第71話 突破④
「これから何をしたらお嬢を見つけることができるか。まずはそこから考えなくてはいけない」
マオウの言葉の答えは煙の濃い場所。だが、そこには強力なレイスがいるだろうし、煙の影響も考えざるを得ないと思われる。
「相当覚悟を決めないと、行くことはできない。だが、選択は少ないというか、唯一の選択肢だろう。今は方法がないだろう」
ローズさんが神妙な面持ちで答える。
「あ、でも、私たちが求める、アレを探すことができれば」
「アリエス、それは無理だ。あのクソお嬢があたしたちを見張っているんだ。見つけた瞬間横取りに来るだろう。まずはクソお嬢を無効化してからでないと」
「私も同感にゃん。あの性格の悪さなら、この様子をこっそりと見張っていて、いきなり横取りは普通だと思う。だ・か・ら」
ニヤリとする笑みはいつもの猫又である。ええっと、僕を見つめるのは何故でしょうか。
「決着はこれでいきましょうね」
*
「ヒュオオオオオオ、ヒュオオオオ、ヒッコオオ。ひっひっふゥー。ハァハァハァハァハァハァハァ。だからって、さあああああ! 僕を何でトレントの真ん中で立たせるのかなァ!」
そう、僕は何故か、トレントの中に放り込まれた。しかも、マオウにロープで固く縛られて、真ん中に立たされている。
「一応、私もいるから大丈夫だよ。ほれほれほれ」
「ひいいいいい! 蹴るな。押すな。前にトレントがいるよおおおおお!」
「いや、一応寝ているから。すごいよね。エルフの魔法って。強すぎるって。私たちが喧嘩売っていたヤツがこれほどの怖い奴だと思いませんでした。サーセン」
言葉が軽いよ。言葉が。明らかに誤魔化している感があるよ。絶対に何かあるから。やっばいよ絶対に。
「なんでそんなに疑り深いのかなぁ。そんなのじゃ信頼されないよ。わかっていますか。飛田雅弥君」
「この状況で信頼できることなんてできるわけなかろうが。トレントが起きたら、僕を捨てて逃げるだろ。んで、それをニヤニヤ見ながら、笑っているまでがワンセット。僕には見える未来。とても明確に、ああ、4K画質できれいさっぱりクリアに。驚きだねハハハ……ハ、ハハ」
力なくがっくりと顔を下げる。
「まあ、これでアイツを呼び寄せる。そして、アイツを捕まえて、最後の戦いへとぶち込むんだ。あとはそうだね、アレを手に入れたらぐへへへへへ。色々と治せちゃうかもしれないから。最高だね。うん。うんうん――キスしよ」
そう言って、非常に頬を真っ赤っかにさせて、明らかに発情したマオウ氏が僕の唇に迫る。
「あっ、えっへっはっ。マオウさんなら、ルックスからみて、最高だけど、ぐるぐる巻きにされた状況でなければよいわけで。この状況では終わっているわけなんですよ。あああっ、エッチなのはいけないと思いま――」
「黙って、よ。そういうのは無粋。だって今は二人だけの空間」
周りは眠っているトレントまみれです。正直怖いのでやめてほしいのですが、ああ、甘いにほひが。なんて気持ちの良いしびれのような快感。
あ、唇が迫ってああ――
『ふざけるなああああああああああああああああああああ!』
あ、キス直前僕とマオウの距離が吐息を感じるほどだったのに、おのれっ!
「あ、来たね。お邪魔虫」
『どっちがお邪魔虫だああああああああああ! この泥棒猫ッ!!!!!」
うん、どうすりゃいいんだ。これ。明らかにキレてますね。声。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます