第4話 施設トリアージ

 東日本大震災から4年、高台移転の造成工事で山は切り崩され、被災地域は盛土で嵩上げされ、南三陸町の景観はすっかり変わってしまった。


 復興は着実に進んでいるのだが、それに伴い「震災の風化」や「被災地の風化」が心配されている。

 最も顕著なのは、被災地を訪れる人出の減少である。

 かつての週末には多くのボランティアが被災地を訪れ、昼食時の仮設商店街は身動き取れないほどの混雑ぶりであった。地元に暮らす人間としては、余所から来た人に気を遣って、外食はできるだけ平日にしていた。

 それが最近では、週末でも待ち時間なしで席について、鮨や天ぷらなどをゆったりと味わえるような状況である。


 さらに「風化」は、震災復興への寄付金の減少としても現れた。

 気仙沼市では、被災地での医療の支援を目指すNPOの活動が存続の岐路に立たされている。

 ヘリコプターによる患者搬送などを行ってきたが、経済的な理由で隔週での運航を余儀なくされた。

 毎月寄せられる寄付金が、今では全盛期の50分の1まで減ってしまったからだそうである。

「時間の経過とともに、震災への社会的な関心が薄れてきているのが大きな要因の一つ」と、NPOでは頭を悩ませている。


 そんな「震災の風化」が進むなか、被災地から「施設トリアージ」というシステムが全国へ向けて発信された。

 施設屋上に広げた情報シートをヘリコプターから読み取る情報収集法で、大規模災害などで交通情報網が遮断された際の初期対応に期待される。

 施設の被災状況は情報シートの色で示され、黒は「使用不可」、赤は「損傷大で要応援」、黄は「損傷小で要応援」、緑は「応援不要」の意味である。情報シートには、収容者数や傷病者数、必要物品などもピクトグラフ(絵文字)で示される。

 この「施設トリアージ用情報シート」のうち赤シートと黄シートは、近く販売される予定で準備が進められている。


 空撮に利用されるシステムは、デジタルカメラで撮影する際に、赤外線で上空から情報シートまでの距離も測定できる。

 そのためパソコン上で、情報シートの画像と共に撮影ポイントが地図に記録される。上空二〇〇メートルからの撮影で情報シートの内容が確認できたばかりでなく、周囲の道路状況やヘリポート用の広場の把握なども記録された。

 この空撮用システムを利用すれば、防災ヘリコプターに限らず、災害時に上空を飛ぶマスコミなど民間のヘリコプターからも被災状況の収集が可能であろう。


 全国の民間医療用ヘリコプターの関係者が、この6月には南三陸町へ集まり、「民間医療用ヘリコプター研究会」を立ち上げる予定になっている。

 このイベントの切っ掛けは、民間ヘリコプター広域活用推進協議会が石巻赤十字病院で開催したシンポジウムであった。

 民間医療用ヘリコプター研究会には、福岡のホワイトバード、鹿児島のレッドウイング、沖縄のメッシュ・サポート、そして地元からオールラウンドヘリコプターが参加するであろう。


(20150404)

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