第18話
デザの通うアルファ高校一年の教室。デザのクラスは数学の授業を受けていたが、デザはふと背筋に妙な感覚を覚え、黒板から目を離し外を見た。
「おい、何みてるんだ外なんか」
「いえ」
運悪くその瞬間を教師に見られ注意をうける。デザは嫌な予感がしたが、ぼーっとするのもあれなので、教科書に目を戻した。その数分後、目を離したすきに、窓際で、窓のあいていない教室の内側で、つむじ風が巻き起こった。小さな小さなつむじ風は、次第に大きくなり、窓がガタガタ言い始めると、生徒たちも気づいて、教師が叫んだ。
「窓から離れろ、突風だ!!」
デザの教室の窓ガラスが破られ、やがて、巨大なつむじかぜがグラウンドに立ちあがると、その勢いでいくつかの校舎の窓ガラスがわれた。旋風はそれでも勢いをとめず、やがてその中央に影が現れたかと思うとその中に現れたのは古来の格好をした魔女だとわかった。
「フフフ、フフフフ、突風よ、巻き上げよ、あらゆるものを」
その頃、デザの教室では、教科書や、筆記具様々なものが突風にすいこまれたが、ついには人が、がその竜巻に吸い込まれようとしていた。しかし、生徒たちはお互いをがっしりつかんで飛ばされないように持ちこたえていた。どうやらデザの教室が一番突風の勢いが強いらしく隣の教室からも、生徒たちがかけつけ、このクラスの生徒たちを助けようと叫んでいた。
「みんな、しっかりつかんで、お互いを離さないで!!」
一瞬、突風がやんだかにおもえた、寂しげに浮かぶグラウンドの魔女も、笑い声をとめた。デザがつぶやく
「おわった?」
しかしやがて、今度は教室の中で横向きに突風がおこる、まるで狙いを定めたかのように、しだいにデザに風が集中し始めた。デザが叫ぶ。
「あああ!!なんで!!」
友人や教師が、廊下の壁から手を伸ばし彼をつなぎとめようとする。
「ぐう、助け……助けて、カルナ……」
「デザ!!!」
「デザ君!!」
まるで彼だけを包み込むようにした風が彼を、仲間から引きはがした。デザは窓際から外に引きずりだされ、ふっと、ふきとばされ地面へ落下するかと思われた瞬間、旋風の回転にに巻き込まれ、デザは、中央の人影のほうに吸い寄せられていった。断末魔のようなものを残して。
「うわあああ!!」
教師がつぶやく。
「まさか……魔法災害か」
旋風の中央で人影がわらった。
「くくく、くくく、はははは!!」
その頃カルナは、直観的に嫌なものを感じ、カメンムシでスマホをとる、その直後魔法災害警報がなった。
「災害級魔法発生、災害級魔法発生、場所はウィーカ特別区AG街、アルファ高等学校」
「!!??デザの学校じゃない」
カルナは、急いで学校へと向かった。
つむじ風は止まる事をしらず、しかしグラウンドの中央へまとまったので、生徒たちは窓際から野次馬のようにみていた。なかにはデザの名前を叫んだり、魔女を侮蔑するものもいた。
「彼を離せ」
「汚い魔女め!」
その時だった。別の魔女が校内に侵入してきたのは。
「おそかったじゃないか、魔女カルナ」
カルナの表情は怒りに満ちていた。人間に手を出したこと、あるいは自分に対する怒りだったか。さきほどまで、高校の巡回をしていたが、警備のスキをつかれた。
「魔女グルト!!!その子を離せ」
「く、くははは、いいよ、けどさ、その前に、私と遊んでねえ―」
そういうと竜巻を操り、いくつかの人型の竜巻をつくった。それらは勢いよくかけだし、カルナの方にむかっていった。
「術を唱える暇も与えないよ!」
また別の場所では、魔女グルトの姉弟子ピロアの監視をしていたリーヌが、一瞬地下への階段の途中で、彼女の姿を見失った。
(まさか)
と思った。というのも、その場所は彼女と親しいエージェントグインの拠点の近く。急いでその場所にかけつけ、中に入る。するとまるで強盗が入ったように室内が荒らされている。彼の会社の社員がいたので、話しかけると、社員はおびえたようにこういった。
「いま、今魔女が、グインさんをさらっていきました」
「チッ」
リーヌは、一足遅かったことを後悔した。これで彼らを捕まえる口実はできたがそれより親友の身の安全が気がかりだった。
一方アルファ高校のグラウンドでは、魔女カルナとつむじ風の人型との闘いが繰り広げられていた。しかしその様子は一方的なものだった。カルナが格闘技のようにてを伸ばし平手でまっすぐ相手を突き飛ばすと、一瞬でその風が消えうせる。
「!!?」
驚く魔女グルト。
(魔法陣も書かずに魔術を?まさか……)
「まさか、オリジン使いだったとはな、魔女カルナ!!」
その駆け引きは何度も行われ、数十体ほどの人型のつむじ風を破壊しつくしたあと、魔女が叫んだ。
「この術でどうだ、いくらあんたでも、この大きさは堪えるだろう!!ははっは!!」
グルトは数倍大きなつむじ風の人影をつくる。そのたけ3メートルほど、巨人といってさしつかえないつむじ風が、ゴウゴウと音をたてカルナに襲い掛かる。
「うわ!!!あああ」
突進してきた巨人、両手を広げた巨人に、カルナは抱きかかえられ、やがてその胴体に飲み込まれていってしまった。風の中で巻き上げられた埃や木の葉、枝で体中傷だらけになる。
「魔女さんが!!」
「まずい!!」
ギャラリーの心配の声をあげた。しばらくの沈黙が訪れ、その後人型の巨大な竜巻は動きをとめた。
「だめか?」
「魔女さん!!」
その時だった、魔女カルナの手が竜巻をつきぬけ、何かを手につかんだ。瞬間、巨大な人型を含むすべてのつむじ風がグラウンドから消え去った。
「術の源、魔術札を掴んだわ、私の勝ちね、魔女グルト」
そういうと、傷とヨゴレで私服がぼろぼろになったカルナは、微笑んだ。手の中にあったのはこの術の心臓部となる魔法陣の描かれた札だった。つむじ風を失った魔女が、自分の周りだけ風をおこして、するりとグラウンドにおりたった。
「チッ、魔女カルナ、やるわね」
「その子を離して、私が変わりになるから」
デザは意識をうしなっていた、魔女にそう呼びかけると、むしろグルトはきょとんとしてこう返してきた。
「いいよ、無条件で返す」
「は?」
カルナは唖然とした。
「もともとこっちが目的ではないからな、グインというエージェント、彼をもらった。私の《姉弟子》がさらったよ」
「!?それは、姉さんの大事な人よ、なんでその人を!!!」
そうカルナが叫ぶと、逆にそれより大声で、魔女グルトは叫び返してきた。
「お前たちが、約束を破ったからだ!!」
「!?」
約束といえば、夢でしたあの約束の事だろうか。落ち着いてカルナは問うた。
「どういう事?」
「少女が私の後ろをついてきた、あらかたホウキの欠片でもつかったのだろう、そうでなければ、変装している私が魔女とばれるわけがなかった、私の事を付け回したのよ、あなたたち取引のこと誰かに話したでしょう、この子だって、あなたの“仕事”に利用しているのだから、人間を利用して、何かたくらんでいるのね」
「そんな、私は何も……」
二人がそう話していると、デザが目を覚ました。
「う、うう……」
起き上がり、一人で立とうとするデザに、なぜかグルトは優しく微笑みかけて、こういうのだった。
「デザ、希星魔女院は本当に人々の味方かしら?君と彼女の契約は本当に信頼にたるものなの?本当に……」
「妙な事いわないで!!」
「??」
デザは二人の会話もぼんやりとした意識でききとり、カルナのほうにあるいていき、また意識をうしない、ばたんと彼女に倒れかかった。カルナが彼を抱え、前方に目を向けるとすでに魔女グルトの姿は消えうせていた。
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