騒乱、序章

 グルトは用意していたバンに仲間や人質を詰め込んでいた。エージェントグイン、トールズ、昨夜誘拐した夫妻、仮面をつけた手下。グルトたちを見張っていた希星魔女院のエージェントも夜のうちにコテンパンにして縄で縛ってキャンプにいれておいた。準備がおわると車を発車させどこかへと移動する。移動中夫婦がグルトを説得しようと試みた。

 「あなたのつらさはわかっているわ」

 とか

 「弟の事を思うなら恨みを晴らすなんてこと考えるな、第一私たちが殺したんじゃない!!」

 とかありがちな言葉を適当に述べている。その様子にいら立ちながらもグルトは目的の場所へと向かうのだった。


 デザはその日午前9時頃に目を覚ました。どことなく胸騒ぎのする日で、おちつくためにテレビをみたり、差し入れの新聞に目を通したり、母と会話をしたりしていたが、母親が少し離れたときにふと自分のベッドの脇に手紙がおかれていることに気づいた。それも二通、それを開封すると、内容はこんなものだった。


 「デザ君へ、あなたは記憶を失って大変でしょうが、もしこれを見たら少し考えてほしいことがある、レムという私の同僚のにはすでに話を通してあるけれど、私たちは今大変な選択をせまられているの、あなたは親友のトールズとリサさんを守れるかどうか、私との記憶はいくつかあるでしょう、私とあなたと、そして“カルナ”はあなたが記憶を失う前協力関係にあったの、いえ、素直に言えば君とカルナが、カルナはあなたの元々の護衛魔女で、あなたを守れなかったことをくやんでいる、任を解かれた後も一人で暴走してきっと解決しようとしているのよ、その、彼女は行方知れずなの、そんな彼女が傷つき多くの人間が傷つき、場合によっては死ぬ予知夢を、私は最近みたの、そこでお願いなの、もし君が許すなら、私たちを助けて頂戴、こんな事をいうのは問題だけれど無理はしなくていい、ただ君の事を恨む人間や君の周囲の人間を恨む人間がいるならその人を少し説得するだけでいい、魔女の原動力は“恨み”だから」


「どうしたの?」

母親が入ってくる瞬間、デザは手紙をせなかに隠した。手紙の包にもうひとつ髪がはいっていて紐も同封されていた、その紐は“一日だけ患部を保護する”とかいてある、けれど強い痛みには“一度”しか耐えられないとあった。デザは生唾をのんで、その手紙や記憶について考えるのだった。


 リーヌとロズ刑事は、“現場”へと向かう。というのも実はすでにカルナとリーヌはカルナが見た予知夢からその“魔女災害”の現場となる場所へ当たりをつけていた。ロズ刑事は、リーヌの行動や決定に寛容だったし協力的だった。

 「上はせっついてくる、魔女であれ、人間に危害を加えるものはもしもの場合、即座に殺してしまえと、けどあんたに考えがあるなら、最後までその手をとっておく」

 パトカーも自分たちがついたあとに到着する予定だった。包囲の準備は完全に整っていた。

 

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