第17話

第7場


朝、全員眠っているところに看護師2が部屋に入ってくる。


看護師2  おはようございます、起床時間になりました。


看護師2は退室する。


料理人   ふあぁぁ、頭かいい。

会社員   さすがに、シャワーを浴びたいな。

先生    この胸の貼り薬がかゆくてしょうがない。

学生    この湿布は思ったよりきついっすね、かゆみがやばいっす。

無職    気色悪くてしかたないよ。

漫画家   かゆみもそうですけど、気持ち悪さもきついです。

声楽家   ぜんぜん眠れませんでした。

先生    昨日も眠れなかったけど、今日もひどい。

料理人   胸に湿布、指にサック、まさに実験体。

先生    それはそうだろ、実験なんだから。

無職    いろんなのがあったけど、今回はけっこうつらいね。

漫画家   日本の治験なんかと、まるで比べものにならないです。

学生    ほら、骨折の治験なんか、あるって聞きます。

料理人   なに、病院で骨を折られるのか。

学生    そうみたいっすね。

先生    それほんとかよ。

声楽家   それは痛いですね。

漫画家   それはないですよ、たいていが、その薬に対しての持病や症状を持つ人

      から選ばれるんですから。

学生    わからないっすよ、それは日本だけの話で、海外では骨を折ることもか

      まわないかもしれないっすよ。

会社員   合理的だからね、目的の為に情けなんか皆無で、効率を重視されるか

      ら、とくに別の国の治験なんか。

学生    戦争当時の実験は、日本もその国も、ひどいことしたっすね。

会社員   狂気はどの国でも同じで、程度とシステムの質が違うくらいだ。

美容師   骨のほうがいいです。

料理人   おっ、起きたか、だいじょうぶか。

会社員   眠れていないみたいだったけど。

美容師   寝る寝ないは、もはやないです。

無職    んっ、どういうこと。

先生    そういうことだよ。

漫画家   少しは良くなりましたか。

美容師   そんな希望はとっくになくなりました。

学生    変わらず、悪そうっすね。

美容師   もはや変わりません。

声楽家   腫れ物はどうですか。

美容師   立派に育っています。

料理人   育つ、か。

先生    ほら、朝一番に診てもらえるんだっけ。

美容師   ええ、それが頼みですから。

無職    診てもらえれば、気分も良くなるよ。

料理人   気休めだとしても、なあ。

美容師   期待はしてませんが、これが最後の鍵ですから。

会社員   夜には薬も剥がせるから、今日を乗りきれば、あとは時間があまるだけ

      だよ。

学生    そうっす、むちゃ暇っすよ。

漫画家   それが目的だったのに、こうも気持ち悪いと、集中できないですよ。

美容師   暇で、体調が悪い、良い組み合わせですよね。

無職    体調が戻れば、楽しくなるよ、どう、朝ご飯は食べれそう、吐き気は。

美容師   なんですか、いちゃもんですか。

会社員   そうか。

料理人   食欲が出るといいんだけどなぁ、どんなことだって、食えば元気になる

      から。

先生    まあね、でも気持ち悪いんじゃあ、しょうがない。

学生    いいっすよ、今日も自分たちで食っちゃいましょう。

美容師   恩着せがましい。

声楽家   まあまあ。

漫画家   この気分は、わからないこともないですけど。

美容師   なにもわかっていない、早く出たいんです。

無職    なら、早くリタイアしたほうがいいのに。

美容師   何度も訴えていますよ、病院側が、全然聞いてくれないんですから。

学生    それが、病院の役目っすからね。

料理人   飼ったねずみは、簡単には逃がさない、ってなわけか。

会社員   金も手間もずいぶんかかっているから。

美容師   それだけじゃない、ここにいる人たちもです。

先生    そりゃそうさ、せっかく一緒に入院したのに。

学生    そうっすよ。

料理人   あたりめえだろぉ、リタイアしたら、飛行機代や宿代が、全部自腹にな

      るんだぞ。他の、家から通っているやつならいいけど、おれらはまだ旅

      行がなげえぇんだ、金は大切にしねぇと。

声楽家   生活かかってますね。

漫画家   自分もそうです、ここでやめたら無駄足になります、赤字です。

無職    やめることなんて、考えたこともないけどね。

美容師   そんなことは、どうでもいいです、健康と自由が一番です。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る