No.2 - 【REPORT】No.2037-163
No.2037-163
二〇三七年と一六三日目。私は今日も変わることなく滅びの時を待つ広い宇宙の中、あなたが愛した青い星の上で生きている。
彼の真似事ではじめたこの日記も、気が付いたらこんなに長く続けていた。飽きっぽい私のことだからすぐに終わってしまうと思っていたのに。とはいえ、もうこれぐらいしかやることがないというのも事実なわけだから、続いているのも当然と言えば当然なんだろう。
陸地らしい陸地がすべて沈んでしまったこの星は、オブには居心地がいいみたい。いつの間にサルベージしてきた本やデータを復元しては、この星で栄えた文化を片っ端から取り入れてクスクスと笑っている。かと思えば、マイペースに空を翔け巡って遊んでみたり。今日は昼頃にでてきたと思ったら、面白がって見たばかりの映画からセリフを盗んだりしてた。
でも、あと半年とか、そういう大事なことはもう少し丁寧に教えてほしかった。
仮に宇宙のおわりの日に立ち会えるとしたら。あるいは宇宙のはじまりの日に立ち会えるとしたら、あなたなら何を願う? 自分の意志で制御することのできない、さだめられた約束の瞬間が、私は怖い。
この恐怖は、例えばあの時の戦争で感じたものとも、単に死への恐怖ともまるで違う。抗いようがない、努力の仕様がない。ただ、受け入れるしかない。
受け入れる覚悟は出来てる。別に正気を保てなかったわけでもない。でも、死でも生でもない未知の状態に飛び込まなきゃいけないことが、ただただ怖いの。
マコトならどうしたのかしら。もうとっくに未練なんて感情を捨てたはずなのに。あなたにもらった時間を、ずっと持て余してたわけじゃないのに。
ただ、今は逢いたい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます