第6話 冬はコレ!

久々にみかんを食べたら、美味い。

美友さんが土産で持ってきたみかんを食べながら、

明太郎はお袋に話したように強盗2人に襲われた、抵抗したが2人がかりには勝てずボコボコにやられた、強盗には何も取られてないが逃げられたと伝えた。さっきの人、イトウさんは刑事であり、傷害事件として事情聴取を受けていたと言った。

嘘八百で心が痛むが、やはり化け物と戦っていたと言うのはまずいのだ。

「大変でしたね…。それで、何か盗られたんですか?」

「それは、なんとか死守しました」

「良かったです。会社のみんなも、心配してましたよ」

「ありがとうございます」

ふと、2人はみんな、心配という言葉の中で

係長の顔が浮かんで、お互い表情が曇った。

「あっ、テレビ見ますか」

気晴らしに、明太郎はロクにつけたことのないこの部屋のテレビをつけた。

テレビがついた瞬間、画面に白々とした光が迸って直後爆発音が聞こえた。画面に映っているのは、どこかの県の駅前のようだ。薄白のドームが一つ、地面にある。そこから等間隔に光線のようなものが一定間隔で発射され、それがビルや車、人に当たり爆発を起こしている。

「えええ!」

明太郎と美友は目を丸くして画面を見た。

まるで戦争だ。

悲鳴と光線、煙が飛び交う中、多くな人々が逃げ回っている。

ドームの中はモヤがかかっており見えない。警察官がドームに向かって発砲しているが、まるで効いていないようだ。しばらくして、その警察官は光線に当てられ、爆破してしまった。美友が悲鳴を上げ、咄嗟に明太郎はテレビのリモコンで電源を切った。

「なんですか、あれ!?」

叫ぶように明太郎に問うた。

本来、美友は明太郎があのドームの存在を知らないとわかりつつ、ただ誰かに聞かないわけにはいられないような精神状態で咄嗟に明太郎に聞いた。

だが、明太郎は、ドームの存在を知ってる。

ドームの中の存在も、知っている。

でも、明太郎には美友にそれを言うわけにはいかなかった。

美友だから、ではない。

きっと老若男女、誰に聞かれたとしても、今の明太郎は答えないだろう。

明太郎は目線を下にやり、

「人が…死んでた」

今見た事実だけを口にした。

他にもっと、良い言い回しがあるんだろうが、

これが彼の限界だった。

「人が…」

警察官は、戦おうとしていた。

いや、人々を守ろうとしていた。

銃を使い、ドルルクの攻撃を辞めさせ、人々を守ろうとしていたのだ。

だが、全く効いていなかった。

だが…、彼は、きっと誰かを守れたんだろう。

そう思わなければ、明太郎自身がどうにかなりそうだった。

美友を見た。彼女は涙を指で拭っていた。

手。

明太郎は、自分の手を見る。包帯だらけの手。

まだ痛むが、動かせるレベルだ。

警察官は、拳銃で人々を守れたと思う。

しかし、明太郎はこの拳で、もっと人を守っていたのかもしれない。

事実、オッさん達の話では、ドームからあんな光線が出たという話はなかった。ドームの中は、肉眼で直に見なければ中身が見えないという報告はあったが…。

「俺…」

学生の頃から拭えない性分が感情を揺さぶる。

だが、ここからさっき見た現場は遠すぎる。おそらく、オッさん達も見ているだけしか出来ないだろう。

明太郎は、今回だけ、と思って、

美友の手を握った。


「あったかい」

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