第21話 洗脳

二人の魔女が、廃墟の中でもめていた。目隠しをされくちをしばられて椅子にしばりつけられ、がたがたと椅子をゆらしうめく男がいた。エージェントのグインである。年上らしき、たれ目の少し髪にウェーブのかかった巻き髪の女性がいう。

 「グルトどうするんだよ、こんな男さらって、私に協力させたな!!」

 「大丈夫だ、ピロア、“DBC”(※Double Bind Control)を使う」

 「!?あんたまさか、あいつら、手下をカルトに仕立て上げるのか」

 「ああ、いずれ時がくればWIW(※Witch in the Witch)を使うつもりだ」

 「ちょっとまて、私たちの作戦は、“希星魔女院”へ抵抗を示すものではなかったのか、あれは“禁忌”の魔術だ」

 暗がりへ明かりが差し込み、魔女グルトの顔を照らした。

 「私は、弟の復讐をしたいだけだ!!それができたら、あとはどうなってもいい!!何がどうなっても」

 「おい、私は……お前の姉弟子だぞ……師匠の恨みを晴らす、お前に協力したなら、必ずそれを手伝えよ、今までどれだけ協力したとおもってる」

 姉弟子のピロアは、グルトの胸倉をつかんで、脅すようにいった。

 「ああ、わかってる!」

 そういいながら、興奮した顔を隠すように、魔女グルトはその場をあとにした。

簡素な間仕切りをくぐると、仮面をした手下たちが待ち構えていた。手下は三人。 魔女グルトは早速、手下を支配する準備に入った。手下1は、泣いたような仮面をつけており、2と3は怒った面とおどけた面をつけている。


グルト 「このリンゴはどう見える?」

手下1 「!?」

手下2、3「ただのリンゴですが」

 

 グルトはムチをふるって手下2と3を殴った。


グルト 「“私たちの関係の中では”リンゴの定義は私が決める、私の気分でこれはよいリンゴであり、悪いリンゴでもある、お前たちはその私の気持ちを知ることをしなければいけないし、私にいちいち問わなければならないのだ、わかったか」


手下1が問う「では、これは今どのようなリンゴなのですか?」


グルトはすかさず、ムチをふるった。

      「だれが、私に質問していいといった」

手下1   「今、グルト様が……」

      「それは私の気分が許す時だ、お前たちは人の気持ちや気分を感じ取ることもできないのか」

一同   「……」

グルト  「つまり、私こそが絶対なのだ、覚えておけ、この矛盾や理不尽をお前たちに要求することができるのは、私が絶対的な存在だからだ、なぜかわかるか?」

手下2 「い、いえ……」

グルト 「ふっ、簡単じゃないか、お前たちと私の契約をわすれたか、私たちは“トールズ”を恨むもの同士、お前たちの願いをかなえるために私はなんだってする、さあ、私の傍にこい」

 そういってグルトは三人の手下をだきよせて、抱きしめるのだった。そうしたあとに彼女は自分のしっぽを自分でくらう蛇と傍らの魔術師の紋章を面のおでこにかいた。

 「私たちは家族だ、この怒りを共有し、敵を倒そう」


 間仕切りの向こう、グルトの姉弟子ピロアは誰に言うでもなくつぶやいた。

 「クソカルト、気持ち悪い」

 

 その夜、手下1は夢をみていた。かつてトールズにいじめられていた時の夢、それでも助け合った友人がいた。だが彼は、トールズの苛烈ないじめと分断の策略にはまり、居場所を失い、転校していった。それどころか、彼がどうなったか、今は思い出したくもなかった。だがその夢の先で、彼女が、魔女グルトが彼をだきしめ、おっして彼のいなくなった親友を取り戻してくれる、そんな夢を見た。もうここのところずっと見ていた夢を。

 

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