第73話 煙
『突破? 何をですか? がしゃどくろ、強いですよ。まあ、試練として、立ちはだかるわけで何とか倒せるかもしれません――でも、突破なんてことではなく、そこで終わりなんです。ゴールです。先には力尽きて終わるセンパイしかいない。せめて、私が終わらせてあげるくらいですかね』
何を言っているのかわからない。多分、僕をセンパイと繰り返し言っているのだろうから、何かの知り合いなのだろう。それ以上を考えると頭痛がして、思考力を奪われてしまう。
呪いか何か。ケイが何かを細工した関係だと思われるが、ああ、痛い。もう痛い。何でこんなに痛い。二日酔いとかそんなのはどうでもいい。めまいがしてくる。
考えれば考えるほど、この呪いか何かは僕に知られなくない事らしい。
「彼女の執着さえわかれば、多分何とかなりそうなんだけど、くそっ」
頭を振る。切り替えるしかないらしいと無理矢理自分を抑え込む。
仕事でよくある待つか、誰かが指摘してくれるなどをしないといけない問題がある。相談すればどうにかなることだが、多分相談すれば裏側で誰かが片付けてしまうだろうと思う。
『私を愛してくれるんですね。よかった。けれども、浮気をしまくり、ああ、泥棒猫とか。あと、女が今もいっぱい。とてもとてもとても口惜しい口惜しい口惜しい。最悪。ああああああっ」
ヤ、ヤンデレ。これは確実にヤンドル反応だ。
やっぱり病院に行きましょう。
服もいつもいつも、ヒラヒラの服とか来ているのを想像します。黒いドレスに眼帯。見ているだけで辛くなるほど痛いからやめましょう。数年後、まともになったら、恥ずか死をしますから。やめましょう。
「お嬢、本当に雅弥のことが好きなの? うん、すごい。でも――いいえ、私はいたずらしまくり、最後に魔王を作り、幸せな世界征服をするから。駄目。駄目だから」
頭がおかしくなりそう。会話が異次元過ぎる。
ついていくことが出来ない。
「度し難い会話なのだが、あたしの感覚がおかしいのだろうか。頭が悪いからよくわからない」
「い、いや、これは茉莉野さんが正しいから」
震え声で答える。常識人はここにいたのか。ああ、助かる。
「あたしもとあの男の娘様と出会えば、同じになるかもしれないので、何も言えないんだ。だから、おかしいのは自分かと思った」
駄目だこりゃ。どうして、こんなぽんこつばかりしかいない。しかも色々と言葉のバリエーションがあって、相当きつい。
『うりりいいいいいいいいいいいい! 何で、こんな目に私! ばかり! どうしてええええええええええ!』
がしゃどくろがお嬢の言葉に反応して、左腕を上げる。そこには黒い煙が凝縮されている。焔のごとく揺らめく煙は凝縮される。
巨大な力の窯のようになった煙。
逃げようにもあれはデカすぎて、自分の身を何とか守るしかない。いや――
煙の狙いは、
『この泥棒猫ならぬ、うさぎいいいいいいいいいいい!!!』
あ、これって、アイツが死ぬのか。
20年。長い年月の猫。
猫又になったから、長生きできるよな。
僕は呪いで体をやられている。
でも、それは僕が望んで行ったこと。悔いは無いんだ。
――僕はいつまで生きることが出来るのだろう?
30歳まで生きることはできた。でも、次の40歳はどうだろうか。
呪いでボロボロの体。いつ僕は生きることが出来るのか。
ふと、僕の体が動いた。
走った。
呪紋? 時間ないよそんなの。
ドンと火事場のクソ力がドバドバあふれ出て、マオウを僕は思いっきり、吹っ飛ばした。
トレントが偶然一体、倒れこんでいる。葉っぱが生い茂った、ああ、クッションになりそうだ――
あ、黒い大きな僕を何人も覆えるような煙だ……違う、これは黒い炎だ。熱い、あれ、熱いわかっているけど、ああこれでいい。
何を考えているんだろう、僕は。
黒い、あ、熱い、体が消し飛ぶ?
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