第25話

 デザ・ロアは病院のベッドで目を覚ます。右腕に重く鈍い痛みが走る。あたりを見渡し、体中の痛みを感じたあとに、彼はこれまでの記憶を取り戻していくのだった。

 「そうか、俺、落ちたのか……あの高さから」

 しばらくすると目が覚めたのにきがついて、看護師がやってきて、医者をよんできた。医者がいうには、右腕を骨折しているもののあの高さからすると奇跡的な軽傷ですんだのだという。次にしばらくして警察がやってくる。50代くらいの男の人で、“ガルド警部”となのった

 「これからは私たちもバックアップします、ここまでの被害がでたのに警察が何もしないわけにはいかない、護衛魔女も責任をとって交代したようですし」

 「え!?」

 無理やり上半身を起こす。

 「カルナさんは、別にカルナさんのせいでは……」

 「ああ、今までの護衛魔女さんですか、確かそういう名前でしたねえ、どうやら、自分から変えてほしいといいだしたらしいですよ、まあここまで被害を出したら元々、希星魔女院も責任を取らさざるを得なかったでしょう」

 「そんな……」

 ボフッ、とベッドに倒れる。刑事はあまりにアグレッシブに動くので右腕の心配をしていたが、数秒ごとに訪れる鈍い痛み以外は大した問題は感じなかった。


 夕方になり母親がやってきた。ストレートに、後方に髪飾り。いつも何かにおびえたような悲しい表情をしている。母親は絵本作家をしているが、父が死んだあと、重度の鬱にもかかっている。父は莫大な遺産を残して他界した。おかげでデザは何不自由なく生活ができているが、むしろ心配なのは母の方である。  

 「デザ……」

 「母さん……」

 無言で抱き合う。母は涙する。

 「デザ、こんな事になるなんて、どうして教えてくれなかったの……」

 「母さん、でも、心配してほしくなくて」

 「あなたまで失ったら私、生きていけない、もう二度と勝手にあの人たちと関わらないで」

 「あの人たちって……」

 「魔女よ!!」

 母がそう叫んだのと同時に、病室の外側で魔女リーヌは、首をすくめた。

 

 次の日、その病室への訪問者は母だけだった。あまりにも静寂、あまりにも退屈でその一日は、何日にも何十日にも感じられたのだった。


 魔女カルナが猫の面をつけ、ネットカフェのような場所で、コクリコクリ、船を編む。そして今夢の中へ今侵入した。カルナは布切れを握って眠っていて、意識は勢いよくその布切れの持ち主の傍へと転送される。魔法陣が空中に現れ、廃拠点の場所へ、魔女カルナは夢の中で転送された。その気配を感じ、何やら、夢の中で魔導書を読んでいたらしき、魔女が後ろ姿をみせながらたちあがり振り返った。 

グルト 「あなた……しつこいわね、担当を外されたんでしょう?」

カルナ 「……」

 カルナは何もいわず、彼らの拠点の前にたっていた。起きているのは(現実で寝ている)のは、魔女グルトだけのようだった。


 「魔女グルト、あなたと取引をしたい」

 魔女グルトは、カルナをじっとみつめて、吹き出すようにわらった。

 「何の取引を?」

 「私たちの希星魔女院を襲う計画があるといったわね、そして人間の世界を」

 「ええ、復讐するのよ」

 「私がいけにえになるわ、私が人間の世界の代弁者になる、私は一人であなたと戦う、その代わり、人間の世界に手をださないで」

 魔女グルトは、肩を震わせ、徐々にその高ぶりを大きくしやがて口から大声でゲラゲラと吹き出しながら笑った。

 「あなた、希星魔女院すら敵に回すつもり?」

 カルナは笑われながらもうつむきながら、それでも真面目にグルトをにらめつけるのだった。

 「わかった、今度はあなた一人でくるのよ、じゃないと本当に殺すから、全部、全部殺すわ」

 「わかってる、だからお願いだから、人間は巻き込まないでね」

 魔女はニヤリと微笑んだ。

 「人間、人間!!?そうね、なるべくそうするわね、けれどあなたも大変ね、あんな下等な人間に同情するなんて、魔女はもともと、信仰や正義、善意を共有できない存在、だからそれぞれの人間に対する感情には隔たりがある、かといってあなたほど人間という存在に憧れている人はいないでしょうね、魔女カルナ、人間のために、世界を亡ぼしかけた人……」

 魔女カルナは、こぶしをにぎって下を向くのだった。

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