第16話

無職    おいしく食べている人もいたけど、やっぱ無理だね。

料理人   塩が足りねえから、野菜の風味がもろにくるんだよ、おい、付属の、お

      れの塩をやるから、これでなんとか胃に入れろ。

美容師   無理です。

会社員   塩があるとだいぶ変わる、自分はこのままで食べれるから、これもあげ

      る。

無職    おれにちょうだいよ。

会社員   あなたは必要ないだろ。

声楽家   自分も、あってもなくても味がわかんないので、使ってください。

学生    それ、塩分が強すぎじゃないっすか。

漫画家   じゃあ、少し自分にも分けてください、麻酔のように味覚が働いていま

      せん。

先生    まあね、副作用を抑えるんだから、麻酔、もしくは麻薬のようなもの

      だ。ほら、これも使って。

学生    なら、自分のも。

美容師   ああああああ。

料理人   水と塩で人は生きるんだ、どんどんかけて、リタイアを乗り越えろ。

無職    おれはあげないよ。

料理人   てめえはいい。

会社員   ああ、ああ、ちょっとかけすぎだよ。

先生    適度じゃないね。

声楽家   これなら、いくら何でも塩味が届きそうです。

漫画家   食欲はむしろ、なくなりそうですけど。

美容師   ああああああ。

学生    力がつきそうで、いいかんじっすね。

無職    ぜったい、水が欲しくなるよ。

料理人   それでいいんだ、水と塩、それに野菜を食えば。

先生    魚もいるけど。

料理人   なおけっこうだ、ほら、食え、食えよ。

美容師   ああああああ。

学生    部活を思い出しますね。

先生    本気かなぁ、これじゃいじめに近いけど。

会社員   あきらかに、しょっぱいだろう。

料理人   食べきらないと、入院は続けられないんだぞ、いいのか。

漫画家   なんか、この熱気で食い気が湧くような。

声楽家   おせっかいだとしても、応援は元気が出ますね。

無職    それじゃあ、しょっぱいって。

美容師   ああああああ。

料理人   一度でいい、口をつけろ、ほら。

先生    無理しなくてもいいんだけど。

学生    そうっす、無理っす。

美容師   おえぇぇぇぇ。

会社員   ああああ、当然だよ。

料理人   やっぱり食えねぇか。

無職    そりゃそうでしょ。

先生    この人料理人だっていうけど、ほんとうかなぁ。

料理人   無理して食え、生き延びるんだ。

学生    いいっすね、この暑苦しいノリ。

会社員   まあ、多少はいいけど。

料理人   いけるか。

美容師   うえぇぇぇぇ。

先生    これは無理だよ。

声楽家   なんか、味がないけれど、自分は食べれそうです。

漫画家   自分もなんとか。

料理人   ほら見ろ、おまえも頑張れ。

美容師   もう、無理です。

先生    なんとかならないかなぁ。


看護師二人が部屋に入ってきて、ケーキを運んでくる。


無職    あああっ、忘れてた、ニンジンケーキがあったんだ。

漫画家   へっ。

学生    ああ、あれっすか、やたら大きな、肉桂くさいの。

声楽家   ケーキ。

会社員   あれこそ、一番の大敵だろう。

料理人   なにぃ、デザートまであんのか。

美容師   はあぁぁ。

先生    これは、見事なとどめだ。


暗転

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