第63話 いざエルフの世界へ?

 しかし、楽しみですね。エルフと言えば、美しい女性が多いといわれますねえ。

 ムフフ。昔、そういえば女性の白エルフの知り合いがいた。あの人もきれいだったな。

 ケイ、ああ、アイツも白エルフだったけど、あれは例外。マジで最悪だった。思い出すだけで、楽しくもあったし、嫌な思い出がありすぎる。セクハラやめよう。あと、DTの呪いは許さん。

 今度会ったらとっちめてやる。ボコボコにしてやる。


 ポータルといえば、ああそうだ。こういう神殿の柱のようなポータルを見たけど、白エルフのあの人と入って、ああ、ラブコメ展開があらあらうふふふふ。


『センパイ、そのポータルはメスエロフの匂いがするので、いけませんよぉ』


 アレ? 変な声聞こえないかな。


「嫌な感じがする。そうだ。ここって、アイツが狙って、やべえ。ご執心の雅弥がえっ、あっあっ!」


『いけませんねえ。いけませんねえ。これだから、浮気者は駄目なんですよ。わかりますか? ええ、エエ、センパイならよぉく、わかっていますよね。危険はありません。大丈夫。わたしがちゃぁんとついていますから」

 その「ついていますよ」は「とり憑いていますよ」とかいうニュアンスが満々なのですが。聞いたことのある声の誰かさん。

 というか、頭に直接話しかけていますかコレ。


『知りませんよぉ。そんな言葉。どうして、そんな言葉を覚えてしまったのですか。大好きなセンパイ。一応、そこの泥棒猫は助けてあげますよ。でも、あのダンジョンで二人きりになって、いい気分になるとかは嫉妬しちゃうんです――非常にね』


 何だろう。いいことも言っているけど、何というか、言葉にとげしかなく、そこはかとなく、地雷臭がしている。

「あ、あのメンヘラなひとですか? もしそうなら、医者にきちんと行きましょう。2次元のメンヘラは問題無いのですが、3次元のメンヘラは大変だと思います。僕もついていきますから」


『そうやって、優しい態度をとっているから――困るんです。非常に。あのダンジョンでセンパイとロマンチックになるのは私ですから』

 変な声が僕の中で増幅される。

 

「い、いてぇ。頭、あああっ、ななななに声が」

 頭を押さえるが、直接脳みそをシェイクされるような感覚に何の効果もない。ただただ、意識が揺さぶられるまま。頭痛のようなものが増えていくだけ。


 意識が途切れ――


「雅弥。あれ……くっ、あんのやろう。実力行使にでやがっ」

 マオウの罵声とつかめない兎耳。


「こんのぉ、私には触らせない気かっ!」

 離れるマオウの声。

 咄嗟にマオウと手をつなごうとするが、どうしても掴めない。何故だ。


「私が行きますッ。茉莉野さんも大丈夫ですか!」

「ああっ、大丈夫。くっ、なんだいきなり。百合フェスティバルが見たかったというのに。でも、ろりぷにぷにええあああ」

 代わりに二人の女性が僕の手を掴んで。

 

 ――僕の視界と意識が完全に途切れた。


「あの野郎、やりやがったな。ぜってぇえええええええええにぶちのめすからな!」

 マオウの声が最後に聞こえたのが救いだったか。


 僕はヒロインじゃないから。アラサーのおっさんだからね。

 

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