第1話

 とある廃墟に高校生の不良3人組が集まっている。その廃墟はこの街では有名な場所だ。心霊スポットと噂され、様々な幽霊のうわさが聞かれる。彼らは廃墟の中に入ると数十分ほど中を探索したようだった。

 「今日は何かでるかなー」

 「スマホで撮影できたら“本物だな!!”」

 「はい、撮影しますー、今日は“ババア”はでるでしょうかー」

 彼らは中に入り、廃墟をあらしまわった。落書きをしたり、ものを壊したり、騒いでふざけたりした、その後、ものの10分しない程度だろうか、しばらくするとまた彼らはギャーギャーいいながらも入口からでてくる。

 「今日も何もなかったなあー」

 「つまんねー」

 と愚痴をいいながら彼らはその廃墟からたちさっていった。


 数十分後、別の高校生二人組が、廃墟近くのコンビニに通りすがる。丁度そのコンビニの入り口に先ほどの不良高校生たちがたむろしていた。

 「ん?」

 不良の一人が、そのうちの一人に気が付いて、よっと手を挙げて声をかけた。

 「よお、久しぶり!」

 「ああ」

 高校生の一人、短髪できりっとした目をした好青年が不良の一人に呼び止められた、好青年はそちらの様子を見ている。その後もたむろして話し込んでいたがしばらくたって、不良の一人がこちらにかけよってきた。

不良「デザ」

青年「あ、ああこんなところで会うなんて、トールズ」

 何やら、二人は知り合いで仲良かったらしく、しかし青年二人組のもう一人は関わりづらいような拒むような表情をして眉をよせた。知り合いらしきこの青年もなんだかたどたどしい感じで、冗談をいわれ力強く胸を押されたりすると、困った顔をみせるのだった。それでもなんとかやりすごしていたが、青年は二人組の中の居心地が悪いらしい一人の青年の様子を見ると、用事があるとごまかしうまく話しをつけて、一人の青年を先に返した。それからまた彼は不良たちの話に付き合った。同じようにたむろしていると、不良たちが先ほど言った廃墟の話になる。

トールズ 「いなかったなあ“半狂乱ババア”」

仲間二人 「ああ、おしかったなあ、俺たちが真似しただけでさ、つまんなかったぜ」

デザ   「半狂乱ババア?」

トールズ 「ああ、あの廃墟に現れる狂ったババアだ、なんでも昔あそこは精神病院だったらしくてな……いろんな噂があるんだよ」

デザ 「ああ、その話か、そんな噂になってたんだな」

 なんだかんだ話はもりあがり、不良たちが帰る段になって、トールズというデザ青年の知り合いが、別の話を持ち出した。

トールズ 「ああ、そういえば、リサどうしてる?同じ学校だろう?」

デザ   「いや、元気みたいだけどよくしらないな」

トールズ 「またパーティに誘ってみるけどよ、お前からも声かけてみてくれよ」

デザ   「ああ、頑張ってみる」

トールズ 「卒業して、別々になったけど、俺たちまだ、だちだよな……?」

デザ   「……当然だろ」

  トールズをまじまじとみるデザ。トールズの顔は頬にやけどの傷があり、左目にも縦の切り傷がある。目が細くこわもてだ。次に彼は少しうつむいた。彼女の事を考えると、気持ちが揺れるのは彼だけではなく、デザという彼もそうなのだ。それからしばらくして、不良たちを見送ってから一人でコンビニで買った缶ジュースをのみほしていたが、しばらくすると店外の掃除にきていた年配の店員に声をかけられた。

  「お客さんお客さん」

  「はい」

  「こまりますよ、長時間たむろされちゃ、しかもあんな柄の悪い連中にね、噂になってるんですよ、まったく、それにねえ、最近彼らが別の客に絡むんですよ、いや学生にねえ」

  「??はあ、すみません、言っておきます」

  デザはその時まで、トールズの事をあそこまで悪い奴だとは考えていなかったのだった。


 その後、夕焼けも沈む頃になってデザという彼は一人で件の廃墟に歩いていき、しばらく呆然とその前にたっていた。そして一言つぶやいたのだった。

 「またここにいるのか、祖母バアちゃん」

  デザには見えなかった。老婆がその廃墟の奥からこちらを見つめたたずんでいるのが。彼は瞼を閉じる、彼には祖母の姿は見えず、不良たちのように半狂乱になって騒ぐ姿が想像され、悲しい表情を浮かべる。

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