第12話 れもんティー

孤独の先に何がある?

この問いに対し、明太郎とイトウの答えは違う。

明太郎は、

わからん、と言う。

イトウは、

良くないものが待ってるかもしれない、と言う。


イトウに背中を押されて、

明太郎は美友と一緒に食事に来ていた。

ドルルクと戦った駅、その周辺は安全の為に人が入れないようにしている為、2人は一つ先の駅の近くの喫茶店にいた。

本当はもう少し離れたオシャレな店に行きたかったが、ドルルクが出現する可能性を考えるとこの距離が限界だ。

喫茶店の駐車場には、イトウが用意した車とバイクがあり、イトウは車の運転席で待機している。

ドルルク出現時には状況によって車かバイクかを選び、現場に迎えるようにだ。

イトウは、車の窓を少し開けた。閉めたままでは少し暑い。空いた窓の隙間を見て、ふと呟いた。

「タバコ…吸えればよかったのかな」

割と真面目に生きてきたイトウ。酒は大学や職場の飲み会で多少は飲んでいたが、タバコには一切手をつけてこなかった。

タバコの魅力をわからなかったが、人生で初めて、

今日は口寂しさを感じた。

この小さな窓の隙間から、何かを吐き出せたら、

今より少し息が抜けるのか?

いや、とイトウは言った。

今はきっと吐き出す場合じゃない。

自分の心を見つめ直す時ではないのだ。

今は、ただ、先ほど見送った明太郎と美友が微笑ましい雰囲気で車に戻ってきてくれるのを待つだけだ。上司には怒られるが、最悪2人が車に戻らずタクシーで自分を巻いてくれてもいい。後で、どこにいるとだけ教えてくれれば、こちらもそれなりに見繕うつもりだ。

少なくとも、明太郎1人を乗せる事は、イトウは望んでいない。


ため息になりかけの吐息を吐こうとしたが、

飲み込んだ。

飲み物でも買おう。さっき、近くに自販機があった。社会に出て駆け出しの頃に先輩に奢ってもらった微糖のコーヒー。あれにしよう。

「ブラックなんて、カッコつけんなよイトウ。

お前みたいな奴は、少し甘い方がちょうどいいんだ」

先輩の言葉、未だわかってるつもりで、わかってないような気もする。

明太郎と美友は何を飲んでるんだろうか?

明太郎は…ウーロン茶だろうな。

美友は?

レモンティーとか、飲んでるのかな。

少し微笑んで、イトウは車から降りた。

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