トールズという男。
トールズが突き飛ばされたとき、地面にナイフが転がった。それをグインが拾い上げた。泣き顔の面がいう。
「さあ、早く殺すんだ、お前が審判だろ」
グインが立ち上がり、トールズの方に向かう。
「トールズはあきらめたように、うつむく」
グインは少しかがんで、トールズにいった。
「お前はここまでよくやった、あとは“大人”にまかせろ」
そういってグインは踵をかえして、泣き顔の面に向き合ってナイフを構えた。
デザが鈍い痛みを感じる。そして目をつぶる。目を開ける数秒の間、デザは目の前に気配があるのをさとって目を開けた、ふと目を開けると、デザの前にある男が背中を向けてたっっていた。その男は先ほどカルナに殴られた怒り仮面だった。その仮面半分が崩れ、顔があらわになっていた。
「お前は……?トールズの友人の……」
「デザ・ロア、俺はトムだ、お前とはあのコンビニの前で初めてあったが、デザにはいろいろ聞いていた、なんでこうなったか詳しく説明したいところだが今は暇はない、デザを連れて逃げろ」
「なんで、お前、さっきまで敵だったじゃないか!」
「“魔法が解けた”んだ、チキンレースの魔法が」
そういってトムはデザの小刀を借りるといって持ち去った。その過程でデザのペンダントがひっかかり、ちぎれ、彼らの正面にある泣き顔の面との間の地面に転がっていってしまった。
「あれは……お守りなんだ……」
「いいから、早く逃げろ」
自分の前に立ちはだかるエージェントグインと怒り仮面をみて、わなわなと震える“泣き顔の面”
「お前ら、車の中で何かコソコソ話しているとおもったら!!“俺を騙しやがったな!!”どういう事だ……お前ら、何やってる、“グルト様”の予言にはこんな事はなかった、それに“怒り面”、お前だってあいつを恨んでいるといっていたじゃないか、過激な事ばかりするアイツを!!なんであいつばっかり!」
「チッ、気づいたか」
そういってエージェントグインは舌打ちをした。そして泣き顔の面の注意を引くのだった。
「“魔女の予言”が聞いてあきれる、“トールズの予言”の方があてになった、“デザは必ず俺を助けにくる”そういう予言のほうが」
「お前ら!!!“芝居を打ちやがったな!!”」
デザはトールズを立ち上がらせ、ゆっくりと歩きだす。
「トールズ、お前どういうことだ、わざと殴らせたのか?」
「ああ、なんならお前のために死ぬ覚悟だってあった、“泣き顔の面”あいつはグルトのつくった“WIW”の中でも一番強い、“魔獣”のようになる。あいつの仮面の下の顔は“デニー”俺にいじめられていた奴さ、あいつが一番俺に“恨み”をもっていた、魔女の原動力だ、恨みさえきえれば、あいつにかけられた魔法が消える、だからあのエージェントと一芝居うったんだ、すまなかったな、デザ、お前は“あの頃”と何もかわらない、骨折した右腕で殴るなんて“くるってる”よ」
そういわれたとき、デザの記憶がよみがえった。デザとトールズはよく昔“いたずらのチキンレース”をしていたがそのチキンレースには暗黙のルールがあった。どちらかがチキンレースに問題がある、あるいはギブアップを決めた時、両手を交差するサインをして、レースそのものを無効にする。それが言葉ではなかなかお互いに配慮できないトールズとデザの“ルール”だった。
トールズがデザにつぶやく。
「デザ、俺を刺せ……」
「!?」
「それですべて終わる、誰も傷つかなくて済む……今回の件は俺がすべてわるかった」
デザは、勢いあまってトールズを左手で殴ってしまった。
《ドサッ》
地面につっぷすトールズ。
「お前、それだよ、まるで諦めたように、人との信頼関係を一方的に絶ち切る、高校になってから一度も連絡をとってこなかったのはお前じゃなかったか!!トールズ」
トールズははっとした。コンビニで久々に会ったときも、なかなか話しかけられなかった事も、そういえば自分がデザに避けられているような感じもしていたことも、デザは知っていたのだ。
「デザ、すまない」
トールズがデザの肩を借りて立ち上がるとき、ふとつぶやいた。
「俺のせいでこんなことになった、俺は、厄介ものだ」
「デザ、そうじゃない、俺ももっと早くいっておけばよかったんだ、多少悪い事をしてもいいと思ってたけど、“弱い者いじめ”はまずいって」
その頃、外ではリーヌが、地面に魔術を書きながら、汗をかいて魔術の異変に気付いて呟いた。
「結界が、解けかけてる!!」
「何?」
刑事が時計を見ると23分、予想より早くとけかけているようだった。
「私、カルナの影響を受けているわけじゃないけど」
「何?」
リーヌが、結界の前でロズ刑事をふりむきながら、こういった。
「お願い、銃はなるべく使わないで、誰に対しても」
「ん?お前は平和主義者か?」
「そうじゃない、そうじゃないんだけど、若い子もたくさんいるの、“取返しの憑かない罪”が未来、彼らの心を苦しめないとも言えない」
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