病院正門が献花台として残されているだけ…。
午後2時46分にサイレンが鳴り渡ると、私は仮設病院内で黙とうを捧げた。
県立高田病院での診療応援は、石木幹人院長の定年退職に合わせて、当初の予定通り三月いっぱいで終了だ。
それに伴って私は、市内の小友町にある財当仮設住宅を出ることになり、多くの友人ともお別れすることになる。
更にこの連載も、今月が最終回。
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昨年3月1日から1年間の集計(今年2月末現在)によると、私が県立高田病院で診療した患者さんは4,520名だった。
そのうち女性患者さんは3,119名(69%)で、大部分は高血圧や脂質異常症そして糖尿病など慢性疾患である。
特に、不眠症や不定愁訴はじめ更年期障害・泌尿器疾患には、クィーンズクリニック(女性内科)で対応した。
クィーンズクリニックの患者さんを地域別にみると、陸前高田が約9割だったのは当然として、基幹病院のある大船渡市からも来ていたのは予想外だった。
大船渡には婦人科医院があったものの震災後に閉院したため、県立大船渡病院だけで気仙地域(大船渡市・陸前高田市・住田町)の産婦人科医療を一手に引き受けている状況である。
とくに産科医療では、気仙地域のみならず釜石市や遠野市などもカバーせざるを得ない状況と聞いた。
このような広域産科診療を担っている大船渡病院に、ちょっとした婦人科的な診療まで期待するのは酷だと、元産科医としての自分は容易に納得してしまう。
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最終回といえば、財当仮設住宅の健康教室として始めた「財当塾」も、3月16日に送別会を兼ねて開催された。
お題は「ケセンのおなごば支える」として、更年期から老後の亡くなるまでの期間を、自宅や介護施設で楽しく暮らせる秘訣を話した。
世界的に高齢化が進むなか、終末期ケアや終末期医療が注目されている。
シンガポールの慈善団体リーエン・ファンデーションの調査によると、死を迎える人に施されるケアの質を評価した「クオリティー・オブ・デス(QOD、死の質)」インデックスが、日本は世界で23位という低さだった。
さまざまな要因のなかには、死に対する認識やタブーが緩和ケアの障害になっているという文化的側面も挙げられる。
特に被災地では、死を話題にすること自体がタブーという状況でもある。
お茶を飲みながらのお喋りは女性の特権だろうが、特にケセンのおなごは「お茶っこ」を楽しんでいるようだ。
当初は仮設の談話室で支援団体の「お茶っこ」を受けるだけだったが、最近では被災者が癌患者用のタオル帽子を作るという前向きな動きも見られる。
こういう機会を利用して、自分や親の死について考えておくことも必要なのではないだろうか?
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「医療で震災復興」プロジェクトは、陸前高田における当初のミッションを完了したが、4月以降は気仙地域へ拡大継続することになるだろう。
👨⚕️ 医療で震災復興 👷
https://kakuyomu.jp/works/16817139558781685779
(20130321)
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