第18話

看護師2がやってくる。


料理人   おっ、薬がやってきたぜ。

看護師2  体調はどうですか。

美容師   最悪です。

看護師2  そうですか、お変わりないですか。

美容師   ここまで下がれば、あとは突き抜けて、安らかに眠るくらいじゃないで

      すか。

無職    すごいね。

学生    荒み具合は着実に進行してますね。

看護師2  そうですか、やはり変わらないですか。昨夜お話しした通り、専門の先

      生が診察に来ますので。

美容師   そう言って何度もごまかすんです。

看護師2  いえ、みせていただいたできものもありますので、あと数分したら先生

      がいらっしゃいます。

美容師   変わりませんよ、医者なんて来ません。

看護師2  先生が来たら、きっと気も静まりますよ、つらいでしょうが、もう少し

      辛抱していてください。

美容師   はいはいはいはい。


看護師2が退室する。


料理人   いい人じゃねえか。

先生    医者も来るそうだから、良かったじゃん。

美容師   ああ言って、最後まで引き延ばすんですよ。

会社員   それがお互いの為になるからな。

漫画家   たしかに、中止するのを引き留めていますが、優しい人ですよね。

声楽家   話し言葉も、心から出ている感じはします。

美容師   それが仕事だから、偽るのがうまいんですよ、ああいう看護師は。

学生    つらい仕事っすよ、ゴキブリなんて言われたり。

無職    他の虫も出てたよね。


医者2と看護師2が部屋に入ってくる。


料理人   おいおい、なんかすげぇのがくるぞ。

先生    ちょっと、すごい綺麗じゃないか。

学生    あれが医者っすか。

美容師   あれは違いますよ、偽物ですよ。


看護師2が無言で合図して、医者2も無言でうなずいて美容師に近づく。看護師2はカーテンを閉める振りをする。


声楽家   髪の毛が赤いですね。

漫画家   バットマンの、敵の恋人みたいですね。

無職    すごいキュートだね。

会社員   たしかに、すごい可愛いね。

無職    ああいう有名なロック少女いたよね。

料理人   超羨ましい、おれ、あんな可愛い子と近づいたことねえぞ。

先生    日本人じゃ、いくら究極に可愛くても、ああいう風にならないからな

      ぁ。

学生    いいっすね、このカーテンの中で、股間の腫れ物診てもらってるんっす

      よね。

看護師2  ちょっと、あまりうるさくしないでください。

料理人   そりゃ無理だろぉ、あんな可愛い子を見ちゃ。

先生    本当に医者なの。

看護師2  専門の、立派な先生です。

会社員   日本じゃまず、あの髪の毛の色は許されない。

漫画家   やっぱ世界は広いですね、あんな小さくて可愛い子が医者なんですか。

声楽家   あのぉ、自分も診てもらおうかな。

料理人   おいおい、一人仮病が出ると全員仮病になるぞ。

学生    それも、違った病気っすね。

無職    えっ、どんな病気。

看護師2  静かにしてください。

先生    いいじゃんべつに、先生は日本語わからないでしょ。

看護師2  わたしがわかります。

先生    別に君のことを話題にしているわけじゃないし。

学生    そうっすよ。

漫画家   本当に可愛い人ですね、小悪魔ってかんじで。

料理人   おいおいおい、打たれたやつが一人発症したぜ。

声楽家   その気持ち、とてもわかりますね。

無職    そうかな、可愛いけど。

会社員   恋の病気ってものか。

料理人   何言ってんだよぉ、真面目なやつが狂ったようだぜ。

会社員   失礼な。

学生    いいっすねぇ、診てもらって、正直、見ただけでムラムラしてますよ。

先生    汚いなぁ。

料理人   そりゃ正直過ぎるだろう、兎小屋に放り込まれたニンジンみてぇなもの

      でも。

声楽家   ひどい例えですね。

会社員   わからないこともないけど。

先生    可愛い子だ、なにするわけじゃなくても、ちょっと話しかけたくなる

      な。

漫画家   ちょっと、飾りたくなりますね。

無職    なに、フィギア。

漫画家   いや。

料理人   なに、ダッチワイフ。

漫画家   ち、違います、額縁に。

会社員   ああ、写真か。

漫画家   いえ、絵にして。

声楽家   すごいわかります、詩と歌を捧げたくなります。

料理人   なるほどなぁ、副作用の出るのは、こんな甘っちょろいやつらなんだ。

漫画家   無神経には、効かないんですよ。

料理人   おお、言ったな。

学生    自分は、あの、補欠で消えた自転車乗りさんをつい思い出して、このお

      医者さんを指名したいっす。

先生    こりゃひどい。

会社員   もっと自制したほうがいい。

看護師2  きゃああぁぁぁぁ。

料理人   なんだなんだ。

看護師2  ちょっと、やめてください。


看護師2がカーテンを開けて助けを呼ぶ振りをすると、美容師がパンツをはいた下半身で医者2に襲いかかっている。それを見た全員が助けに入る。


先生    おいっ。

料理人   ばかやろうっ。

会社員   これはまずいって。

学生    ずるいっす、オフサイドっす。

無職    それって、フライングじゃない。

漫画家   天使になんてことを。


暗転

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