第72話 突破⑤
『わ、私がセンパイに近寄れないのをのをのを利用して、なんてことを見せつけ、あがががきぎぎぐぐげげげごごごごごg』
うん。キャラが崩壊しつつあるんだけど、大丈夫かな。お嬢だっけな。すごい頭痛いけど、何かねえ、懐かしい感じがするんだよね。
『あああああああああ、あと、大人の階段を上ることはできないはず』
「どうやら、ケイよりも、先に大人の階段を上るな。BまではOKだが、Cはいけない、らしいので問題は無いと思うけど……というか何でそれを知って、あいてえええええええええええええええええええ」
激痛。頭が何でこう痛いんだ。思い出そうとするとなんかすごい痛い。ごろごろ転がるくらい痛い痛い痛いーっ!
あと、まずい飯がいっぱい頭の中に流れ込んでくる。味が味が苦いのか、弾けるのか。はっきりしてくれ。薄味、あああ、それは薄味ではいけませーんっ。
違う意味で階段上るから。あっ、誰かが手を振って、じいちゃーん。今行くか――
げしげしげしげし。
お尻を蹴らないでマオウさん。僕目覚めちゃうから。
あと、ロープをを解いてくださいね。
「階段のことはどうでもいいとして、そろそろ雅弥を苦しめるのはいけないと思うからさ……いうけど、またすごいのを連れてきたね」
マオウが見上げる先には大きなリッチというか、骸骨の巨人が口から出し続ける黒い煙をまとっていて、膝をつきながら、空に浮いていた。
相当不気味なのだが、ガチガチと体を震わせながら歩く姿と無表情な巨大な人骨が鎮座する姿は怪獣映画とホラー映画を足して、2で割った感じ。またはゲームの割と切りのいいところの大ボスといったところだろうか。
『がしゃどくろ。作るのには少し手間がかかりました。しかし、良い出来です。とても大きくて、綺麗。センパイを助けて、迎えるにはちょうど良いものだと思います。かわいいでしょう』
若干誇らしげな声音だが、感覚が一切理解できない。いや、これ、どうみて、
「可愛くないでしょ。ちなみにセンパイはどう思うよ」
「マッマアママママ、マオウさん。言っちゃいけないことはやめましょう。刺激をかけたらどうなるかわからないから。いや、僕も可愛いというか、怖い。悪夢に出そうな感じがあって、すげえ怖いね。いや、本当に怖い。子供が見たら、確実に泣くよねこれ。ギャン泣きとかあり得るね。うん、うんわかるけどさ、駄目だよ本当のことを言っちゃいけないマオウ」
声が上ずりながら、答えた僕の言葉。あれ? これ、やっちゃったかもしれないと今更ながら気づく。
「とどめ刺しちゃったにゃん、雅弥」
「あ……忘れて。今の」
ご増そうと僕は言葉を出すが、適切な言葉が思いつかない。
「前からひと言多いからね。雅弥。今回は二言も三言も多いし。内容は酷いし。まあ、可愛くないのは理解したから、草生えるにゃん」
『か、か、かかかかかわいいいのおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
がしゃどくろがぶるぶると震える。きしみ、カタカタとあごの部分を鳴らし始めて、巨大な体が小刻みに揺れ始め、
グルアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!
耳をふさがなければならないほど、叫んだ。
『いけっ! がしゃどくろ!』
がしゃどくろの巨大な右手が僕に襲い掛かる!
僕は巨体の勢いに驚き、動くことが出来ない――
と思ったかな。
僕は口元に笑みを浮かべ、右手を上げる。
トレントが起き上がり、隠していた呪紋を放つ。
腰に刻まれた呪紋を使い、土の柱を腕にぶつける。トレントもそこにとりつく。
「せえのおっ! おらっ!」
茉莉野さんがひときわ大きなトレントをオーガの剛力で振り回し、勢いでがしゃどくろの右腕を吹っ飛ばした。
グオオオオオオオオオオンと砂塵が舞い、突き刺さる音。
僕はとんだ右腕の先に、土柱をさらにはやして、串刺しにしたのだ。
「まずはひとつ! 突破できるか!」
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