第9話 市道

市道に出た明太郎とイトウ。

そこには、例のドームが道路のど真ん中に出現していた。走っていたトラックや軽自動車がドームにぶつかり、地響きを生み出していたようだ。

幸いにも、まだあの光線は出ていない。

トラックや軽自動車の中の人は無事だろうか?

いや、

「…イトウちゃん」

「はい、救助は任せてください」

明太郎とイトウは走り出した。

明太郎は、ドルルクのもとへ。イトウは、車の運転者達の元へ。

イトウは、「任せました」と言う。

明太郎は吠えて速度を上げた。

どうせ、剥がされることはわかっていたが、

来ていたシャツを走りながら自らで破った。

既にブチギレていた。

怒りに任せるべきではないとはわかっているが、どうしても。

明太郎はドームを当然のように突破し、もちろん服は弾け飛び、パンイチになった明太郎は些か久々のザリガニの化け物の顔面に拳を喰らわせた。

どうしても、怒りの一発を食らわせないと気がすまなかった。

ドルルクはドーム内で吹っ飛び、ドームに叩きつけられた。

「ドルルルルルルルルルク!」

「お前がキレるのは違うだろ」

「ドルルルルルルルルルルルルルルクッッ!!」

ドルルクは立ち上がった。

そして明太郎に向かっていく。

明太郎は深呼吸した。怒りを抑えなければならない。ここからは冷静にいかないと勝てない。

大切なのは、自分がやらねば誰がやる!という

自分を信じる自信。

ゆっくりと目を開け、向かってくるドルルクの軌道を予測し、拳を入れようとした。

しかし、クラブハンマーで弾かれ、反対のクラブハンマーで頰に手強い一撃を食らった。吹っ飛ばされ、ドームに激突する。頭がクラクラする。

意識が朦朧とする。脳震盪か。

明太郎は後悔した。

そりゃ、1週間もないくらいの筋トレで人が激つよ!になるなら苦労しないよな。こんなことなら、美友さんとメシ言っときゃ良かったかな…。

「俺はラーメンがいいけど…、きっとパスタかな…。間を取って、うどんじゃ…違うか」

なんとなく、美友がキツネうどんを楽しそうに食べてる図が浮かんだ。

やばい、やばい。

頭を振り、叩き、立ち上がった。立ちくらみがする。が、寝てはいられない。

「ドルルルルルルルルルク!」

再びドルルクは向かってくる。

明太郎は、戻り切ってない意識の中でも確かにドルルクの存在を認識し、腹部に蹴りを入れた。

「ドルルルルルルルルルク!??」

ドルルクは蹲り、息苦しそうにしはじめた。

初めて蹴りを喰らわせた。

「蹴りがダメなんてルールないもんな…」

前回のトドメを思い出しながら、明太郎はドルルクにアッパーをくれてやった。派手に吹っ飛んだ。 

「お前、どうやったら倒れるんだ…」

明太郎の額から出血が酷い。

対するドルルクは相変わらず流血はない。ダメージはあるようだが、いかんせん急所がわからない。

明太郎は限界を感じていた。そう長くは持たない。

ドルルクは再び立ち上がり、ヨロヨロと明太郎に向かっていった。

数秒、対峙する。

ドルルクも決して余裕があるわけではないようだ。

どちらが先か、お互い相手の顔面めがけて拳を繰り出した。お互いにそれをモロにくらい、その場で倒れ込んだ。

しばらくして、ドームが縮小し、光となってドルルクを天へと運んでいった。明太郎はドームの消滅と共に外に出る事が出来た。

2回目の闘いは、引き分けに終わった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る