14

 夢は遷移し、夢の主グルトは成長し、今は目的をもって人間の社会に紛れ込んでいた。つい最近の記憶のようだった、グルトは、フードをかぶり、サングラスをして、仮面をした人間にあっていた。薄明かりの高架下、奇妙な仮面で、無表情なロボットのようなほりと、わずかばかりの装飾のつけられた仮面。

 「気を付けて、尾行はないでしょうね」

 「大丈夫、だと思う」

 「ああ」

 「思うって、あなたたち、これだから人間は」

 やがて、キツネと猫は二人の協力者のそば近づく。

カルナ(協力者は人間だ!音をさせないように、慎重に)

キツネ面(わかってる、近づこう、これは重要なヒントだ)

 協力者の人間は、一人は背丈が小さく、一人は大人らしい。

カルナ (慎重に、慎重に)

キツネ面(!!)

 その時キツネ面が小枝をふみつけ、音がした。

グルト 「何?」

小男  「何でしょう」

大人  「たしかめてこようか?」

 しばらくすると大人が、こちらにちかよってきたが。カルナとキツネ面は、大きな木と茂みの中に背を向け体制をひくくして、呼吸をしずめてなんとかのりきった。

大人 「何もいないようでした、動物か何かでしょう」

グルト「まったく」

カルナ (ふう、よかった)

キツネ面(ごめん)

 しかし、おちついたとおもった次の瞬間、ふっと背後から気配がする。寒気がして、鳥肌が立って振り向く、同時にキツネ面もふりむいた。そこに一人の、魔女の格好の女がたっていた。

 「えっ?」

 「魔女、グルト?なんで後ろに」

 見覚えのある顔、少女だったころの面影のある、釣り目の整った顔の夢の主―グルト―がいた。ふりかえり高架下をみると、確かにそこにも先ほどと同様に、フードをつけたグルトがいる。

カルナ「グルトが、二人」

グルト「簡単よ、それは私の夢だから、あれは過去の映像、それよりあなたたち侵入者、でしょ?」

キツネ面 「!!」

カルナ  「しまった、罠だ、相手は何かしらの魔術をつかって夢にはいった!!危ない、呪文をといて、意識を戻そう!!」

キツネ面 「ああ、すぐに抜け出そう、今回は失敗だ、夢にとりこまれる――」

 そういった二人の前で大きく両手をひろげて、魔女は大声で叫んだ。

グルト「待って」

 夢の主は大げさに来訪者に頭をさげ、それにあわせて手も弧を描く。

グルト「歓迎するわ、魔女カルナ、それに……だれかわからないけれど、リスクは承知しているけれどお互い様よね、あなたたちに取引があるの……ヒヒイロ水晶を譲って」


キツネ面「!!??」

カルナ 「それは、希星魔女院の封印された宝の一つよ、そんな大切なもの」

グルト 「ただでとは言わない、ちゃんと返すし、あれらの“秘宝”はそんな簡単に壊れはしない、こうしましょう、あなたたちはソレを私に持ってくる、その代わりあなたたちの前で“災害魔術”は行わない、ただし、私たち意外だれも知らせないこと、そうでなければ交渉はなしよ、あなたは友人を守れる、あら?……ちょっとまって?もしかして……その仮面のしたは人間じゃないでしょうね、キツネさん」


カルナ 「ふ!!ふう!」

キツネ面「あぶなかった」

 その夢から抜け出し、暗がりで目を覚ます二人、カルナはふと、仮面をはずして物思いにふけった。


 その翌日の夕暮れ時。陶器のような白い肌と長いまつげ黒髪に青い瞳の少女が歩道をあるいていた、さびれた商店街の端に、その店はある。彼女が便利屋兼万事屋カメンムシだ。入口で周囲をキョロキョロみわたす。

 「ここよね、最近デザが通っているお店って、ここのひとって魔女って噂があるのよね」

 少女は、カルナの幼馴染件思い人のリサである。中を覗いて、扉に手をかけようとする。しかしガラスの向こうでは顔の見えない男女が奥からでてきて、何か身振り手振りをまじえて、楽しく話しているようだった。

  (あやしい、女の勘がそう告げている)

  「一人はもしかするとデザ君?誰と会話しているのかしら?」

 しばらくすると話をおえ、こちらにむかってくる、盗み聞き気していたのがばれてはまずいと距離をとる、店のドアがあいた。なぜかとっさに体を建物の横に隠してしまった。ちょうど反対方向にあるいていったので、その状態をみられずにすんで、ほっとした。

  「しまった、なぜ体を隠す必要があるのかしら?」

 しかし、遠巻きに二人の姿をみるにやはり一人は学生服姿、下校中のデザだった。急いで体をかくしたので、もう一人がだれかはわからなかった。デザは、もう一人より遅れてでて、机の上にあった棒切れをポケットにいれて外に出たのが見えた。リサは、悪いとは思いつつも、中にはいり、机の上をみて、その棒きれをてにとった。

 「もしかしたら、これは魔法に関するものなのかも、これがあれば、デザ君を私のものにできるかも!?」


 リーヌはその頃、安アパートの自宅にいた。瓶に入った一輪の花を眺め、過去を回想する。かつて、カルナが犯した罪は、魔女なら誰もがしっている。人間にのめりこみすぎ、だまされて彼女は、一時闇の力が暴走し、災害とまではいわないものの、大きな被害をだした。カルナは、人間に対して優しすぎる。彼女は、カルナと同じような考えを若いころもっていた、人間とうまくやっていけるとか、人間と協力していきようとか、人間に愛をもってせっすればうまくいくとか、その中で、ひっそりと人間を相棒にして、“魔女災害”を止めようと奮闘したこともあった。その日々、それは別に悪いことではなかった。むしろいい記憶、だがその人間は魔女災害に巻き込まれて……。

リーヌは目をとじ、眉間にしわを寄せて、一言呟いた。

 「ダン、人と魔女はどこかで線引きをしなきゃ、そうでしょ」


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