第五回「清らかなミイラ」 山形県:某寺院
山形県はラーメン外食消費量日本一の県であり、日本屈指のラーメン王国。
ラーメンに舌鼓をうったあと、向かったのは湯殿山という山である。
何を見に行ったか?
もちろん、即身仏である。
日本の一部地方に見られる民間信仰において、僧は死なず、生死の境を超え弥勒菩薩出世の時まで、衆生救済を目的として永遠の瞑想に入る(入定)と考えられている。
江戸時代には、疫病や飢饉に苦しむ衆生を救うべく、多くの高僧が土中に埋められて入定した
wikiより引用
早い話しが、永遠に祈りを捧げ続けて世を救いたいという熱い気持ちを持ったお坊さんたちが、生きながらにしてミイラになることである。
即神仏になるには凄まじい苦行を経なくてはならない。
五穀だち(断食)、身体が死後腐らないように漆を飲む、地中に生き埋めになりお経を唱え続ける。それで死後、地中で腐らずにミイラ化する訳だ。
そして、現存する即神仏は寒冷な気候も相まって東北に多いのである。
もちろん現代では禁止されている修行である。
俺は前々から人生に一度は即神仏を拝んでみたいと考えていた。人の為、世の為に自ら苦行をして、最後はミイラになってしまった人はどんな姿をしているのだろうか?そんな思いに駆られていたのである。
山に行って驚いた。
訪れたのは6月中旬。それにも関わらず、山頂には雪がまだ残っていた。確かにこの気候なら腐らないな。
辺りを見回すも即神仏がどこにいるのかまったく検討がつかない。
休憩所のお姉さんに聞いてみれば、即神仏はここではなく、下山して〇〇と言う寺にいると言うではないか。
時刻は既に午後を過ぎている。
俺と友人は急いでその寺に向かう。
その寺がまた凄まじくいい場所に建っていた。大自然の中に溶け込むような厳かな雰囲気を感じる。
寺の中に入ると、今、即神仏(上人様)の前で説法を行なっているというので、我々も聞くことにした。
何人かの前で、恰幅のいい住職が説法をしていて、我々も後ろの方に座って聞いていたのだが、その内容がひどかった。
上人様は衣を何年かに一度変えるのだが、その衣を刻んでひとつ1000円でお守りとして売っているという。
住職の話は、このお守りを買った人は、東日本大地震で生き残り、難しい手術は成功して、何人も死んだ大事故でも唯一生き残った!
という話をつらつらとお話しされていたのだ。
要するにセールストークである。
もちろん、お話を聞いた時の感じ方は人それぞれであり、住職のお話を聞いて感動する方もおられるのだろうが、俺にはただのセールストークにしか聞こえなかった。
他にも感じたことはあるのだが、これ以上書くとただのネガティブキャンペーンになってしまうのでやめておくが、後で調べたら俺と同じように感じている人が多くいて安心した。
つまるところ、言いたいのは、世の為人の為に苦痛に耐えて、今なお祈りを捧げ続けておられる上人様が、お守りを買った人だけ救うなんて、そんなせせこましいことをするだろうか?
住職がお話しされている奥に鎮座している上人様は今何を思い話を聞かれているのだろうか?
なんとも後味の悪い旅になってしまったなぁと思い帰路に着くのであった。
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