第15話

 先ほどの物を動かしていた人物が侵入するかもしれないと思えたので、ダイニングキッチンの窓の鍵をかけようと近づくと、考えもしなかった錠がかかっていた。金属むき出しの南京錠が窓の動きを留めていた。ツアーの規定に外出は禁止されていたが、こうも信用されず、監禁を象徴するよりも理解させる錠前が使われているとなると、底知れない不気味さに島を出たくなった。なぜこんな錠を使うのか、それも低くない位置の窓に。わざわざここから抜け出したくなる仕掛けが他にもあるからだろう。別の窓に走って近づくと、同様の作りで閉じられていた。先ほど女を退かせた物体が侵入するよりも、自身の外出が封じられていることが重要な懸念となり、玄関へ慌てて走った。南京錠ではないが鍵穴が二つあった。もはや嫌な予感しかなかった。中年女の部屋だろうとかまわず廊下にある扉を開けようとするが、ドアノブはあそびなく詰まってしまい、堅く固定されていた。蹴破ってみようと思った途端に、すぐに弁償が頭に浮かんだ。

 契約通り外出を禁止されていた。こんな真似をされるならわざわざ書面に載せて納得させる必要などない。有無を言わせないこの監禁だけで良いではないか、地酒ばかり振る舞う中年女を看守に置いて。多くないすべての扉が封じられていることを知って、パニックになるよりも憤りが全身を熱くさせていた。部屋を滅茶苦茶にしたい衝動は多大なストレスを伴って発現を小さくさせるらしく、テーブル上のボール紙を執拗に破き、惨殺するように紙片を散らかした。それが気分をわずかでも回復させればいいが、増やすことも減らすこともなく密閉された空間でやけに生気を持ってばらまかれるのみだった。見知らぬ環境に不可解な状況が加わり、宵越しの酒による苛立たしさは増進して興奮と理性の板挟みで呼吸を荒くしながら、女は部屋の窓の物体を考えた。もしあれが窓から進入してきたら、出口のないこの家の中で襲われる。映画やドラマの影響だと考えることもなく、それが事実だと思われて再びおかしな恐怖に体は染まった。鍵はかかっているだろうか。毒毒しく顔を歪ませて冷蔵庫を見た。

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