休息

ユーク・ノルド

種族:人間

年齢:18

ジョブ:魔剣士(光)

レベル:43

スキル

【身体強化】Lv7

【魔力強化】Lv4

【持久力強化】Lv4

【忍耐】Lv2

【近接魔術】Lv10

【気配感知】Lv2



 ……うーむ、どんどんステータスが上がっていくなあ。


 レベルは高くなるほど上がりにくくなる。

 レベル40なんて超えたら一日で1上がればいいほうだと聞いたことがある。

 それがなんでこんなにハイペースで上がっていくのか。

 謎だ。


「どうしたの?」


 サリアが聞いてくる。


「いや……ちょっとレベルが上がるペースが速いのが気になって」

「そういえばあんた、さっきからステータス変化でぴかぴか光りまくってたわね。いくつ上がったの?」

「今日だけで35から43まで上がった」

「確かに速いわね……なにか経験値ブースト系のスキル持ってるとか?」

「いや、そういうのはない」


 というか、経験値に作用するスキルなんてあるのか。

 今まで知らなかった。


「もしかしたら、何かのスキルが目覚める前兆かもしれないわ」

「そんなことがあるのか?」

「滅多にないけど。……というか、あんたまだレベル43だったのね……なんでこんなに強いのよ」


 正直魔剣と、光属性とかいうチート火力属性のおかげだと思う。


「サリアはレベルいくつなんだ?」

「83ね」


 つっよ。

 レイドより高いのか。

 どうりで一人でダンジョンになんか潜ろうとするわけだ。


 その後も魔物を倒しながら二十階層まで進む。

 最下層は三十層なので、三分の二の道筋を消化できたことになる。

 半日でこれなら相当いいペースだ。


「ところでサリア、食料は持ってきてるか?」

「普通の携行食料ならあるけど、それが?」

「いや、実はファラが弁当を二人分作ってくれたんだが」

「本当!?」


 サリアが目を輝かせた。

 さすがはファラの手料理だ。たった一度食べただけのサリアを虜にしてしまうとは。


「じゃあこれ、サリアのぶんな」

「待ちなさいユーク。その弁当の入ってたバッグ、まさか魔法鞄じゃ……」

「あ、言ってなかったか? 実はそうなんだ。この前アイテムボックスから出てな」

「……それ、国宝級のレアアイテムなんだけど……まあユークだし言うだけ無駄よね」


 なんだか呆れられているような気がする。

 ユークだしってどういう意味だ。


「美味しい……! ダンジョンでこんなに美味しい食事がとれるなんて最高ね」

「そう言ってもらえるとファラも喜ぶよ」


 同時に、ずきり、と胸が痛む。


 レイドたちとパーティを組んでいたときもこうしてファラが作ってくれた弁当を四人で食べていた。

 だが、あいつらは内心では俺やファラのことを嘲笑っていた。

 あいつらは俺のことをパーティメンバーとして認めていなかった。


 じゃあ、パーティメンバーって一体なんだ?


「なによ、急に黙って」


 押し黙った俺を見て、サリアが怪訝そうに尋ねてくる。


「……サリアはどうして前のパーティを――『銀狼旅団』を抜けたんだ?」


 気付けば俺は、そんな質問を口にしていた。


「なによ急に」

「え、あ、いや、答えたくないならいいんだ」


 サリアはぽつりと言った。


「……リーダーに除名されたのよ」

「除名?」

「ええ。理由も一切聞かされず、ある日突然ね。別にメンバーと仲が良かったわけじゃないけど……ちょっとショックだったわ。仲間だと思ってた相手から、いきなり『いらない』って言われたんだもの」


 そう告げるサリアの口調は少しだけ寂しそうにも感じた。

 サリアは最初に出会った日の夜、パーティを組む気はないと言っていた。

 あれはこういう理由だったのだ。


 裏切られたことへの憤りや、また捨てられるかもしれないという恐怖。

 その気持ちは俺にもよくわかる。


「俺も同じだ。俺もレイドから……勇者パーティから追放された」

「あんなにすごい魔剣が使えるのに? 信じられないわね」

「追放されたときは使えなかったんだよ」


 サリアは、ふうん、と頷く。

 それから小さく笑った。


「あたしたち、似た者同士だったのね」

「はは、そうだな」


 不思議な縁を感じてしまう。

 もしかしたらサリアとなら、本当の意味でパーティになれるかもしれない。

 だが、あくまでこのパーティは臨時のものだ。

 あまりこういうことを考えることやめておくか。

 あとで悲しくなるしな。


「ねえ、ユーク」

「どうした?」

「……やっぱりなんでもない」


 サリアはそう言って誤魔化すようにそっぽを向くのだった。





 ダンジョン最下層。


「とうとう来たわね」

「ああ。……準備はいいか」

「ええ」


 ダンジョンボスのいる大空間へとつながる門に二人同時に手をかける。

 ギィイ……と音がして扉が開いた。


 ボッ、ボッ、ボッ。


 大広間の端で次々と炎が灯り、中心部で巨大な影がうごめく。


『シャアアアアアアアアアアアアアアアアア!』


 全身を銀色の鱗に覆われた大蛇の魔物。

 メタルサーペント。

 あれこそがこのダンジョンのボスだ。


「援護頼む!」

「わかった!」


 俺とサリアはボス戦の攻略を開始した。

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