第6話
旅行家 めしなんて食えりゃいいんだよぉ、何だって、おれはチャリンコで大陸
を横断しているけどよ、移動後のめしは何だってうめえからな。
美容師 それ、ちょっとわかります。
料理人 誰だってそんなこたぁ知ってるよ、そりゃぁ基本だろ。
学生 いやぁ、やっぱめしはうまいほうがいいっすね、ここまずいんで。
先生 なに、ここの食べ物はまずいわけ。
無職 うん、すっごいまずいよ。
職業不詳 はいはい、犬の残飯よりも。
会社員 そうでもないけど、塩気だけで、塩梅が悪いというか。
無職 だからまずいんだって。
声楽家 まずいんですね、そんなにまずいんですね。
漫画家 そもそも、そんな動けるわけがないんだから、ちょっとでもおいしいほ
うがいいんですよ、ほぼベッドの上ですよ、胃の働きも弱いし、結局、
食事は大きな楽しみになるんですから。
旅行家 おれはぁ旅行していて、ほんとにまずいって思う食べ物にあったことね
ぇな、好き嫌いは別として、蛇とか蛙とか、タガメとか。
料理人 たいていなぁ、現地の人間が食べる物に、まずいものはねぇんだよ、慣
れていないか、合わねえかだけで、自分の舌がすべてだと思っているや
つに限って、ちょっとでも合わねえと、まずいまずいって文句言うんだ
よ。
職業不詳 そうそう、まずいもんはまずい。
無職 うん、おいしいのはおいしいね。
先生 それじゃここでは、唯一の楽しみが、人によっては楽しめないのかい。
学生 ないよりましなんっすよ。
会社員 悪くないと思うけど。
旅行家 入院生活が示すような、最下層の立場がくらうべきめしかよ。
美容師 まさにねずみの生活。
職業不詳 ええ、ええ、モルモット、モルモットですよ、無機物のねぇ。
無職 はぁ、またねずみ。
料理人 しゃれでねずみ料理なんて出てこねぇかな、共食いみてえによ。
学生 ねずみっすか、うまいんすかね。
先生 ねずみかよ、気持ちわり。
旅行家 旅行中にねずみ料理があったけどよ、あんなきたねぇの食わねえよ。
漫画家 日本の治験じゃ、漫画やDVDなんかの娯楽も充実しているし、食事も
それほど悪くないし、看護師さんも優しいし、大切に保護される感じが
あります。
先生 飼育施設の充実かな。
旅行家 おお、日本でもあんのか。
会社員 ねずみだろうが人間だろうが、薬の効果を精密に調べるから当然でしょ
う。
無職 まずいし動けないけど、死ぬことはないよ。
料理人 そりゃ当然だろ。
先生 もし死んでたら、ここにいないじゃん。
美容師 この人なら、一度死んでいてもおかしくないけど。
漫画家 たしかに、死んだことさえ忘れて、蘇っているかもしれない。
無職 でも死にそうな人は見たよ。
旅行家 おいおいまじかよ。
学生 あっ、自分も見たことありますよ。
先生 だいじょうぶかよ、この治験。
無職 たしか、抗ガン剤の副作用を抑える薬だったっけ。
学生 そうそう、自分も同じっす。
漫画家 まさか、この治験と同じ薬ですか。
美容師 同じならまずいですね。
料理人 いやぁ、まいっちまうなぁ。
無職 どうだっけ、覚えてないや。
学生 噂にもあったので、おそらく、同じ治験っすね、投薬方法が違うだけ
で、似たような薬じゃないっすか。
声楽家 ええっ。
職業不詳 ええ、ええ。
漫画家 どんな風だったんですか。
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