早朝。
ガサゴソと音がして、カルナは目を覚ます。敵の拠点でぐっすり眠る自分も相当肝が据わっているとおもったが、敵も敵でカルナを受け入れている。そんなことはおいておいて、様子をみる。キャンプをひとつかりて眠っていたのでその入り口から外を見ると、二人の魔女が言い合いをしているのをみた。
「だから、やるっていってるでしょ」
「この状況からどうやって実行するのよ、あなたには破壊の才能しかないの?師匠は、もっとあなたを賢く育てたはずよ」
姉弟子ピロアとグルトが喧嘩をしているようだった。
「複製はうまくいったのよ、これで、開ける」
「ちょっとまって!!どこを開くの」
「西ゲートが一番手薄のはず、それに、カルナにも確認したわ」
そのやり取りをみて、カルナはニヤリと不敵な笑みを見せた。
「何をしているの」
衣服をととのえて、髪をととのえながらわざとらしくキャンプからでていくカルナ。
「いや、なんでもない」
「この子は、魔法回廊鍵の複製をつくったのよ、それでもうこじ開けようと」
「おい、襲撃なんて今するわけないだろ、あんたの言う通り師匠の恨みを晴らそうとしているのに、何てことを」
「!?魔法回廊鍵の複製?そんな技術あなたたちにあるというの!?」
二人は黙りこくってしまった。
「それで、何をするつもりなの?私も興味があるわ」
カルナがにやりと笑うと二人は顔を見合わせてみせた。
「ただの“テスト”よ、鍵はいくつか用意した、あんたが決闘に負けても、もし希星魔女院の人間がかけつけたりあんた自身が私たちを裏切らないとも限らないから」
グルトはそういいながら、カルナとピロアの目の前で、鍵は思い切り空間を縦に引き裂いた。こちらとは違う景色が空間の裂け目の扉となって向こう側を描写する。縦にさかれているのですべてが見えるわけではないが、自然の景色がみえ、どうやら本当に魔女界へとつながったように思えた。
「えっ」
「西ゲートへつないだ、あんたが入ってみて、カルナ、罠があるといけないから」
カルナは少し考えた。というのも、もしゲートの前に守衛がいた場合自分が入ってごまかしたほうが都合がいい。あの手紙を残した以上早ければすでに西ゲートは、守りが固められているかもしれない、そうなると言い訳がたたなくなる。
「……まあ、うん」
カルナは二人の様子をみながら、疑われないようにふるまうにはそれしかないと考え彼らがうながすままに、その中に入る事を承諾したのだった。ごくりと生唾をのみ一息ついてから、空間の裂け目に手をかけ、ぐっとあけ、勢いよくくぐった。
「ふっ……!!!?」
その外の景色を見た瞬間、カルナはそこに入ったことを後悔した。ゲートは閉じられ、その代わりに、魔女グルトが呪文を唱える声をきいた。
「ホマアネモイ!!」
カルナがくぐった裂け目の先、そこにはさびれた廃墟と大自然がひろがっていた。だが廃墟、その建造物は人間がつくったものでどう見ても魔女世界の構造物ではなかった。カルナはさとった、“騙された!!”次の瞬間、背後から突風がふき、カルナは廃墟の一階をつきぬけて屋内へ突き飛ばされた。
「うわあああああ!!」
すかさずグルトはまたも術を詠唱すると、廃墟は勢いよ崩れ去るのだった。
「あははは!!ははは!!」
断末魔をかき消すようにとじていく魔法回廊。
「あんた、どこまで非道なのよ」
ピロアは怒って、グルトを突き飛ばしたが、グルトはにやにやとするばかりだった。魔女ピロアは、あきれたようにして、その場をあとにしようとする。
「どこへいく」
「あんたの命令に従えばいいんでしょ、あとは自由にする、あんたには付き合ってられないわ」
「おい!!」
魔女グルトは、苦い顔をしながらもつめをかみ、にやりと笑った。
「これで“私たち”のすきにできるわね、クレイ?」
その瞬間、魔女グルトの腹部がブクブクと膨れ上がり不気味な笑い声を立てたのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます