第3話 高田にもアップルロード
2月29日の夜から2週間ばかりは、岩手県立住田地域診療センターの敷地内に医療局が建てた仮設住宅で寝泊まりした。
バンガロー風の可愛い木造住宅だが、天井がなく暖房はエアコンのみという非寒冷地仕様。あまりの寒さに、木の床に薄縁をおいて布団を敷き、その上にコタツを置いて亀の子状態で夜を過ごした。
また、暗い凍結した山道を寝るだけに戻るのも大変で、よほど病院に泊まろうかと迷ったもの。
しかし幸いにも3月14日には、広田半島の小友町財当地区へ引っ越しできた。
2月から高田病院の入院棟が稼働したこともあって、緊急時における陸前高田市民の安全を考えての配慮だと聞いている。
実際、大きな地震で津波注意報が出たときも、すぐに高田病院へ駆けつけることができた。
また引っ越しの際、近所の被災された方々からは、「近くに病院の先生がいてくれて安心だ!」と喜ばれた。
米崎地区の高田病院から広田半島へは、海岸沿いの曲がりくねった細い旧道の代わりに、国道45号線から新しいバイパスを下っていく。
津波の際には、半年前にできたばかりのバイパスを大勢の車が上ってきて助かったそうだ。
山を切り開いただけのバイパスだが、津波後にはガソリンスタンドをはじめ仮設店舗が、市街地から高台を目指して移転している。
そして3月24日(土)には、スーパーマーケットのマイヤが常設の店舗で開店した。
青空に二個も上がったアドバルーンに誘われ店内にはいったのだが、明るい雰囲気と豊富な品揃えに、思わず弘前へ戻ったような錯覚に陥いる。
この道を地元の人々は「アップルロード」と呼ぶのだが、当初は岩木山を眺めながら走る「アップルロード」を連想した。
ウィキペディアで検索すると、全国で3本の「アップルロード」が見つかった。
①青森県弘前市にある、弘前南部広域農道の愛称。
②岩手県陸前高田市にある、岩手県道38号大船渡広田陸前高田線(主要地方道)の同市米崎町から広田町まで4.2kmのバイパス区間の愛称。
③長野県飯田市にある、国道153号飯田バイパスの愛称。
ついでに「陸前高田」と「リンゴ」で検索してみると。
陸前高田市特産「リンゴ」:明治時代に植えられ、県内で一番古く120年の歴史がある。
樹齢100年以上の古木も大切に育てられ良質な実も収穫されている。
また、全国的にも海の見える沿岸のリンゴ畑は珍しく、リアス式海岸とリンゴ畑は良い調和がとれた景観だ。
陸前高田のリンゴは蜜入りで糖度が高いのが特徴。
10月~11月の日照時間が長いことから、充分熟成されるためと言われている。 主力品種ふじの糖度は17度前後もあるという。
陸前高田市に来て「アップルロード」と聞いたときには不思議に思ったのだが、確かに低く剪定されたリンゴ園の風景も目につく。
五月になれば、陸前高田も弘前と同じように白い花が咲いていることだろう。
「弘前市と陸前高田市がリンゴつながりで姉妹都市!」なんて、このタイミングで実現したら双方にとって良いお話ではないかなと、仲人口のようなことを考えてしまう。
しかし非常時の陸前高田市はそれどころではないから、弘前市の葛西市長さんからアプローチしていただけないだろうか。
弘前市と陸前高田市の正式なお見合いの前に、リンゴ関係者をはじめとする民間レベルでのお付き合いから始めるのもイイだろう。
「津軽」から「ケセン」への積極的なアプローチをお待ちしている。
(陸奥新報 2012・04・19)
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