第24話 初めて3人が揃う
「早く着きすぎたかな」
俺は右の頬を軽くかきながら周囲を見渡した。
俺の視界にはちらほらと緑の制服を着た生徒達があった。皆、旭西中学の生徒だ。
俺は毎回、帰りの支度が早い。そのため、俺が1年生専用の昇降口に到着した頃にはわずかな生徒の姿しか見られない。
「なにしてるのよ?たった1人でつまらない顔して」
どうやって時間を潰そうか考えていた。そんな最中、同じく昇降口を訪れたであろう末石さんに声を掛けられた。本日は部活道の服装ではなく、制服姿であった。
「ちょっと人を待っててね。それにしても、そんなにつまらない顔してた」
「そうね。眉を寄せてつまらない顔をしていたわ」
「ははっ。ストレートな言葉を口にするね」
俺は思わず苦笑いを浮かべた。相変わらず、歯に衣着せぬ物言いだった。
だが、これも末石さんの魅力とも捉えられる。見方を変える必要があるけどね。
「あっ!服部君!!どうしたの?昇降口なんかで佇んで?」
末石さんと会話をしていると、たまたま通り掛かった川崎さんが俺に対して元気良く声を掛けた。
川崎さんは末石さんを視認すると、ぴくっとわずかに肩を震わせた。一方、末石さんは胸の前で腕を組んだだけだった。それ以外、大きな反応はなかった。
「どうしたの?」
俺は無意識にいつもの口調で川崎さんに問い掛けた。頭も働かせず視線だけ走らせて。
「う、うん。ち、ちょっとね。今日、こうやって偶然にも会えたんだし。一緒に帰れかな〜って」
川崎さんは決して俺と目を合わせず、両手の人差し指をETのように合わせていた。言葉はまあまあ歯切れが悪かった。
「俺は構わないけど。先客がどうかわからないんだ。だから、まだ一緒に帰れるかはわからないかな」
俺は山田さんの姿を頭に浮かべながら、スムーズに返答した。まだ、山田さんは現れない。トラブルにでも巻き込まれただろうか。それとも、また時岡にしつこく連絡先でも聞かれているのだろうか?
「お、お待たせしました。すいません。遅くになってしまって」
おっ。ようやく来たみたいだ。俺は声だけで理解できた。それに俺に対して敬語で話す人なんて山田さんしか存在しない。
山田さんは俺をゴールにしてランニングペースのスピードで接近中である。
その間、川崎さんは大きく目を見開きながら、わなわなと口元を振動させていた。
一方、末石さんはやれやれといった様子で目を瞑りながら首を何度か左右に振った。
呆れているようにも見えた。
残念ながら、そのシーンは俺の目に入らなかった。なぜなら、俺は迫り来る山田さんにしか注意が向いていなかったから。
過去に戻って帰宅部に入ったら美少女達にモテたのだが 白金豪 @shirogane4869
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