二人の魔女
カルナはその廃墟となった建物の下敷きになっていた。この周囲にはだれもおらず、物音ひとつない。身動きがとれず、そのせいで自分の行いや失敗をあれこれと考え続けていた。記憶はあいまいだが確か小さな頃自分が行方不明となっていた間にも長いこと孤独を感じた気がする。けれどそれを感じる旅に人間の存在を感じていたようだ。きっとあの森の中、人間の大人が何かをしている間寂しさを感じ、自分の相手をしている間、ぬくもりを感じたのだろう、そこで彼女はデザの顔を思い浮かべた。
「あの子のひとなつっこさや、偏見のない感じは、あの人間ににている」
ぼんやりとつぶやく、その瞬間、重苦しい柱や建物の下敷きになり、息も絶え絶えだったが、腹部の奥底から何か力が沸き上がるのを感じた。
「う、うう!!」
グググと、建物を押す。体が白く発光しその力をつよめていき、どういう原理か、自分の上のがれきをついに軽くふきとばしてしまった。
「うっ」
立ち上がると同時に体中に痛みを感じ、膝や肩、腹部に出血を確認して、魔法ですぐに応急処置をした。そして、魔法回廊鍵を手に取ったのだった。
「一度しか使えないけれど、ちょうどいい」
一方、魔女グルトは、ボロボロの四角い廃墟とその隣に廃棄物処理場らしき場所にたどり着いた。それはカルナが最初に見た夢と同じ景色だった。グルトは仮面をつけた怒った仮面、おどけた仮面、泣き顔の仮面の三人組がグルトの指示のもと、夫妻を車からひっぱりだした。夫妻は正座の状態で手足をしばられ、その場に放置された。グルトがごそごそとバンの後ろを探り、夫妻の前に現れた。
夫 「何を……」
グルト「何って、今、斧をとりだしたのさ」
妻 「まさか!!あなた」
グルト「お前たちは長い事弟をいじめてきた、その罰を下す」
夫 「ちょっとまて、私たちはそのことでお前に謝ろうとしていた、何の気もないふりをしていたが、深い後悔をしていたのだ、あの子にも謝りたい、お願いだ、話を」
妻 「そうよ、グルト!!ちょっとまって」
グルト「……うるさい!!!」
グルトは斧を勢いよくふりかぶり、ふりさげた。その斧が首の間近に迫った瞬間、真横から何かに斧が勢いよく吹き飛ばされた。
グルト「くっ」
よく確認すると、斧の周囲には水がとびちっており、斧を吹き飛ばすようなその勢いからグルトは何らかの水魔法を使った人間がいるのだとすぐにさとった。その通りで、すぐ傍にはリーヌが立っており、後ろに刑事と車が控えていた。
リーヌ 「そこまでよ、魔女グルト!!」
リーヌはすぐさまグルトの脇へと入り、水で両手に双剣を作りあげた。その剣は刃の部分がいきおいよく回転しており、きりつけるとグルトの衣服をきりさいて腹部にキズをあたえた。
グルト「クソが!!!邪魔しやがって、今日はあの子の復讐祭だ!!!」
リーヌ「知るか!!クソビッチ!!」
グルトは先ほど吹き飛ばされた斧に気づき、リーヌの攻撃をかわしながらそれを魔法の風で巻き上げ、右手にとり、リーヌの腹部をきりさいた。リーヌは右手の剣を高圧噴射の水に変えて軌道をかえ、のけぞりつつなんとか攻撃をかわしたのだった。
「今だ!!あんたと戦っている暇はないんでね!!」
そういうとグルトは、こう叫んだ。地面をみるといつのまにか札があちこちにはりつけられており光を放っていた。
「魔法風結界!!」
次の瞬間、グルトとリーヌの間、グルトの周囲半径5メートルほどをかこうように、巨大な風の柱が生成されるのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます