第14話

第6場


夕食前、全員が変わらない位置にいる。


美容師   はぁ。

無職    ほんとやばそうだね。

漫画家   はぁ。

先生    かろうじて、ってかんじだ。

声楽家   はぁ。

学生    何とか持ちこたえてますね。

美容師   はぁ。

料理人   こんなかんじで、なんとかいけそうじゃねえか。

漫画家   ほんと、つらいんですよ。

声楽家   もはや病気です、悪心、吐き気、下痢、悪心。

美容師   もう、戻れないんでしょう。

料理人   はあっ。

先生    どうした。

無職    どこに。

美容師   癌じゃないでしょうか。

学生    がん、っすか。

会社員   薬は、ねぇ。

美容師   もう、この状態が治らないんだと思います。

先生    だいじょうぶか。

美容師   きっと、癌だからこんなに効くんです。

声楽家   えっ、ほんとですか。

料理人   そりゃねぇだろう。

美容師   絶対そうです、これはちょっとおかしいです、みんな平気なのに、どう

      して自分だけが。

会社員   体質は個人差があるから。

美容師   病院の人も、必死にくい止めようと、適当なことを言ってとめるのも、

      良い実験ができているからです。

学生    リタイアされると、また誰かを引き込まないといけないから、必死っす

      よ。

料理人   馬鹿なことを、癌なわけねえじゃんか。

無職    薬が頭にもきてるんだね。

声楽家   どれがほんとなんでしょうか、もしかして自分も癌だから。

先生    そんなわけないだろう。

漫画家   でも、それわかります、すごい頭が混乱しているので。

料理人   なんとかここまでやってるじゃねえか、だいじょうぶだよ。

漫画家   この湿布みたいな貼り薬をはずせるのは、明日の夜ですよ、あと二十四

      時間はあります。

美容師   無理です、もう無理なんです、何度も伝えているのに。

声楽家   病院側も食い下がります。

先生    不安でしかたない精神状態なのに、よく我慢しているよ。

学生    あのゴキブリ野郎なんか、採血だけでいっちゃったっすからね。

料理人   注射の針だけで飛んだからなぁ。

先生    覚醒剤中毒者が、ない時に欲する行動のようだ。

無職    有名な、パブロフの犬みたいな。

学生    音に唾液がわくんすかね。

漫画家   みなさんは気楽でいいですよね。

料理人   おまえらは、まじでしんどそうだよな。

美容師   なんか、前に大麻でバッドに入ったときのようで。

漫画家   大麻ですか。

料理人   おいおい、また薬物の話だよ。

美容師   とても重くて、吐き気が止まらなくて、不安で。

会社員   精神に効果を与えるという意味では、大麻もこの薬も似たようなものか

      もしれない。

先生    海外では、何かしらの病気か症状のために、医学的に使用されるとも聞

      いたことはあるけれど。

料理人   そうかよ、正直言うと、おれはずいぶん好きだったから毎日吸っていた

      けど、バッドでそんなに吐いたり……、したこともあったなぁ。

無職    あるんじゃん。

学生    自分も、治験でもドラッグでも似たような経験をしたんすけど、どちら

      かというとLSDとか、覚醒剤のようなケミカルな悪さっすよね。

会社員   それはそうだろ、ケミカル以外の何物でもないんだから。

声楽家   みなさん経験豊富ですね。

漫画家   十回くらい日本の治験に参加していますが、こんな症状が出たことも、

      見たこともないですよ。

料理人   世界は広いからな、基準が違うんだよ。

会社員   ただ経験から言うと、大麻らしい悪さはこの薬では表れにくいだろう。

      河豚や蠍の毒など、自然界にも強い効果をもった成分はあるが、大麻は

      限界値がそれほど高くない。吸いすぎてもせいぜい眠ってしまうのがお

      ちだろう。

先生    あなたもよく知ってるね。

料理人   おれも同感だな。

学生    そうっすね。

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