第15話

あくる日、下校途中のデザ。いつものコンビニによろうと垣根のわきを通った瞬間、死角から勢いよく何かが降りかかってきた。

 「何だ?これ」

 服についたそれを払う、ザラザラしていて、薄茶色の汚れが一部しみついたどうやらただの砂のようだった。

 「ギャッハッハ」

 「砂……おい、ってトールズか」

 影から現れたのは、調子ずいてニコニコ笑うトールズだった。小さなスコップをてに、そのスコップの中には、あまった砂が微量にのこっていた。

 「トールズ、子供かよ、砂ふりかけるなんて」 

 「悪かったって、なんか菓子でもおごるからさ、それにもう帰りだろ」

 半ば無理やりに、デザと腕をくむ、ソフトモヒカンの頭と細い眼が、いかにも不良といったいでたちとマッチしていた。トールズがいつもの取り巻き連中二人に声をかける。

 「おう、お前らもういいぞ」

 「ああ、じゃあな」

 「またな」

 取り巻き二人がスコップとバケツをもって、颯爽とさっていく、しばらくトールズとデザと距離をとると、二人はこんなことを話ながらさっていく。

 「なあ、トールズのやつ、ちょっとやりすぎじゃないか、友達に砂かけるなんて」

 「確かになあ、よくわかんないよな」


 デザは不機嫌な顔をしつつも、トールズが驕るというので一緒につれそいながらコンビニのドアをあけて中にはいった。

トールズ「本当に悪かった、ちょっと冗談としてもやりすぎたよ」

デザ 「いや、それは別にいいんだよ」

トールズ「俺だって機嫌わるいんだぜ、この前、お前に獲物を邪魔されてさ、ていうか、じゃあなんで不機嫌なんだよ、こっちだってあの時邪魔されて……」

デザ 「この前のこと、あれ俺の知り合いなんだよ」

トールズ「……あれって、いじめられっ子?」

 デザは首をふる。

デザ「この前、コンビニの前にお姉さんがいただろ」

トールズ「……あ、ははっ、なんだそんなことか、お前人の事できれてたのか」

デザ「まあ、お姉さんはとめはしなかったけどさ、女性にまで辛く当たることはないだろう、もうああいうことはやめた方がいいんじゃないか、お前だって」

トールズ「はあ?なんでお前にそんなこといわれなきゃいけないんだよ」

 ふう、とため息をつき、トールズの襟をかるくさわり、正面きってデザは彼に文句をいおうとした。その手は少し震えていることに自分も気づいていた。彼は、不良になってしまったが、それでも友人だったのだ。喧嘩はなるべくしたくないし、そもそも、険悪なムードが得意ではないのだ。父親に凄まれたり、同性に強くいわれるとひるんでしまう、いつ手が出るかとトラウマがよみがえる。たとえ、相手が間違っていたとしても親しい人間にいきなり殴られると、黙らざるを得ない。

デザ 「なんでお前こんな悪い奴になっちまったんだ」

トールズ「はあ?悪いことなんてさんざん一緒にしただろ、むしろお前が、このチキンレースは、お前がもとで始めたんだ、お前がもとで、どれだけ悪いことをするか、どれだけ、根性をみせるか、それで俺は……強くなったんだ」

デザ 「ああ、けど限度ってものがある、ここまでやんなくてもよかったし、もうそろそろ大人になるべきだ」

トールズ「限度?そんなものどこにあるってんだ」

デザ「いままでいわなかったが、なんでいじめをするようになった、お前さ、もともといじめ……」

 そのとき、トールズがデザの腕をいきおいよくつかんだ。

トールズ「おい、二度と口にするな」

 つかんだ腕をふりはらい、その場をあとにするトールズ、コンビニの出口をいき、駐車場へ向かう。そこまでは普通の光景だった。だがトールズが、車道を横断しようとしたときから、デザはトールズの奇妙な行動と、その不思議な力におどろいた。

 「何?」

 高速で移動する車、横断歩道のない道を、トールズは一切左右に目もくれずつっきった。

 「危ない!!」

 思わず声がでたが、どの車もトールズの前でとまりはしなかった。だがトールズはそれらをすべてよけて、車道を渡り切ったのだった。住んでのところで、すごい反射神経で、すべての車をよけて。まるでトールズが影になって、トールズを車がすりぬけていったような光景だった。

 「いくらなんでも、あれは……」

 デザの頭をふと、ある言葉がよみがえる。“協力者”“魔法災害は人間の協力な恨みや妬みをもとに引き起こされる”“その鍵が魔女の協力者”

 「トールズ、あいつもしかして……あいつが、俺の元にくる“災害”のトリガー?」


 デザは、下校の寄り道を急いではしった。早く、あの魔女に、今の事実を伝えなければ。まるで走馬灯のように、彼との記憶がよみがえる。小学生の頃、デザは家に居場所がなく父親の影響で乱暴で、人を寄せ付けなかった。いじめはしなかったがまるでいまのトールズのように粗暴ではあった。そんな彼が初めに仲間にしようとしたのが、あの彼、トールズだった。トールズは自分と同じように学校に居場所がなさそうで、同じように過激で暴力的な父親をもっていて、よく体にあざをつけてきた。それが普通だったトールズにとっては上級生からのいじめも普通だったのだろう。学校の裏番長のような、我が物顔した不良がいて、彼らには手を焼いていた教師も、彼らのいじめや窃盗など素行の悪さを時にみてみぬふりだった。トールズは彼らにめをつけられよくよびだされてはからかわれたり殴られたりしていた。そんな様子をみかねていた彼はある日、デザは彼をいじめる上級生の群れを屋上によびだし、正面からむかっていき文句をいった。トールズが大事にしていた筆記具を上級生がとろうとしているのをみて、弱い物からものを奪うことが許せなかったのだ。

 「彼からとったものをすぐに返せ!!」

 すぐに喧嘩に発展したが柔道をならっていたデザにとっては敵はそれほどつよくなかった。すべての敵を薙ぎ払い、なぎ倒す、何度向かってきて、綺麗に力を受け流し、地面に払い落とすので不良たちも精魂つきて、諦めてさっていった。あの時は、とにかくこのまま見て見ぬふりをしちゃいけないとおもったし、心のそこから勇気がわいてきて、今こそ力をつかうべきだともおもった。そしてトールズ、彼をいじめから救いだしたあと、それでも彼はもうしわけそうになっていた。

 「大丈夫?デザ君」

 「ああ、心配するな」

 「うん、ごめん」

 謝るばかりの彼にいたたまれなく、こう切り出したのだ。

 「もう謝るな、俺が戦い方をおしえてやる、今日から友達になろう、あいつらより強く、この学校を支配してしまえば、もう怖いものなんてないさ」


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