第2話

美容師が部屋に入ってくる。


美容師   どうも、はじめまして。

漫画家   ああ、どうも。

無職    治験?

美容師   はい、治験です。

無職    三人分かぁ、これじゃ取り合いになっちゃうぞ。

漫画家   自分もさっきパリから着いたばかりで、なんか好きなベッドを使ってい

      いみたいですよ、あそこ、あそこ以外はどれも空いているみたいで。

無職    あそこはおれだからね、あそこがよかったら交代するよ。

美容師   そうですか、じゃあここで。

無職    なんか買ってこないと、また出るのかぁ、面倒だなぁ。

漫画家   受けましたか、健康診断、なんか回りくどくて、わかりづらいですよね

      ぇ、通訳付きで無駄に量が多いから、やけに時間をくいますよ。

美容師   そうなんですか、今回が初めてだから、もっと大変だと思っていました

      よ。

漫画家   いやいや、もっと楽ですよ。

無職    さっき遠慮するって言ったよね、食べれなくてもいいよね。さっきパン

      とチーズとソーセージを買ってね、今から食べるんだけど、食べる? 

      これがすごい安くておいしくて、こっちに来たらまず買って食べるん

      だ、あとオリーブとピクルスに、ビールもたくさん買ったから、飲んで

      食べようよ。

美容師   それはいいですね、ぜひご一緒させてもらっていいですか、これから昼

      飯を食べようと思っていたところなんですよ。

無職    ビールは黒じゃなくて黄色いので、チーズは青いのじゃなくて白くて固

      いの、ソーセージはかちかちになっているのじゃなくて瓶詰めの細く長

      くて茶色いのだからさぁ、とてもおいしいものだよ。

美容師   ビールにソーセージ、それにパンとチーズですか、準備万端ですね、自

      分もサラミと缶詰のサーディン、それとぉ、ワインでも買ってきましょ

      うか?

無職    いい、買いに行かなくていいから、まず食べようよ、おなか空いちゃっ

      たよ。

美容師   あっ、そうですか、ならすぐ準備します。

無職    えっ、準備もいいから、そのままテーブルに行くだけだから。

美容師   サラミとサーディンを取り出すだけですよ。

無職    そう、ならいいけど、よけいなことしなくていいからね。

漫画家   なんか、自分も一緒に食べたくなりましたね。

無職    えっ、なに、いまさらなにぃ、食べたいの。

漫画家   食べたいというか、飲みたいというか。

無職    もう、二人分しかないのに、いいよ、食べなくて。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る