第6話 バレンタイン
バレンタイン当日。
ワクワクしながら材料を買い、友人の家へと向かった。一緒にチョコを作る約束をしていたからだ。早速作り始めるが、今までまともに作ったことがないため、簡単なものにも関わらず苦戦。友人母にアドバイスを貰うことも多々あった。そんな中なんとか完成し、いよいよ!という時だ。
友人母にハートのチョコつければ?と言われ、ハートのチョコを作り付けることにした。
早速つけると、かなり可愛い仕上がりとなり私は満足していた。
渡すために綺麗にラッピングをし、いよいよと向かう。その最中悲劇は起きた。なんと、ハートが割れてしまったのだ。その瞬間、私の中で何か嫌な予感がした。気のせいだと思い直し、チョコをその場で食べ証拠を隠滅し、向かった。
渡すと彼は喜んで受け取ってくれた。が、そこでとんでもないことを口にしたのだ。
「今年、3月に○○に引っ越すんだ。」
私は衝撃だった。何が起こったのか、何を言われたのか。分からなくなり、頭は混乱を極めた。やっとのことで飲み込み、話を聞くと親の仕事の都合との事だった。理解はできたが、その場での納得など到底無理だった。必死にその場での涙をこらえ、泣き顔を見せまいとした。恥ずかしい、と思ったのだろう。ある程度話をしたところでその場を後にしたが、顔が見えなくなった瞬間から再びパニックに陥った。
「どういうこと?え?会えなくなるってこと?」
それもそうだ、ほぼ1ヶ月後に引っ越すと言われて冷静にいられるはずがなかった。パニックになった頭をかかえ、何とか家にたどり着いた。たどり着くまでに冷静になった私は、とにかく泣いた。食欲とわかず、ひたすら泣き続けた。落ち着いたと思っても、彼を思い出すとすぐ涙が出てきた。
そんな中、ふと彼から
「別れるか、続けるか決めて。」
と言われたことを思い出す。
「そうか、会えなくなるんだ、決めなきゃだよね…。」
そう思った。別れたくない、でも別れなければ彼を束縛してしまう。その2つの相反する気持ちが心を揺さぶり続けた。そんな中、ホワイトデーにデートをすると、彼は当たり前のようにお返しのチョコを買いプレゼントしてくれた。
ますますどうすればいいのか分からなかった。別れれば、次に行ける。あっちで好きな人が出来た時、枷にならずにすむ。そう思った。だが、その一方で別れたくない、ずっと一緒にいたい。そう思う気持ちもいた。
私はどうしたいのか。決めなければならない。
彼が引っ越す、その時までに。
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